事故物件は価格を低めに設定
事故物件の告知義務は、不動産取引において、過去に物件内で人が亡くなった事件や事故があった場合、その事実を買主や借主に伝える義務のことです。
告知義務の期間は、賃貸物件の場合は原則として事件発生から3年程度で、売買物件の場合は期限がありません。告知義務を怠ると、契約解除や損害賠償請求に繋がる可能性があります。価格は売買も賃貸も低めに設定されます。
建設中に事故が発生した場合の資産価値は?
新築マンションについては、一般に、工事完成前に売買契約が締結されます。
では、建設中に事故が発生した場合、契約解除や損害賠償請求が可能なのでしょうか? 判例があります。
■裁判の事例
- 平成20年4月6日、買主Xは、売主Yから完成前のマンションの一室を、売買代金1億3,420万円で購入し、Yに対し、手付金として1,342万円を交付した。
- 平成20年8月29日、施工業者Z社の下請企業の従業員2名が、マンション建築中に、エレベーターシャフト内において、落下して死亡した。
- 本件はニュースで報道され、またインターネット上に書き込みおよび映像がアップされた。
- Xは、Yが本件建物を「最上級の安心感、高級感、くつろぎ等の性能、品質、価値を有する」ものとして引き渡すべき義務を負っているところ、この義務を果たすことができなくなったとして、Xは売買契約解除・手付金返還・慰謝料を請求した。
■判決の要旨
- 買主の主観的な不快感によって、購入目的を達成できないほどの瑕疵があるとは言えない。
- 建設工事中の事故であって、殺人事件などと同視できない。
- 住戸の専有部分ではなく共用部分で発生したものである。
- 「安心感、高級感、くつろぎ等」は購入勧誘の文言に過ぎず、その期待感を保証するとは認められない。
- 住み心地に重大な影響を与える情報、価値を貶める情報が流布している事実が認められない。
売買契約解除・手付金返還・慰謝料請求、いずれも認めるに足りないとして買主Xの請求をすべて棄却する。
(平成23年5月25日 東京地裁)
原告の請求はすべて却下されました。資産価値も下落していないと認定されました。
もしも、この事案で裁判所が「解約を認める、手付金も戻る」という判断をしていたら、今後、施工中での同様の事故ですべての契約者は自由に白紙解約できる可能性が出てきます。しかし、そのような判断にはなりませんでした。
「事故物件」とは逆の「幸せ物件」の資産価値は?
「事故物件」の話はよく聞き、一覧サイトもありますが、その逆で「幸せが舞い込む物件」の話はあまり聞かないと思います。「幸せを呼び込む部屋」として、その部屋に住んだみんなが出世している部屋があるそうです。
ウソやデマを意図的に拡げる「フェイクニュース」についてマサチューセッツ工科大学がツイッター(X)を研究したところ、「ウソやデマは拡散力において100倍、拡散速度は20倍」という結果が出たということですから、幸せ物件情報よりも事故物件情報の方が広まりやすいのかも知れません。
実在する、ある「幸せを呼び込む部屋」は、最上階の角部屋で、築年数は25年と古く、普通の1Kですが、日当たりと眺望が良いそうです。しかしそういう告知はしないので、家賃はとくに高いわけではなく普通のようです。しかし、この部屋は築年数25年を経過していても雨漏りもなくカビの問題もなく、快適に住める、しっかりと施工された建物であるとは言えるかと思います。
古くてもしっかりした部屋を選んで日差しと眺望を楽しめる人には幸せを呼び込む力があるということでしたら、「幸せを呼び込む部屋」は近くにあるのかも知れません。