神奈川県県土整備局が取り組む「週休2日制確保モデル工事」「いのち貢献度指名競争入札」とは?

神奈川県県土整備局が取り組む「週休2日制確保モデル工事」「いのち貢献度指名競争入札」とは?

神奈川県県土整備局にインタビュー

今年度の工事から「週休2日制確保モデル工事」を実施する神奈川県県土整備局。建設業の旧来イメージである3K(きつい、汚い、危険)から、新3K(休暇が取れる、給料がいい、希望にあふれる)の実現に向け、さまざまな施策を打っています。

そこで今回、神奈川県県土整備局の都市部技術管理課技術管理グループの永埜技幹、鈴木主査、そして事業管理部県土整備経理課入札制度グループの長田グループリーダーに、「週休2日制確保モデル工事」についてお話を伺ってきました。

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神奈川県県土整備局が実施する「週休2日制確保モデル工事」とは?

施工の神様(以下、施工):公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)の改正後、神奈川県における公共工事はどのように進められていくのでしょう?

神奈川県:改正品確法では、発注者の責務として「担い手の中長期的な育成・確保」が求められています。神奈川県では、建設業の担い手不足という課題について、他県と同様、発注者としてどのような対策に取り組めるのか検討しています。

建設業の旧3Kのイメージを払拭し、新3Kへ転換を図っていくことが大切と考えており、業界の抱えている課題(休日が取れない、担い手不足)に対して、「週休2日制確保モデル工事」や「建設現場の生産性向上」といった取り組みを進めているところです。

施工:神奈川県県土整備局の「週休2日制確保モデル工事」について教えてください。

神奈川県:元々、神奈川県土整備局の発注する土木工事では、4週8休の休暇取得や雨天などの不稼働日を考慮し工期を設定していますが、改正品確法の趣旨を踏まえ、建設会社に休暇取得を促進させることを目的として、2016年度に「週休2日制確保モデル工事」の実施要領を策定して取り組みを始めました。2017年4月末時点で13件のモデル工事を発注しています。

モデル工事の対象とする建設現場では、現場の着手から完了まで、毎週、土曜日と日曜日を休工日とします。具体的には、建設会社は施工計画書の提出とあわせて、モデル工事実施の同意・不同意を選択し、モデル工事に同意する場合には「休日取得計画書」を神奈川県に提出して取り組みを開始します。

建設業者は、モデル工事の同意・不同意を受注契約時に決定するのではなく、工事の実施計画を作成しながら、現場での週休2日確保の可能性を判断することができます。また、モデル工事に同意し、休日取得計画に対して履行実績が8割以上となった場合は、工事成績評定で1点を加点します。

「週休2日制確保モデル工事」の実際の現場

「週休2日制確保モデル工事」であることを周知

一方、モデル工事に不同意の場合や、同意を選択したものの、工期の途中で週休2日確保が困難となり、履行実績が8割未満となった場合でも、休日取得が出来なかったことを理由とする減点等のペナルティーはありません。

モデル工事に対する建設業界の反応ですが、業界側も建設現場の休日取得の実態を把握したいので、まずは様々な工種、工期の工事で実施して欲しいとの意見を受けています。これまでのところ、業界側から、適正な準備期間や後片付け期間も必要であるといった意見は受けていません。

神奈川県土整備局としては、この「週休2日制確保モデル工事」の取組を継続して、建設業界の担い手確保・育成に努力していきたいと考えています。

ICT土工は地域建設企業からさまざまな意見も

施工:生産性向上についてはいかがでしょうか。2017年2月7日に「神奈川県i-Construction推進連絡会」が発足しましたが、どのような意見が出ましたか?

神奈川県:「神奈川県i-Construction推進連絡会」は、建設現場の生産性向上を目指して、発注者と受注者で情報交換を行い、神奈川県内での円滑な普及を図ることを目的として発足しました。国土交通省関東地方整備局横浜国道事務所が事務局となっています。

会議では、神奈川県内においても、2017年度より国がICT活用工事をいくつかの現場で発注していくとの話がありました。建設業界からは、ICT建機をレンタルした場合の建設業者が負担する費用の割合は、これまでと比較するとどう変わるのか、ICT施工による費用対効果は本当に見込めるのか、などの意見が出ていました。

国土交通省関東地方整備局のICT土工の実施方針では、土工量1,000立方メートル以上がICT活用工事の対象となっていますが、神奈川県では、同等規模のICT活用工事を発注した場合に、県内の中小建設会社が直面する課題等が不透明な状況にあります。そのため、昨年度から国や建機メーカーのICT土工見学会などに参加して、ICTに関する様々な情報を収集しているところです。

他県では、建機メーカーとのつながりが深く、ICT活用に関して意思統一を図れているところもありますが、建機メーカーと意見交換する場がこれまで殆どなかった神奈川県では、現場見学会等の機会を契機として、ICT活用工事の進め方等について積極的な情報収集に努めるとともに、国等の関係機関や、建設業界等と連携していきたいと考えています。

神奈川県の地域性を考慮した取り組みが必要

施工:若手技術者の活用や女性活躍、快適トイレについての取り組みは?

