中堅の現場監督は、なぜ所長と噛み合わないのか? 立場で変わる「現場の景色」

立場が違うと同じものでも見方が違う

建設現場では、建設技術者や建設技能者、専門工事業者、警備員など、実に様々な人々が働いている。所属している会社も違えば、雇用形態も様々だ。そして、同じ施工管理技士であっても、様々な立場がある。

  • まだ新入社員と同様の修行中の立場
  • 現場を実質的に動かしている立場
  • 現場の責任者的な立場

他にも色々と複雑な立場はあると思うが、大別すれば上記の3つの立場が挙げられると思う。それぞれの立場を経験してくると、この3つの立場では、同じものでも全く違って見えるものだ。

最近、とある現場で、新人、中堅、責任者は3者3様、考えていることがまるっきり違うのだな、と改めて痛感した実例に出くわしたので共有する。


所長と中堅施工管理技士たちの「現場の見え方」の違い

ある日、昼の打ち合わせ前に、所長が現場職員たちに指示を出した。

「〇〇棟のあの部分のメッシュシート、部分的に剥がれているから直しておくように」

この指示を受けたのは、現場を実質的に動かしてる中堅どころの建築施工管理技士たちだったが、「へっ?」という表情を浮かべていた。まるで「所長、何をおっしゃっているんですか?メッシュシートはキレイに張れていますよ」と言わんばかりの表情。所長は少し怒り気味だ。

所長が指摘したメッシュシートの箇所は、朝礼広場からよく見える所で、私自身もラジオ体操をしながら、その剥がれには気付いていた。きっと他の職員たちも見ているはずの箇所だったので、所長からしてみれば「誰が見ても分かるのに、なぜ気付かないんだ!」と腹が立つのも仕方ないのかもしれない。

つまり、所長の視線は「現場の外から自分の現場を見る」ということ。一方、現場を動かしている建築施工管理技士たちは、その視点が弱く「メッシュシートに囲われた中身」を中心に考えているということだった。

同じ建築施工管理技士でも、それぞれの立場によって、現場の見方や興味の対象はまったく異なるので、現場管理における職員同士のコミュニケーションは不可欠であると再認識させられた。

現場経験が薄い建築施工管理技士の現場感

思い出せば、私自身も立場と経験値によって、現場の見方はまるっきり違っていた。例えば、まだ現場経験3年目くらいまでは、自分の現場を完全に第3者的な傍観者として見ていた。

  • 躯体が3階まで上がってきたら、けっこう高いもんだな!
  • やった、鉄骨が立ったぞ!
  • クレーンが立っていると、結構遠くからでも目立つな

と言う感じ。

しかし、立場が少し上になって、現場を切り盛りするポジションになってくると、それこそ「メッシュシートに囲われた中身」が気になってくる。現場の運営状況が、一番の興味の対象になってくる時期だ。

  • 明日は梁筋の荷揚げだけど、スラブ張りきれるかな?
  • 今週末は雨だから、外壁のタイル貼れないと工程に影響するな
  • そういえば、あの作業員さんに確認してと言われていたのにすっかり忘れていた

みたいな感じ。


現場責任者から見えている「現場の景色」

さらに、現場の責任者的な立場になると、現場の景色も変わって見えてくる。つまり、「自分の現場は第3者から、どのように見えているか?」ということが気になってくる。

  • メッシュシートがキレイに張れていて、パッと見ても、良い印象を与えているか?
  • 現場の仮囲いやゲート周りについて、一般歩行者や一般車両が危険だと感じないか?
  • 足場上に置きっぱなしの材料など、飛散したら事故につながるものはないか?

などなど、責任者的な立場になると、自然とこういう見方になってくる。

冒頭の話に戻すと「メッシュシートの剥がれ」に気付くのは、現場の責任者的な立場の人間だけでも仕方ないと私は考えている。若い立場の建築施工管理技士たちにも、同じ景色は見えてはいるが、興味の対象が違うので、意識がそちらへ向かなくても、ある意味当然なのかなと思う。

昔の自分がそうだったので、逆に若い方々には、それぞれの立場で見方が異なる、ということだけでも知っておいてもらえればと思う。その視野の広さが、現場をスムーズに運営していく上での、建築施工管理技士としてのスキルアップにもつながっていくはずだ。

みなさんは、自分の現場をどう見ていますか?

他人の仕事にもちゃんと気を配っていますか?

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大学工学部を卒業後、大手ゼネコンに入社。駅前再開発工事や大型商業施設、教育施設、マンションなどの現場監督を担当している30代の1級建築施工管理技士。新人時代の失敗で数千万円の損失を出した経験から、日々の激務に追われながらも、新人教育に熱意を燃やしている。現場でのケンカの回数は30回ほど。
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