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利根川上流河川事務所副所長の池上清子さんが語る関東地整という職場の魅力とは?

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公開日:2025.07.23
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霞ヶ浦導水工事事務所 トンネル現場の「見えないカベ」を乗り越える

入省直後の霞ヶ浦導水工事事務所では、シールドトンネルの設計を担当した。当時、トンネル工事現場では「山の神様が怒る」という迷信から女性の立ち入りが制限されていた。

「副所長が受注者と交渉してくれて、スカートやヒールや大声は禁止という条件で、作業着で現場に入れました」と池上さんは笑う。トンネル入り口に神棚が飾られた光景は、伝統と近代技術の交錯を象徴していた。「受注者や作業員の意識も変わりつつあると感じました」と振り返る。この経験は、女性技術者としての壁を乗り越える第一歩だった。

小名木川出張所長 都市河川の複雑な課題に直面

2017年、池上さんは荒川下流河川事務所の小名木川出張所長として、出先事務所の責任者となった。首都高速道路が並走する小名木川は、都市河川特有の課題に直面していた。「早朝の雨天時にトラックが転倒し、オイルが川に流れ込む水質事故が頻発しました。また、堤防沿いに居住するホームレスの方々への対応も大きな仕事でした」と語る。

ホームレスは当時160名を超え、洪水時の安全確保が急務だった。「台風接近時には、河川巡視員に依頼して避難を呼びかけるチラシを配布しました。1日半かけて配り終える作業でした」と振り返る。地域住民や関係者との連携を通じて、現場の声を反映した課題解決を学んだ。「現場の声が、解決の糸口になる」と彼女は強調する。小名木川での経験は、都市河川の複雑さと、コミュニティとの協働の重要性を教えてくれた。

荒川上流河川事務所工務課長 台風19号からの復旧工事を大量発注

2021年から2022年、池上氏は荒川上流河川事務所の工務課長として、2019年の台風19号により直轄区間5か所の堤防決壊からの復旧を牽引した。「初めての勤務地で土地勘がなく、勉強しながらのスタートでした。工事の発注量が多く、限られた時間内で効率的に進める必要がありました」と語る。

工務課長として、予算や工事発注を総括し、設計検討や用地交渉など多部門と連携。堤防整備や河道掘削を進め、構造物が完成する過程にやりがいを感じた。「目に見える成果は励みでした」と言う。発注の不調はほぼなく、堤防整備や河道掘削は受注者にとっても収益性の高い案件だったため、順調に進んだ。「復旧工事を通じて、地域の安全を直接的に守る実感がありました」と振り返る。

性別よりも、現場で何を成し遂げられるかが大事

(写真本人提供)

(写真本人提供)

現在、関東地方整備局では女性管理職が増加中だ。池上さんの同世代には、甲府河川国道事務所や渡良瀬川河川事務所の副所長を務める女性がいる。本局の事業調整官など、課長職以上のロールモデルも現れている。「私の入省時には女性技術者は事務所に3名だけでしたが、今は若い女性職員も増え、キャリアの選択肢が広がっています」と語る。

「政府の女性管理職目標は理解していますが、土木分野は母数が少ないので、数字だけを追うのは難しい。ライフスタイルに合わせた多様な働き方が認められるべきです」と言う。家庭と仕事を両立してきた池上さんは、女性であることを特別視せず、技術者としての能力で評価されることを重視する。「性別よりも、現場で何を成し遂げられるかが大事」と強調する。

副所長として、部下の働きやすさの確保も役割の一つだ。若手職員の転勤への抵抗感や自治体志向の高まりが課題だが、池上氏は関東地方整備局の強みをこう語る。「関東は交通網が発達し、転勤でも引っ越しせずに通勤可能です。私も25年間、さいたま市に住み続けながら、働いてきました。新幹線通勤の補助も充実し、働きやすさは向上しています」。

たとえば、高崎河川国道事務所への通勤も、新幹線を使えばさいたま市から30分程度。ライフスタイルの多様性を尊重する制度も進化している。「育児中は大変な時期もありますが、制度を活用したり、時にはお金で解決したりしながら、柔軟に働けます」と笑う。確かに、通勤や働き方に柔軟性をもたせることが、若手職員の入職・定着につながることは、一定あり得る。

「技術者同士の切磋琢磨」が土木の魅力

池上さんは土木を目指す若者、特に女性に向けてこうメッセージを送る。

「関東地方整備局は、大きな責任とやりがいのある職場です。工事の規模が大きく、工事受注者やコンサルタントと対話しながら技術力を磨けます。育児やライフスタイルに合わせた制度も整っているので、気兼ねなく挑戦してほしい。土木は社会に貢献できる素晴らしい仕事です」。

土木の魅力の一つとして、「技術者同士の切磋琢磨」を挙げる。「受注者やコンサルタントと協働することで、技術力が向上します。異なる視点から学ぶ機会が多いのは、この仕事の醍醐味です」と言う。

池上さんのキャリアは、関東地整プロパーの女性技術者の可能性を示す。そんな彼女は今、利根川上流河川事務所で、DXやグリーンインフラで気候変動や人手不足に立ち向かい、その最前線で未来を切り開き続けている。その歩みは、若い技術系女性職員にとって、未来の可能性を照らす道標であり続けるだろう。

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コメント(1)

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  • - 2025/07/23 16:20

    活躍してる女性の記事書くと、アラフィフの手取り18万の派遣事務おじさんが「女も現場仕事しろ!」「女が使ってもらえるのは給料が安いから」って言ってくるぞ〜

    返信する 通報する

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