東急建設株式会社(東京都・渋谷区、寺田光宏社長)は脱炭素社会の実現を目指し、植物由来油から製造されるディーゼルエンジン用のバイオディーゼル燃料(以下、B100燃料)を都内の土木施工現場の発電機に使用開始した。
B100燃料は、日本建設業連合会が施工段階でのCO2削減方策として軽油代替燃料の利用拡大に向けて発行した『建設業における軽油代替燃料利用ガイドライン』に記載されている環境配慮型の燃料。廃食用油を原料として製造し、カーボンニュートラルでCO2排出量を約100%削減する。東急建設が使用するB100燃料は三和エナジー株式会社から調達した。
B100燃料導入現場の作業所長である中林拓真氏は、「今回のB100燃料の導入により、当社の長期経営計画で示している提供価値の一つ『脱炭素』を促進し、地球温暖化防止に向けた建設業界の取組みに少しでも貢献できれば幸いです」とコメントした。
アクティオのバイオディーゼル燃料専用発電機を採用
B100燃料は従来、建設機械(建設重機、発電機)での利用を想定せず、メーカーの保証範囲外となっているため、これまで利用検証は実施してきたが、浸透していないのが現状だ。このような状況の中、今回、株式会社アクティオが、品質を担保したB100燃料を使用し、発電機で燃料燃焼実験を2年間実施した結果、2022年8月に発電機本体に問題が発生しなかったことを確認した。
この実験結果を踏まえ、アクティオが2022年8月に提供開始したバイオディーゼル専用発電機を東急建設が使用することで、建設現場へのB100燃料の導入を順次拡大していく。
今回、B100燃料を発電機に使用することで、建設重機稼働時だけでなく、事務所の電気や溶接工事などでもCO2排出量の削減を見込む。
環境負荷少ない「GLT燃料」も現場に導入
東急建設では、長期経営計画「To zero, from zero.」で3つの提供価値の一つとして掲げている「脱炭素」実現のため、これまでも環境負荷の少ない軽油代替燃料「GTL(Gas to Liquids)燃料」や、CO2排出量の100%削減が見込める「リニューアブルディーゼル」を日本全国の建設現場に導入してきた。
GTL燃料は、天然ガスから精製された軽油代替燃料で、軽油と比較してCO2排出量を約8.5%削減することができる。硫黄分・金属分・芳香族分を含まない非毒性のパラフィン系燃料であることから、煤が少ないなどの環境負荷低減効果がある環境配慮型燃料だ。パワーショベルなどの建設重機にそのまま使用可能で、CO2排出量を減少できる。さらに、コストも軽油同等の価格となり、協力会社も導入しやすく、国土交通省が利用を推奨しているNETIS(新技術情報提供システム)にも燃料として初の登録を受けている。
伊藤忠エネクスと全国的な基本契約を締結
GTL燃料の安定確保に向け、伊藤忠エネクス株式会社と全国的なGTL燃料供給に関する基本契約を2021年7月に締結。同年8月から岐阜県・本巣市「名古屋支店土木部東海環状七崎高架橋他1橋(下部工)工事作業所」、神奈川県・川崎市の「東日本建築支店第一建築部ESR東扇島ディストリビューションセンター新築工事作業所」(協力会社・株式会社齋藤組)でGTL燃料の使用をスタートした。
東海環状七崎高架橋他1橋(下部工)工事作業所長の佐藤忠信氏は、「常にスピードとチャレンジを意識して作業所を収めてきました。今回も当社の脱炭素に貢献出来るGTL燃料を全社作業所に先駆けて供給を始められた事を嬉しく思います」、次に「ESR東扇島ディストリビューションセンター新築工事の作業所長の中原健介氏も、「GTL燃料の導入は脱炭素に向けた、この作業所で実践できる最初の一歩。今後はより多くの重機に採用し、二歩・三歩と歩みを進め、さらなる環境負荷低減を実践するため、仲間とともに『建てる』を変え、『脱炭素』『廃棄物ゼロ』『防災・減災』という3つの提供価値に取組んでいきたい」と語っている。
業界初リニューアブルディーゼルの使用を開始
また、2022年4月にはクレーンでの建設業界初となるリニューアブルディーゼル(以下、RD)の使用を「ESR東扇島ディストリビューションセンター新築工事作業所」の重機より開始している。RDは廃食油や動植物油等を原料として製造、重機に使用し、ライフサイクルアセスメントベースで約90%のCO2排出量削減となる環境配慮型の燃料を指す。
RDはリニューアブル燃料の一種。このリニューアブル燃料は、既存の重機や機器設備にそのまま使用できるドロップイン型燃料のため、エンジン改修や追加設備投資の必要がない。またディーゼル燃料に比べ排出ガス微粒子が微量であるため、重機やトラックなどの排ガス浄化装置交換が減り、排出ガス微粒子を除去するアイドリングも短時間となるため、エンジンへの負担が少なくメンテナンスコスト削減も見込む。
東急建設では燃料関係でも建設現場でのCO2排出量削減の幅を広げ、一層の脱炭素社会の実現を目指していく方針だ。