コストは結局安くなるのでご支持をいただくんです
――ではコスト的にはどういうメリットが支持を得ていますか?
角さん 材料費は高価ですが、耐候性に優れるため塗装寿命は従来の約2倍、また、工程短縮によって足場や交通規制の期間を約1/3に抑えられるため、結果として総合的なコストは同等、もしくはむしろ安くなると考えています(図-5参照)。
当初のころは全面的に無機形で塗替えをして、それでも施工は省工程でコンパクトですから、間接費が縮減できてコスト抑制につながったり、塗膜の耐久性もよく長寿命化につながったりという、そうしたメリットを感じられる管理者さんのご支持をいただくことが多かったです。
それに加えて近年は、省工程でコンパクトに施工できますので、必要な人手も少なく短工期で済み、その分コストも縮減できる(つまり対応個所数も多くできる)という点が、特に自治体さんなどからの支持をいただいています。おおむね塗膜が健全なので、桁端部などの特に傷みやすい、あるいはちょっと傷んできているために部分塗替えを進めるなどのケースです。全面塗替えよりはかなりコストを抑えられます。
こうした計画的な塗替えのほかにも、全面あるいは部分塗替えするには予算的に厳しく、だからといってフルに予算が確保できるまで後送りにもできないというようなケースもあり、そうしたご相談を受けますと、塗膜の傷みの進行が心配な個所だけピンポイントに塗替えて傷みの進行を抑止して時間稼ぎをするような対応などをご提案するのですが、間に合わせのような対策に見えても、なかなか思うように予算がつかずに時が経つなか、振り返ると結果的に長寿命化につながっているなどのお褒めのお言葉もいただきます。
おまけ・こういうところで役立っています~経年追跡付き事例集
――無機形材料、例えば協会のセラシリーズを使うと、何がどう良くりますか?道路管理者さんの協力もあって、施工後の経年変化の追跡調査データも溜まっているそうなので、読者さんに役立ちそうな事例をいくつかお願いします。
角さん 経年変化についての情報もよく質問をいただきます。ですので、巻末の付録として経年変化情報付き事例集を紹介しましょうか。
橋梁で最も長い追跡調査は1995年に施工した瀬戸中央道の六間川橋試験塗装(変性エポキシ樹脂塗料+無溶剤無機形塗料)です。直近では29年経過後の2024年11月に追跡確認してきました。ふくれ、われ、はがれ、汚れはなく健全でした。ウェブおよび下フランジ下面は光沢が残存していて太陽光線を反射していました(写真-5参照)。
次に、建築関係では同じく1995年施工の沖縄県うるま市の民家の外壁(無溶剤無機形塗料2回塗り)です。沖縄は紫外線が非常に強く、湿度も高く、海岸線から近くて飛来塩分量も多い過酷な環境です。直近では29年経過後の2024年11月に追跡確認してきまし た。ふくれ、われ、はがれ、汚れがなく健全でした。手で触ってもチョーキングはありませんでした(写真-6参照)。
次に、鉄道関係のホーム桁では京阪電気鉄道さんで3種類を2006年に試させてもらいました。直近では18年経過後の2024年10月に追跡確認してきました。無溶剤無機形塗料仕上げ(変性エポキシ下塗+無溶剤無機形塗料)個所は、ふくれ、われ、はがれ、汚れもなく健全でした(写真-7参照)。
次に、案内標識柱では阪神高速道路の事例を紹介します。標識柱の右個所にセラマックスを施工(ケレン+補修塗+下塗(セラマックス#1000AL))しています。9年後に 左個所でセラマックスを同様に施工しまして、9年経過しても左右で光沢などに差がみられません(写真-8参照)。
次に、ガードレールです。追跡が長いものとしては2009年にNEXCO西日本の千里山TN出口上り線があります。10年後に走行しながら目視で確認しました。塗装仕様は3種ケレン+補修/先行塗として無溶剤無機形のセラマックス#1000AL+上塗も同無溶剤無機形のセラマックス#1000ALを50μm厚で塗っています。6年後の2015年、10年後の2019年とも異常は確認できませんでした(写真-9参照)。
次に、遮音壁です。追跡が長いものとしては阪神高速湾岸線中島パーキングエリアに2009年に施工したもので、直近では施工後16年の2025年1月に確認してきました。塗装仕様は3種ケレン+補修/先行塗として無溶剤無機形のセラマックス#1000AL+上塗も同無溶剤無機形のセラマックス#1000ALを75μm厚で塗っています。16年後も異常は確認できませんでした(写真-10参照)。
無溶剤無機形塗料は1層塗りで乾きや硬化も早いことから、交通量が多く仮設足場が設置しにくいようなところでも高所作業車を使って1日で施工できますので、首都高速の橋脚の塗替工事(写真-11参照)などをはじめ、省工程・工期短縮でされたい道路管理者さんにお役立ていただいています。交通規制や仮設足場などの間接費を抑えることができますし、高所作業車を使いますので塗膜がピンポイントで傷んだような個所を応急補修する場合にもお役立ていただいています。
次に、応急塗装バージョンです。阪神高速道路の桁端部に無溶剤無機形塗料(セラマックス#1000AL、セラマックス#2000)をお役立ていただきました。桁端部は伸縮継手からの漏水(雨水や冬季融雪剤)により腐食の進行が極めて速い個所です。止水並びに防食が期待でき、省工程でコンパクトな施工が出来ることから採用になっています(写真-12参照)。
2024年7月、NETISに登録した塗るゴム(図-6参照)も、省工程・工期短縮や応急塗装として お役立ていただくケースが急増しています。8年位前から阪神高速技術さんのご協力のもと、試験施工をさせてもらっていました。
対象部位に塗るだけで様々な効果を発揮するシリカゴムコーティング材です。鋼部材の防錆のほか、コンクリート表面からの水、塩分、炭酸ガス等の侵入防止、コンクリートに発生したクラックを塞いだり、鋼・コンクリート隙間部の止水をしたりする役目としても使われています。もちろん恒久的な対策としてもお役立ていただいていますが、特に一部に錆が出たり、水が回ったりしている個所に、ピンポイントに塗るだけで、錆の進行を抑止したり、止水したりして、次期本補修までもたせる用途でも重宝いただいています。事例が多い阪神高速道路での使用例を紹介させてもらいますと、コンクリートと鋼部材の取り合いをカバーできる材料として塗るゴムを使い、橋脚の鋼板巻立てや地際部など、シールが劣化して取れたところから水が入り、鋼材面が発錆・腐食している現場で、ケレン無で塗ったところ、3年半経った経過観察において症状が悪化進行していませんでした。
コンクリート壁高欄の天端やハンチ部、ガッターの下は水の通り道になっていて、どうにかして止めたいという要望を受け、塗るゴムを施工しました。3年半後に経過観察をしたところ、飛来塩分の影響も受ける湾岸線のそうした個所にケレン無しで塗ったにも関わらず、悪くなっていないことが確認されました(写真-13参照)。
他に、昨今ではASRが問題になっているので、コンクリート橋脚天端が狭隘で手が入らないので、デッキブラシでごみを軽くとって、ローラーで塗るゴムを塗って水の侵入を防ぐため、などにも活用いただいています(写真-14参照)。
――ありがとうございます。よくわかった気がします。
角さん 気がするんですね。いつでもご質問ください。長時間ご苦労様でした。
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