ピアノが弾けないことの精神的苦痛の慰謝料は?
それでは、今回の本題である「防音室にピアノが入らない」というケースでは、弾けない苦痛に対する慰謝料は認められるのでしょうか。これに関する興味深い裁判例があります。
建築請負業を営むAは、プロのピアニストであるBとの間で、Bが居住を予定しているマンションの一室をピアノ用防音室に改装する工事の請負契約を締結しました。しかし、工事を終えて搬入業者がいざピアノを運び込もうとしたところ、搬入経路であるサッシ開口部の高さが低く、ピアノを搬入することができませんでした。
その後、AはBに対して請負代金252万4,200円の支払いを求めましたが、Bは「本件防音室の出入口の幅を大きくするなどの補修が必要である」と主張。瑕疵補修に代わる損害賠償、およびピアノの練習ができない状況に置かれたことによる精神的苦痛の慰謝料を相殺することを求め、支払いを拒みました。
この争いに対し、東京地裁は次のような判決を下しました。
「Aは本件居室を現地調査し、共用廊下側から本件サッシを通ってピアノを搬入する経路について、これを前提とする施工をすることを提案したが、ピアノの搬入は不可能ではないもののピアノメーカーが推奨する方法で搬入することは不可能であることから、瑕疵補修に代わる損害賠償金等を控除した147万1,806円の限度でAの請求を認容する」(平成24年11月13日 東京地裁)
このケースでは、ピアノの搬入が物理的に不可能だったわけではありません。しかし、ピアノメーカーが推奨する「本体プラス10センチメートル」の余裕を持たせた安全な搬入はできませんでした。さらに、事前に梱包を解かなければならず傷つくリスクが発生するため、人員を増やしたり特別な器具を準備したりする必要があることなども考慮されました。結果として、裁判所は「要求される施工水準を欠く」と判断し、請負代金から105万2,394円を減額したのです。
なお、裁判所は施工の瑕疵のみを認容し、精神的苦痛についての慰謝料は認められなかったようです。建築の瑕疵についての慰謝料は、やはり認められにくいようです。


カラオケボックスにカラオケセットが入らない!
荒井注さんを思い出す見出しですね!w