橋脚の基部が破損し、高架橋が沈下
2022年3月16日に、福島県沖を震源とした大きな地震が発生した。その地震により、公共土木施設も大きな被害を受けた箇所が複数ある。その中の一つとしてインパクトがあったのが、東北新幹線の脱線ではないだろうか。
さらに、福島~白石蔵王間では高架橋が損傷し、橋脚基部が損壊。それにより、高架橋が沈下するような状態となった。さらに付近の橋脚や中層梁でも、コンクリートが剥落するなどの被害が発生した。
損傷した箇所は数十か所になるとのことで、全面復旧には時間がかかると想定される。東北新幹線の全線再開は、4月20日前後と言われている。東北地方を通る場合、まだしばらくは不便を強いられることとなりそうだ。
せん断破壊が原因か?
ニュースで取り上げられていた映像や記事の写真を見てみると、破壊形態はせん断破壊とみられる。
橋脚の上半分は鋼板を巻くなどの耐震対策が取られており、その対策をしたうえで、大きな震度の地震に襲われた場合の状況予測も解析によって行っていたと思われる。
これは推測だが、解析結果ではOKと出たために下半分の対策はしていなかったのだろう。それが原因なのかは定かではないが、橋脚基部が損壊することとなった。さらに、中層梁でもせん断破壊による損傷とみられる状況が写真から見て取れる。
橋脚の基部に至っては、コンクリートが剥落して、中の鉄筋がはっきりと見えてしまっていた。さらに中の鉄筋はぐにゃりと曲がっているようにも見える。このことから、地震によるエネルギーが相当大きかったのではないかと推察される。
せん断破壊を防げなかった理由
前述した通り、中層梁においても、せん断破壊をしているような形跡があった。耐震設計では曲げ破壊が起こることを想定しており、せん断破壊が生じない設計をすることが一般的である。
しかし、今回の地震ではせん断破壊が生じている。せん断破壊を防ぐことを目的として鉄筋を配置しているわけで、それでもせん断破壊を防げなかった。ということは、想定している以上の荷重が作用したか、もしくは想定していなかった荷重が作用した可能性が考えられる。
私が読んだ記事によると、昨年も同じような場所で大きな地震が起きたが、この時に比べて倍以上の荷重が作用したのではないか、と書かれていた。
また、地震による損傷ということで交番載荷によるものではないか、との見方もあるようだ。これについては、土木学会等による今後の詳細な調査結果を待ちたいところである。調査結果によっては、今後の耐震設計の考え方が変更となる可能性があり、要注目だ。
自然の脅威には勝てない。
土木屋は謙虚になるべし。
破壊というべきか、損傷というべきか。中層ラーメンは冗長性が高く、一部が大きく損傷しても構造全体で受け持てれば、破壊したとも言えない。今回の場合が、構造物の損傷=脱線と言いきれるかどうか、原因公開を注視したい。