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【こども本の森 神戸】建築家・安藤忠雄氏が贈る文化の灯火、あるいは希望

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公開日:2025.05.27
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本との出会いをデザインする

「こども本の森 神戸」は、従来の図書館とは異なる独自の運営方針を持つ。最大の特徴は、貸し出しを行わず、館内で本を読むことに特化している点だ。公園内の芝生で本を広げることも推奨され、子どもたちが自由に本と触れ合う空間が提供される。このスタイルは、中之島の施設から引き継がれたものだが、神戸では地元の素材を活かしたオリジナル家具が導入され、差別化が図られた。

椅子やテーブルには、六甲山の木材や神戸市内のクリエイターによるデザインが採用された。安藤氏が通常指定する家具ブランド(国内のカリモクやフィンランドのアルテック)からの逸脱は異例で、半年にわたる交渉の末に実現した。地元クリエイター集団がデザインを担当し、地域のアイデンティティを空間に刻み込んだ。

イベントも、本との出会いを促進する重要な要素だ。音楽や読み聞かせ、展示会を組み合わせた企画が定期的に開催され、特に未就学児から小学生をターゲットに、本への興味を喚起する。毎年1月には、震災関連イベントが行われ、施設の社会的役割を強調している。また、ブックディレクターが、絵本だけでなく芸術書や大人向けの書籍を選定し、幅広い層が楽しめる蔵書構成を構築している。

ウォーターフロントの再生

「こども本の森 神戸」の開館は、周辺地域に大きな変化をもたらした。かつて人通りが少なかったウォーターフロントエリアは、親子連れや観光客で賑わう場所に変貌。隣接するレストランでは、キッズメニューやランチ需要が増加し、予約制だった営業が平日自由開放に変わった。ベビーカーを押す家族の姿は、施設が地域のライフスタイルに溶け込んでいる証だ。

施設のインスタグラムでは、過去のイベントや展示の様子が公開され、訪れる人々の多様な楽しみ方が伝わる。建築学生や写真愛好家も訪れ、安藤氏の作品を目当てにカメラを構える姿が日常的だ。この建物は、単なる図書施設を超え、観光資源としても機能している。

本のチカラをどう届けるか

安藤氏のビジョンは明確だ。「本に出会うことで、子どもたちに生きる力を育んでほしい」。しかし、担当者は課題も認識している。「本好きな家庭はすでに来ている。問題は、本に触れる習慣のない子どもたちにどうアプローチするか」。統計によれば、本棚のない家庭が増加し、デジタルデバイスでの読書が主流になりつつある現代において、物理的な本との出会いをどうデザインするかがカギとなる。

その一環として、2023年度後半から幼稚園や小学校の団体受け入れを強化。学校との連携を通じて、本に馴染みのない子どもたちに施設を体験してもらおうとしている。また、イベントでは音楽やアートを活用し、本を「楽しいもの」として提示する工夫が続く。

神戸市は、施設を単なる文化資産ではなく、震災の教訓を伝え、地域の歴史や文化を次世代につなぐ場として位置づける。ウォーターフロントの立地を活かし、観光と教育のハブとしての役割も期待される。安藤氏の寄付による建物は、効率性や収益性を超えた「作品」としての価値を持ち、訪れる者に感動を与え続けるだろう。

安藤建築が紡ぐ物語 安藤独特の建築空間の空気感

「こども本の森 神戸」は、安藤忠雄の建築が持つ物語性を体現する施設だ。震災の記憶を背景に、子どもたちに本との出会いを提供し、地域の再生を促す。その存在感は、効率を追求する公共施設の枠を超え、美術品のような輝きを放つ。神戸市役所の担当者の言葉を借りれば、「この建物に入ると、独特の空気感にワクワクする。それが安藤作品のチカラだ」。

今後、施設がどう進化するかは、運営者と市民の協働にかかっている。本好きな子どもたちだけでなく、本に縁遠い家庭にも門戸を開き、多様なイベントを通じて文化の灯火をともし続けること。それが、「こども本の森 神戸」が目指す未来だ。安藤氏の寄付から始まったこの物語は、神戸の新たなシンボルとして、世代を超えて語り継がれるだろう。

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この記事を書いた人

四国の犬
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基本的には従順ですが、たまに噛みつきます。
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