学科名に土木アリは14%、土木ナシが86%
日本には国立大学は86大学(2024年3月時点)があるが、そのうち、土木を教えている大学は50大学ある。さらに、この50大学のうち、学科名に「土木」が入っている大学は7大学ある。逆に言えば、土木を教えているのに、学科名に土木を入れていない大学は43大学ある。
50大学の内訳を割合にすると、このようになる。
- 学科名に「土木」が入っている国立大学 14%
- 学科名に「土木」が入っていない国立大学 86%
今回の記事を書くに際し、次のようなカタチで軽く調べてみた。
文部科学省の令和3年度全国大学一覧の01国立大学一覧をもとに、「大学名 土木」というワードでWEB検索を行い、上位ヒットしたWEBページを閲覧し、学科内に土木関連のコース、プログラムがあると推測される大学を土木を教えている大学としてカウントした。この中には、農業土木も含まれる。
たんに土木の教員がいる、たんに土木の研究室があるだけと推測される大学は、カウントしていない。カウントしなかった大学としては、たとえば、お茶の水女子大学生活科学部人間・環境科学科環境工学研究室(おそらく衛生工学)などがある。
いろいろラクだから、50大学という、キリの良い数字にしたかったためでは、断じてない。
ストレートな「土木工学科」は九州大学が全国唯一
それぞれ全部並べると、こんな感じになる。順番は一覧に準拠している。
学科名に「土木」が入っている国立大学
- 東京工業大学 工学部 土木・環境工学科
- 山梨大学 工学部 土木環境工学科
- 信州大学 工学部 水環境・土木工学科
- 名古屋大学 工学部 環境土木・建築学科
- 鳥取大学 工学部 社会システム土木系学科
- 九州大学 工学部 土木工学科
- 熊本大学 工学部 土木建築学科
この7大学は、さしずめ「土木セブン」といったところか。
環境や建築など他の学問との合わせワザのない、ストレートな学科名を持つのが、全国で九州大学が唯一なのは、非常に興味深い。
九州大学は過去に土木工学科を捨てたことがあったが、復活した経緯がある。いろいろあったにせよ、学科名のトレンドをガン無視した、気骨ある決断をしたことは、素直に称賛したい。
あと、合わせワザ組の学科名を見比べると、ビミョーに名称が異なっていたりして、一切カブッていないのが、地味に興味深い。
なお、文科省の資料には、鹿児島大学工学部海洋土木工学科と記載があるのだが、WEB検索すると、海洋土木工学科ではなく、先進工学科がヒットする。事情は不明だが、WEB上で海洋土木工学科の存在が確認できないので、こちらにはカウントしていない。
学科名のトレンドワードは「社会基盤」かもしれない
学科名に「土木」が入っていない国立大学
- 北海道大学 工学部 環境社会工学科
- 室蘭工業大学 工学部 建築社会基盤系学科
- 北見工業大学 工学部 地域未来デザイン工学科
- 弘前大学 農学生命科学部 地域環境工学科
- 岩手大学 理工学部 システム創成工学科
- 東北大学 工学部 建築・社会環境工学科
- 秋田大学 理工学部 システムデザイン工学科
- 茨城大学 工学部 都市システム工学科
- 筑波大学 工学システム学類 エネルギー・メカニクス主専攻
- 宇都宮大学 地域デザイン科学部 社会基盤デザイン学科
- 群馬大学 理工学部 物質・環境類
- 埼玉大学 工学部 環境社会デザイン学科
- 千葉大学 工学部 総合工学科
- 東京大学 工学部 社会基盤学科
- 横浜国立大学 都市科学部 都市基盤学科
- 新潟大学 工学部 工学科
- 長岡技術科学大学 工学部 環境社会基盤工学分野
- 富山大学 都市デザイン学部 都市・交通デザイン学科
- 金沢大学 理工学域 地球社会基盤学類
- 福井大学 工学部 建築・都市環境工学科
- 岐阜大学 工学部 社会基盤工学科
- 名古屋工業大学 工学部 社会工学科
- 豊橋技術科学大学 工学部 建築・都市システム学系
- 三重大学 生物資源学部 共生環境学科
- 京都大学 工学部 地球工学科
- 大阪大学 工学部 地球総合工学科
