「5年後には、木の取り組みが一変しているように」
鉄筋コンクリート造に強みを持つ大豊建設のイメージが変わりつつある。
茨城県稲敷郡阿見町に完成した技術研究所では、耐震壁にRC並みの強度で軽い性能を持つ木質系材料・CLT材を導入。さらに三菱地所株式会社が主導し、製造から販売までを統合して行う新たな総合木材事業体「MEC Industry 株式会社」にも参画。建築分野での木質化工法を進展させ、住宅分野に加えて非住宅工事にも木造を本格導入することを目指していく。
「5年後には、大豊建設の木に対する取り組みが一変しているようになりたい」と意気込む、大豊建設建築本部の高畑真二執行役員副本部長(建築営業部長兼開発事業部長)に話を聞いた。
自社技術研究所にCLT材を導入
――大豊建設では、技術研究所の建築に始まり、最近では国産木材を積極的に活用されていますが、その経緯は。
高畑真二氏(以下、高畑) 当社の創業当時は、ダムやトンネル、橋梁下部工等の土木分野をメインに手掛けていたゼネコンで、建築分野では後発と言えます。今や大手ゼネコン各社では建築の技術開発が非常に進展していますが、こうした取組みに追随する形で、大豊建設内で「技術研究所」を中心に木質材・CLT等を導入するプロジェクトがスタートしました。
この技術研究所の建築に当たり、当初は鉄骨造を構想していましたが、これからの社会を見据えた工法で建てるべきではないか、という考えのもと、国産木材を活用した工法に切り替えたことが、木質材への取り組みを開始した経緯になります。

大豊建設技術研究所(茨城県阿見町)外観
――技術研究所では、CLTを採用されましたが。
高畑 ええ。当初はオール木造という選択肢もありましたが、中大規模建築を見据えると、純木造は現時点で耐火・防火に課題があります。独自に2~3時間耐火の建材を開発され、大臣認定を取得されているゼネコンもありますが、すぐに開発できるものではありません。そこで、既存の技術でどのように木材を活用できるかを検討した結果がCLTの採用です。
今回の技術研究所は2階建てですが、より大規模の建築物での応用を考え、1階はCLTを耐震壁とし、RCと組み合わせたハイブリッド建築に、2階は木造(大断面集成材のラーメン構造)とした立面混構造になっています。ゆくゆくは、法改正で上層階が準耐火でも認められる可能性もありますので、下層階を耐火構造、上層階を準耐火構造とした、立面でのハイブリッド構造が中大規模建築でも応用可能ではないかと考えています。

大豊建設技術研究所:大断面集成材ラーメン構造を表した研修室
接合部の施工の簡略化、防耐火が課題
――施工や技術面での課題はありましたか?
高畑 今回の導入例は、鉄筋コンクリート造にCLTを先付けする方法でCLTの壁を設置し、型枠を組み立ててからコンクリートを流し込む手順で行いました。ですが、CLTは木材ですので、傷つきやすく汚れやすい。そこで養生方法や木材とコンクリートの接合部の収め方について、検討を重ねました。

CLT耐震壁の組み立て
また、これらの理由に加え、CLTの材料費が割高であることなどから、通常の在来木造工法と比較するとコスト面での課題も残りました。今回は自社物件で試作的に施工しましたが、これを経済ベースに乗せようとすると、接合部等での施工の簡略化、工期短縮を進める必要があります。
さらに、専門技術を保有する作業員でなくとも取付け可能であることも必要であり、工法の一般化も熟慮していく必要があります。それにより、施工費全体が削減できます。流通も含めて材料の規格化、また、CLTについては木造住宅並みとは言いませんが、より割安になってくればこれからの利活用が増えてくると思います。
――CLTはRC並みの硬さで軽く魅力的な建材です。どういった建築物に応用したいでしょうか。
高畑 今後はハイグレード住宅やホテル等にも適用できるのではないかと考えていますが、ネックになるのが防耐火の問題です。欧米・北欧ではCLTの高層建築が数多くありますが、日本は耐火基準のハードルが高い。表面にプラスターボードを貼るなどしてしまうと、木材を隠す工法となってしまいます。
また、特殊工法で大臣認定を取得しているゼネコンも現状では割高な工法となっているため、スプリンクラーや消火設備などと組み合わせることによりトータルで防耐火のスペックを確保することで、木を表しで使えるようになり、高層系の建築物でも、表しの状態で活用できるのではないかと期待しています。