お隣さんとの土地の境目をめぐってトラブルに発展するケースがあります。隣地境界線とは、隣り合った土地の境目を示す境界線です。
今回は、隣地境界線のルールや注意点、トラブルの回避方法について解説していきます。ポイントを押さえてトラブルを回避しましょう。
隣地境界線とは
隣の土地との境目の線を境界線と言いますが、実際の土地には目に見えるような線が引かれていません。
土地には「境界標」や「境界杭」があり、境界線とは、この「境界標」や「境界杭」をつないだ目には見えない線のことを指します。どんな土地との境目かによって3種類に分かれており、隣地境界線はそのひとつです。
ここでは、隣地境界線の概要や境界線がわからなくなる理由、2つの法律での定義について解説していきます。
隣地境界線
隣の土地との境目のことを隣地境界線と言います。ただし、境界線の目印として存在するはずの境界標は、必ずしも目に見えるところにあるわけではありません。見つからない場合は必ず確認が必要です。
また、ブロック塀やフェンスが、境界線を示すように設置されている場所があります。一見正確な境界線を示しているように見えても、必ずしも境界線通りというわけではないので注意してください。
境界線には3種類ある
境界線の種類は以下の3つに分けられています。
- 敷地境界線
- 隣地境界線
- 道路境界線
敷地境界線は、隣地境界線と道路境界線の総称です。敷地境界線の例としては、建物が建っている土地の外周が該当します。建物の敷地はひとつの土地に建設されているとは限りません。複数の土地に建設されていることもあります。土地の境目だけで判断できないところが敷地境界線のポイントです。
道路と私有地との境界線を道路境界線と呼びます。見分けるポイントとしては、道路と私有地の境にある道路境界標です。あくまでも私有地と道路の境なので、私道と私有地との境目は道路境界線とは呼びません。
境界線がわからなくなる原因
ある理由から、境界線がわからなくなっている土地が存在します。よくあるケースは、相続によって取得した土地や、山地や畑に面した土地といった古くから存在している土地です。これらの土地は、境界線を確認したことがない場合もあります。
ほかにも、工事後に境界標や境界杭が見えなくなってしまったケースや、工事時に一旦外した後、正しい場所に戻されなかったケースもあります。
建築基準法と民法では隣地境界線の定義が異なる?
境界線は、建築基準法と民法によって定義化されています。しかし2つの法律で、制限内容と定義が異なっています。
建築基準法では、建築構造と地域の条件さえ準拠していれば、境界のギリギリまで建物を建てることが可能です。しかし民法では、境界線から50cm以上離して建物を建てることが定められています。
どちらの法律を守ったらいいのか不安になるでしょう。民法のほうが制限が厳しいため、民法の基準を満たしておけば間違いはありません。
隣地境界線に関する注意点
上でも述べた通り、民法において隣地境界線から50cm以上離して建物を建てなければいけないと定められています。これは、建物を隣の土地に近づけすぎてはいけないということです。
この規定に違反した場合、建築の中止や変更だけでなく、損害賠償を求められる可能性もあります。ここでは、隣地境界線に関する注意点について解説していきます。
なぜ50cm以上の距離を保つように定められているか
境界線から50cm以上の距離を保つように定められている理由は、快適な生活環境を保護するためです。
隣家との距離が近くなることで、日照を阻害してしまう可能性や、騒音トラブルやプライバシーが守られないといった事態になる可能性もあります。距離が近くなることによって声や生活音が聞こえるようになるためです。
また、用途地域によっては50cmよりも更に厳しい基準が定められている場合もあります。その場合、建物が想定よりも小さくなってしまうこともあるため、しっかり確認しましょう。
塀やフェンスと隣地境界線
塀やフェンスの設置に関しても、民法で様々なルールが定められています。
自分の敷地内に塀やフェンスを設置する場合、特に規定はなく自由に設置ができます。しかし、塀やフェンスを設置したことで日照を遮ったり、塀が倒れて隣接地の建物や所有物を損傷してしまったなど、お隣さんとのトラブルになる可能性もあります。
