「強度への絶対的信頼」が招く慢心
生コンの打設前に実施する、生コン品質確認のための検査や、圧縮強度の確認のためにおこなう破壊試験用のテストピースの採取は、日本国内であれば、結果的にまずは心配ない。スランプ試験や空気量なども不合格になることはなく、強度がでないなんてことも99.9%なく、安心して見ていられる。
実際問題、日本で施工管理をしてる人たちは、「強度が出なかったらどうしよう?」なんて、考えたことさえないだろう。
…が、合格することに疑いがないとはいえ、当たり前だがこうした検査は規則通りに実施しなくては意味がない。
しかし昨今は、「強度の心配などいらない!検査なんて、形式的なものさ!」と、思っている施工管理者が多いように思う。その手順など、正確な試験とはいささかかけ離れた方法で実施している様子も目の当たりにする。私はこれが、どうも気になってしょうがない。
突き1回で変わる数値
例えば、スランプ試験は、多少硬めでも柔らかめでも、まず強度が出ないなんてことはなく、ルーティンワークのようにただ各種試験をこなして、結果オーライのサインを送り、打設が始まる。
しかし、本来はスランプコーンに採取した生コンを、三分の一充填するたびに、25回突き棒で突き、それを3回繰り返して、コーンを引き抜き、スランプの数字を読み取る、というのが正しい計測の方法だ(「JIS A1101「コンクリートのスランプ試験方法」)。だが、最近見ていると、正規の25回をまともに突いてるのを見たことがない。
しかし、”突きの回数でスランプの数字は、1cmは変わる!” 多く突けば突くほどに密度が高まり、スランプ値が小さくなる。逆に、突く回数が少ないほどに柔らかく、スランプ値も大きくなる。なので、自由自在!とまではいかないが、10から15ほどであれば調整も可能だ。自分自身でやってみればすぐにわかる。
海外現場で体得したスランプ値の調整術
小うるさいことを言ってきたが、実は私もズルをしてスランプ値を調整したことがある。
これは昔、アフリカの現場で施工管理をしていた頃の話。そもそも人手がなく、現地の人間も正確な試験の方法を知らないような国だったため、スランプ測定、空気量測定や温度など、一通りの試験を私が行った。
コンサルが立ち合うなか、「ん?これは柔らかいな!」と思えば、採取した生コンからなるべく水分の少ない部分を選び、入念に突き固めた。逆の場合は、なるべく水分の多い部分を選び、それほどは突き固めずにコーンを引き上げた。すると、そこそこ期待通りの数値が出たものだ。
たまに、日本でも試験者が生コンの状態を見て密かにそんな調整をしているのを見かけると、当時を思い出すことがある。
「誰にも分からないだろう」と思ってやってるようだが、のちに「ちゃんと見てるよ!なかなか調整の仕方が上手いね!」なんて小声で言うと、「えぇ!!わ、分かりますか?」と驚いた顔をされる。
若き施工管理者に求める「眼力」
まぁ、日本国内のプラントから届く生コンは、強度が出ないなんてことはまずない。その点では心配はしていない。
だが、「どうせ形式的なもの」だと思っているうちは、正しい手順や本質を覚えようとしない。正しいやり方を知っていてこそ、他人のズレにも気づける。若手の施工管理者には、まずは正しい試験方法を覚えてほしい。


