熊本の林業課題とTSMC特需を木造で繋ぐ
――2023年には、熊本県と「建築物木材利用促進協定」を結ばれました。
丸山氏 はい。2023年8月に、熊本県と「建築物木材利用促進協定」を締結させていただき、ありがたいことに当社がその第1号となりました。熊本は全国有数の林業県ですが、後継者不足などの課題も抱えているので、自社物件で県産材を優先的に使用し、大規模建築の木造化をリードしていければと考えています。
見学会には県の職員の方々が足を運んでくださる機会もあり、現場の知見と行政の政策的視点を融合させる試みが続いています。ここ熊本から「都市の木造化」という新しいモデルケースを発信していきたいですね。
――熊本といえばTSMCの工場進出も大きな話題ですが、事業への影響はありますか。
丸山氏 当社は台湾に現地法人を設立して、日本に進出される台湾企業のサポートも行っています。その一つの形として、2025年10月にシェアオフィス「趨勢(すうせい)ビジネスセンター・熊本」をオープンしました。
台湾の方々が求める「圧倒的な開放感」というニーズにお応えできるよう、主要幹線に面していながら、全面にガラス張りを多用したデザインを取り入れています。木造2階建てとは思えないほど光に満ち溢れた空間になり、台湾の皆様からもとても良い反響をいただいています。
また、入居企業様の中で「台湾の本格的なお茶」を提供する店舗の計画も進んでいるんです。木造建築の温もりの中で、自然と文化が交流していく。こうした「生きた空間」をつくっていくことも、私たちが目指す理想の形の一つですね。
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目指すは「九州初の木造高層ビル」
――最後に、今後のビジョンをお聞かせください。
丸山氏 一つの目標として、ここ熊本で「九州初の木造高層ビル」を建ててみたいという思いがあります。先日、関東で純木造8階建てのビルを見学する機会があったのですが、「これを熊本でも実現したい」とチームのメンバー全員が胸を熱くしました。
一方で、この分野は競合となる企業の参入も増えてきています。だからこそ、私たちは「アフターメンテナンス日本一」を旗印に、どこよりもこだわっていきたいと考えています。メンテナンス専門の部署を設けたり、災害時には全社員で対応できる体制を整えたりと、建てた後の「安心」を第一に考えています。
大規模木造建築という新しい技術を追求しながらも、根底にあるのは「お客様の人生に寄り添う」という創業時からの変わらない思いです。技術力とアフター体制の両輪が揃ってこそ、アネシスの目指す「真の総合建設」は完成します。木の温もりで熊本の街並みをつくり、守っていくために、これからも地道に取り組んでいきたいですね。
今回、浮き彫りになったのは、アネシスが持つ「二面性」の魅力だ。一つは、人口減少や法改正、さらにはTSMC進出といった市場の変化を冷静に見極め、住宅メーカーから総合建設業へと鮮やかに脱皮を図る「戦略家」としての側面。そしてもう一つは、木の温もりを大切にし、一軒の家、一つの施設の「その後」にどこまでも責任を持とうとする、誠実な「造り手」としての側面である。
かつて、都市の近代化は「木」を切り捨て、「コンクリートと鉄」を中心に進められてきた。しかし今、アネシスが熊本の地で示しているのは、最新の建築テクノロジーと地域の資源を融合させ、再び「木」を都市の風景に取り戻すという、新しい時代の豊かさの形だ。
「九州初の木造高層ビル」という大きな目標は、決して遠い未来の話ではないだろう。彼らが建てるのは、単なる効率的な「箱」ではない。そこに集う人々の安らぎであり、日台の文化が交差する場であり、何世代にもわたって地域に愛される風景そのものなのだ。
「建てて終わりではない」という哲学を胸に、地域と共にさらなる高みを目指す。その挑戦の先には、私たちがまだ見たことのない、温かくて強い「未来の街並み」が広がっているはずだ。
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