自分の敷地内であっても塀やフェンスを設置する場合には、トラブル回避のため、隣接地の所有者にはひと声かけておいたほうがいいでしょう。
その他、隣地境界線上に新たに塀やフェンスを設置する場合や、既に設置されている塀やフェンスがある場合など、色々なパターンが想定されます。いかなる場合でも、まずは隣接地の所有者との話し合いや合意が基本となります。
ルールを守らないとトラブルの元に
ルールを守らなかった場合、トラブルが発生する原因になります。境界線から50cmの外壁後退義務については、安全性と快適性の確保が目的です。
仮に、何の相談もなく自分の所有地に隣の建築物がはみ出していたり、建物が近すぎて日光が入らなくなったりしたらどうでしょうか。ほとんどの人が文句を言いたくなるのではないでしょうか。
トラブルに発展しないようにするためにも、相手の立場になって考え、ルールを守りましょう。
お隣さんとのトラブルを回避するには
境界線を巡ったお隣さんとのトラブルは多く発生しています。過去のトラブル事例を参考にトラブルが発生しないように気を付けましょう。
また、トラブルが発生した場合、話し合いで解決できればいいですが、解決に至らない可能性もあります。その場合、自分で解決しようとせずに専門家に相談しましょう。
ここでは、お隣さんとの隣地境界線によるトラブルと、それを回避するための方法について解説していきます。また、ルールが緩和される事例についても解説していきます。
トラブル事例
不動産会社から土地を購入したところ、敷地の一部がお隣さんの所有地だったケースがあります。この場合は、売主に対して売買代金の減額を請求することが可能です。
お隣さんが隣地境界線を調べている際に、境界標がずれていることを指摘されるケースもあります。災害や工事によって境界標の位置が、正確な場所からずれてしまうことは珍しくありません。気付いた段階で迅速に戻しましょう。
また、災害の場合は境界標がなくなってしまうこともあります。土地家屋調査士や測量士といった専門家に依頼して境界標を設置してもらいましょう。
トラブルを回避するには
隣地境界線のずれやまちがいによるトラブルを発生させないためには、隣地境界線を確認しておくことが大切です。
隣地境界線は地積測量図で確認できます。法務局で入手しましょう。オンラインでの取得申請も可能です。地積測量図が存在しない場合は、土地家屋調査士に依頼しましょう。
もし隣地境界線トラブルが発生してしまった場合は、専門家に相談しましょう。土地家屋調査士会が運営する境界問題相談センターで相談することが可能です。土地家屋調査士と弁護士からそれぞれの専門的なアドバイスをもらえます。
ルールを守らなくてもいい場合
民法では、境界線から50cm以上離して建物を建てなければいけないと定められていますが、緩和されるケースもあります。
隣接した土地の所有者同士で合意していれば、規定よりも短い距離に建物を建てることが可能です。ただし、口頭合意では後々トラブルに発生する危険もあります。合意書を用意し、署名と捺印しておくことで証拠を残しておきましょう。
また民法でも、地域の慣習がある場合には、その慣習に従ってもいいこととされています。代表的な地域には、京都市や繁華街があります。
京都市では敷地間口が狭いため、規定通りでは建物が建てづらいことが理由です。繁華街では、慣習的に道路ギリギリに建っている建物が多いため、それに合わせて建物を建てます。
隣地境界線のポイントを押さえてトラブルを回避しよう
今回は、隣地境界線のポイントや注意点について解説してきました。隣地境界線は隣の土地との境界線のことです。隣地境界線には、境界線から50cm以上離して建物を建てなければいけないことが民法によって定められています。
その規定は、あくまでも快適な生活環境を保護するためです。民法でも、お互いの合意があれば規定を守らなくてもいいとされています。
事前に隣地境界線を確認しておくことで、隣地境界線を巡るトラブルを回避することができます。ただし、どうしてもトラブルに発展してしまったときは、自分で解決しようとせずに専門家に相談しましょう。