地盤調査が義務付けられたのは平成12年
判決は、この建物の瑕疵として、基礎構造選定の誤りによる欠陥が認定されていますが、適切な基礎構造を選定するために地盤調査を行うことが必要か、つまり地盤調査義務があるかということが問題となります。
Aと建設会社Xとの建物建築請負契約の締結は平成6年5月、建物の引き渡しは平成7年5月です。ところで、地盤調査が義務付けられたのは平成12年です。平成7年1月に起きた阪神淡路大震災で、同じ地域でも住宅の倒壊状況が異なることが分かったことがきっかけです。

阪神淡路大震災時の倒壊家屋(筆者提供)
法律は原則として、制定前の事実にさかのぼって適用されません。さかのぼって適用すると、行為者の予測可能性を害し、法秩序に対する信頼が失われます。「法の不遡及の原則」といいます。
平成6年5月、Aと建設会社Xが建物建築請負契約を締結した時点では地盤調査は義務化されていませんでした。そこでこの裁判では平成12年改正前の建築基準法施行令(旧施行令)が適用されています。従って、本判決においては、地盤調査義務そのものについては触れていません。しかし、判決では「不同沈下した最大の原因は(中略)漫然とベタ基礎を用いて最上部の盛土層を支持基盤」としたことにあると地盤調査義務を前提にしているように読むことができます。
現在は地盤調査が義務付けられ、全長コアボーリング試験などの事後試験結果を根拠資料としてリスクは軽減できます。しかし平成6年の契約時点では、被告人X、Y、Zは平成7年の阪神大震災も平成12年の地盤調査義務化も予測できなかったでしょう。
また、4つの建替え不要工法はすべて却下されています。仮にアンダーピニング工法が採用されていれば在宅での工事が可能なため引っ越しや仮住まいの費用が不必要になります。アンダーピニング工法の費用の目安は500~1,000万円だそうです。仮に1,000万円としても代替建物レンタル費用、引っ越し費用、登記費用が不要になりますから合計1,600万円になるのではないでしょうか?4つの建替え不要工法は今後も検討に値すると思われます。
この判決は、被告人X、Y、Zにとって厳しい判決に見えます。しかし、地裁の一審判決が確定しています。これは、被告人ご本人は控訴をしなかったということになります。居住する方の暮らしと未来を考えて、裁判所の慎重な判断を受け入れて、建物建築請負人として不同沈下に対して万全の対処をなさったのだと思われます。
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面白い記事だと思います
曳家の技術ですね
ただ法律ってなんだろうって考えちゃいますねw
その時流によっての判断なんでしょう…。
法律が遅れるとこう言ったことが起きるんでしょうね。