- 神戸大学 工学部 市民工学科
- 和歌山大学 システム工学部 システム工学科
- 島根大学 生物資源学部 環境共生科学科
- 岡山大学 環境理工学部 環境デザイン工学科
- 広島大学 工学部 第四類(建設・環境系)
- 山口大学 工学部 社会建設工学科
- 徳島大学 理工学部 理工学科
- 香川大学 創造工学部 創造工学科
- 愛媛大学 工学部 工学科
- 高知大学 理工学部 地球環境防災学科
- 九州工業大学 工学部 建設社会工学科
- 佐賀大学 理工学部 理工学科
- 長崎大学 工学部 工学科
- 大分大学 理工学部 理工学科
- 宮崎大学 工学部 工学科
- 鹿児島大学 工学部 先進工学科
- 琉球大学 工学部 工学科
こちらは「土木ステルス43(ドステ43)」という感じだろうか。語呂もなかなか良い。
やはり、環境や建築との合わせワザが目立つ印象だ。個人的には、室蘭工業大学や宇都宮大学、東京大学、長岡技術科学大学、金沢大学、岐阜大学が使っている「社会基盤」という名称は、今後のトレンドワードになりそうだ、と感じている。
農業土木系は仕方ないとしても、筑波大学のエネルギー・メカニクス主専攻や群馬大学の物質・環境類は、初見では、まず土木だとはわからない。ちゃんとHPを確認したにも関わらず、見るたびに「これって間違いじゃない?」と疑ってしまう自分がいる。「いかがなものか」という気がする。
個人的にどうしても気になってしまうのが、神戸大学の市民工学科だ。シビルエンジニアリングの直訳なので、ある意味わかりやすいと思われる反面、語感皆無の造語であるがゆえに、やはり初見ではまず理解できそうにない、という二面性を備える、実に不思議な名称だからだ。
ここまで書いてきて、思い出したが、名称変更前後をまたいで、神戸大学に出入りしていたことがある。とある教授から「先日、建設学科から市民工学科に変わったんですよ」と聞かされたとき、「なんですか、それ?」と聞き返した覚えがある。
自分が学ぶことになる学部のカリキュラムに目を通さない人はそんなにいないと思います。内容を確認して「あぁ、土木系か」と気づいて、そこから入るか否かを判断するはずですけどね…。わたしは機械工学科を卒業して紆余曲折を経て土木の施工管理に就いていますが、土木というものをそれなりにプライドを持って携わっているつもりです。
当方住宅業界に携わる者ですが土木のスケールの大きさ、技術力の高さには頭が上がりません。住宅なんてもはや建築と呼ぶのも憚られるほど、おままごとみたいなレベル。しかも向こう10年の需要の先細りは急激なものでありましょうし、今30年前に戻れるのであれば、今度は建築ではなく土木の道に進みたいとすら思います。
土木作業員
のイメージが強すぎて・・・
建設産業は、①市民生活と社会経済生活に欠かせない「インフラ」を建設し維持し改廃します。②自然災害時には行政からの要請をうけて、緊急出動し、復旧・復興に必須的貢献をします。③建設工事に係るサプライチエーンを通じて、地域の産業、雇用創出に寄与します。一部の資機材については輸入がありますが、「人」「資材」「設備・機械」のほとんどは地域(国内)調達です。なので、農林水産業や工場生産消費財生産産業に比べてグローバル化の脅威はありません。景気、予算等の影響は受けますが、存立基盤のしっかりした産業です。
技術と技能、そして建設工事従事者とのチームワークで成り立つ産業です。技術・技能は幅広く、奥深いものです。日本は「会社での育成」で産業人としてのスキルを身に着けます。じっくり落ちついて所属組織の仕事に取り組んでもらえれば、と思います。
モノつくりは自分の表現です。
ゼネコン45年、地域建設会社と関わって5年経験からのコメントです。
工学部工学科になっている理由を文科省側視点から考察すべき。その下のコースやプログラムでは土木ついてる。取材力不足。
そう考えると我が母校の日本大学は潔いな
理工、生産工、工にそれぞれ “土木工学科” があるって、もっと胸を張って欲しい
社会なんとかとか環境なんとかとかダサいねん
土木工学科。これがかっこいいんだろ