所長と中堅施工管理技士たちの「現場の見え方」の違い
ある日、昼の打ち合わせ前に、所長が現場職員たちに指示を出した。
「〇〇棟のあの部分のメッシュシート、部分的に剥がれているから直しておくように」
この指示を受けたのは、現場を実質的に動かしてる中堅どころの建築施工管理技士たちだったが、「へっ?」という表情を浮かべていた。まるで「所長、何をおっしゃっているんですか?メッシュシートはキレイに張れていますよ」と言わんばかりの表情。所長は少し怒り気味だ。
所長が指摘したメッシュシートの箇所は、朝礼広場からよく見える所で、私自身もラジオ体操をしながら、その剥がれには気付いていた。きっと他の職員たちも見ているはずの箇所だったので、所長からしてみれば「誰が見ても分かるのに、なぜ気付かないんだ!」と腹が立つのも仕方ないのかもしれない。
つまり、所長の視線は「現場の外から自分の現場を見る」ということ。一方、現場を動かしている建築施工管理技士たちは、その視点が弱く「メッシュシートに囲われた中身」を中心に考えているということだった。
同じ建築施工管理技士でも、それぞれの立場によって、現場の見方や興味の対象はまったく異なるので、現場管理における職員同士のコミュニケーションは不可欠であると再認識させられた。
現場経験が薄い建築施工管理技士の現場感
思い出せば、私自身も立場と経験値によって、現場の見方はまるっきり違っていた。例えば、まだ現場経験3年目くらいまでは、自分の現場を完全に第3者的な傍観者として見ていた。
- 躯体が3階まで上がってきたら、けっこう高いもんだな!
- やった、鉄骨が立ったぞ!
- クレーンが立っていると、結構遠くからでも目立つな
と言う感じ。
しかし、立場が少し上になって、現場を切り盛りするポジションになってくると、それこそ「メッシュシートに囲われた中身」が気になってくる。現場の運営状況が、一番の興味の対象になってくる時期だ。
- 明日は梁筋の荷揚げだけど、スラブ張りきれるかな?
- 今週末は雨だから、外壁のタイル貼れないと工程に影響するな
- そういえば、あの作業員さんに確認してと言われていたのにすっかり忘れていた
みたいな感じ。
二次下請け専門業者から発注者支援まで各立場を経験したが、確かに見えるもの、考え方は違う。環境が変わるので自分自身の考え方も変わる。同じ立場でも自分の現場と他人の現場で見え方は違う。例えば、効率的って「何が」効率的なのか?とか。