神奈川県:神奈川県は、3つの政令指定都市とその他の市町村を抱えています。政令市とその他市町村、県土の東側と西側では、それぞれ行政規模や地域性が異なるので、県内一斉に革新的な取組を実施することは難しいと考えます。各地域における建設会社がついていける取り組みを検討する必要があります。

女性土木技術者の採用事情で説明すると、相模川をはさんで東側と西側の地域建設会社で状況は大きく異なります。特に西側では女性土木技術者の絶対数が少なく、仮に女性活躍に関する評価項目を加えると、特定の建設会社が有利になり、業界の不公平感が増す可能性があるので、女性活躍に関する評価項目の採用は見送っています。

また、女性活躍に関する評価項目の設定については、建設業界からも時期尚早との意見をいただいています。今後、建設業界と意見交換しながら、地域性等を加味しつつ、採用の可否について判断する予定です。

施工:若手技術者育成は?

神奈川県:担い手確保・育成の観点から見れば、男女の別なく、若者に建設業に入職してもらうことが望ましいと考えており、神奈川県では総合評価方式において、会社の評価として、新卒者を技術職員として雇用した実績が3年間確認できれば加点される項目を設けています。ただし、一旦雇用しても、3年間会社に在籍していなければ無効として扱い、加点しません。

しかし、この評価項目も、リクルート活動に注力できるような体力のある建設会社に有利に働き、そうでない会社は不利になるという場合があります。

一方「快適トイレ」の採用については、具体的な取組の方向性は未だ定まっていません。他都県における諸事例を収集し、検討しているところです。

「いのち貢献度指名競争入札」を試行し、地域の建設企業を育成・確保

施工:入札制度について教えてください。

神奈川県:平成18(2006)年度から条件付一般競争入札を基軸とした入札制度「かながわ方式」を導入しています。また、改正品確法の理念を先取りする形で、県民の「いのち」を守る担い手となる地域の建設企業を中長期的に育成・確保することや、地域の安全・安心を確保するために必要な工事を早期に実施することを目的として平成26(2014)年度から「いのち貢献度指名競争入札」を試行しており、平成27(2015)年度からは試行範囲を県土整備局だけでなく、全庁に拡大しています。

「いのち貢献度指名競争入札」では、指名業者の選定基準として、災害協定等締結企業などの社会貢献企業や優良工事施工業者であることのほか、若手技術者の育成や建設機械の保有に努めている企業などを設定しており、地域の安全・安心を確保するため努力している地域の建設企業を評価する制度となっています。

神奈川県内でもいつ大きな災害があるか分からない状況の中で、こうした地域の頑張っている建設企業の皆様が重要な存在であると認識しているところです。

技術職員の確保で横浜市と東京都との競争も激化

施工:神奈川県の技術職員は確保できていますか?

神奈川県:地方公共団体の間でも技術職員の確保はかなり大変になってきました。特に神奈川県は、東京都の他に、横浜市等の政令指定都市もライバルとなっており、技術職員の確保は激化しています。

そこで、神奈川県県土整備局では、Facebook「かながわ土木・建築のチカラ」、YouTube「かながわ県土チャンネル」等により、職員や地元建設会社の「仕事ぶり」を、就活を控えている大学生や、県民の方々に広くアピールしています。定期的に更新し、PRすることで、技術系職員の確保に向けて取り組んでいます。

施工:施工管理技士に期待されることは?

神奈川県:施工管理技士の工程および品質管理能力は、公共工事の品質確保の土台になると考えています。試験制度も年2回実施されるなど受験機会も拡大し、資格取得者は今後増えていくと思いますが、工事規模の大小を問わず、知識と技術力を十分に発揮して、良い品質の公共施設に仕上げてもらうことを希望しています。発注者としては、それに応えるため、よりよい制度設計をしていきたいと考えています。

担い手確保・育成、生産性向上の話題はそれぞれ独立しているのではなく、関連して取り組むべき課題です。発注者と受注者が連携して土木の魅力を発信していきましょう。

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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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