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日本のCO2排出「2/3」はインフラ関連。土木分野のCN実装を阻む「構造的課題と打開策」とは?

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長井 雄一朗
公開日:2026.06.11
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左から、小澤 一雅次期会長、金子恭之国交相、池内幸司会長、三輪準二専務理事

左から、小澤 一雅次期会長、金子恭之国交相、池内幸司会長、三輪準二専務理事

目次
  1. CNの技術展開と社会実装を阻む「3つの構造的課題」
  2. CNの「普及の壁」を打破する3つのアプローチ
  3. CN実装の鍵を握る「4つの本質的視点」
  4. ルールを変え、人を育てる。分野横断のCN推進

公益社団法人土木学会(池内幸司会長)は、2025年度会長プロジェクトの成果として提言「カーボンニュートラルでレジリエントな社会づくりプロジェクト~気候変動に対する緩和と適応に向けて、何を改善すればよいのか~」をまとめ、池内会長は2026年6月9日に、金子恭之国交相に同提言を手交した。

同提言は、土木分野でのカーボンニュートラル(CN)の加速を目的に、多岐にわたる取組みを体系的に整理したものだ。単なる技術的な実践の提示にとどまらず、それらの社会実装・普及を図る上で壁となる基準・規制・制度・運用上の障壁を明確化し、具体的な改善の方向性まで踏み込んで提示している。

日本全体のCO2排出量の内訳を俯瞰すると、土木分野の重要性は明確だ。建設機械の稼働や主要建設資材の製造・輸送というインフラの整備に直接・間接に関わる排出量は約13%を占める。これに加え、道路利用や各種輸送、家庭やオフィスでのエネルギー使用など、インフラの運用・供用に起因する排出量は約49%に達し、日本全体の総排出量の約3分の2が、何らかの形でインフラに関連している。これは、インフラの「つくり方」と「使い方」を同時に見直し、変革していくことが、日本のCN達成の鍵を握ることを示している。

日本のCO2排出量の内訳

日本のCO2排出量の内訳

土木学会は、この巨大な課題に対して土木分野で加速し、さらに非常時の地域の機能維持の相乗効果を生み出すべく、2025年度会長プロジェクトとして「ーボンニュートラルでレジリエントな社会づくりプロジェクト」特別委員会を組織し、2026年5月に産官学の知見を結集した包括的な提言を取りまとめ、5月25日に記者会見を行い広く公表した。

池内会長は金子国交相に対し、提言における課題と取組みの方向性、CN実現に不可欠な視点、土木分野のCN「見える化」、推進への課題と障壁の事例について説明。「土木分野でもCNに資する取組みが多い反面、障壁も存在する。今後、課題や障壁をフォローアップ・可視化し、必要な制度改善に向けて国交省や関係機関と連携し、推進していきたい」と強調した。

池内会長の説明を聞く金子国交相

池内会長の説明を聞く金子国交相

これに対し、金子国交相は池内会長が提示した「土木分野におけるCNへの取組みの全体像」の図について、「細部にわたり土木分野にCNが関わっていることが理解できる。国交省は交通や社会インフラなど幅広い業務を担うが、地球温暖化への取組みについても提言を参考にしたい」と言及。

さらに、「脱炭素化と自然との共生は今後の重要テーマ。国交省として環境配慮型の取組みを展開していく。とくに温暖化に伴う台風や豪雨災害だけでなく、近年は40℃以上の『酷暑日』が記録されるなど環境が変化しており、従来同様の対応では及ばない。提言を精査し、いかなる事態にも対応できるしなやかな体制を構築したい」との意向を示した。

土木分野におけるCNへの取組みの全体像

土木分野におけるCNへの取組みの全体像

終了後、池内会長は施工の神様との個別取材に応じた。金子国交相への手応えについて「真摯に耳を傾けていただき、大変ありがたかった」との所感を述べる一方、今後の方向性については、「提言は提出して終わりではない。学会内部で検討中だが、要望に応じて各分野のフォローアップを進めたい。今回提起した現場の課題や障壁がどの程度改善されるかを確認し、とくに重要テーマは関係機関へ働きかける。現場から多くの要望を得てまとめた提言であり、できる限り実現する方向で動きたい」と明かした。

では、具体的に提言ではどのような課題が指摘されているのか。次項からは、その全容と構造的な課題を紐解いていく。

CNの技術展開と社会実装を阻む「3つの構造的課題」

土木学会は提言の策定に当たり、国内の主要建設会社、エネルギー事業者、大学等の研究機関を対象に広範なヒアリング調査を実施した。その結果、前向きな技術開発が進む一方で、社会全体への横展開を拒む3つの構造的課題が浮き彫りとなった。

第1に、現在では多くの大手ゼネコンや先進的な地方自治体が、熱心にCNの取組みを推進している。しかし、これらの優れた試みは個々の組織内で閉じ、点在したまま展開されており、土木分野全体として俯瞰的・体系的に整理・可視化されていない。そのため、「業界全体で何が、どのように、どの程度行われているのか」という進捗の全体像が見えにくくなっている。

この整理の不足は、技術的な共通課題やサプライチェーン上のボトルネックに関する業界共通の認識形成を妨げ、各主体の孤立を招いている。結果として、取組みが断片的・局所的なものにとどまり、産業全体としての効率的・効果的なCNの展開が妨げられている。さらに、地域住民に対しても取組みの意義やインフラの価値が分かりにくく、社会的評価や将来の人材確保で本来得られるべき支持を十分に獲得できていないという側面もある。

第2に、近年の巨大地震や激甚化する風水害で発災直後の停電や燃料途絶が人命や社会機能の維持を著しく脅かす事例が頻発している。避難所や重要拠点での電源確保の成否は、災害時の直接死を防ぐだけでなく、その後の避難生活での健康悪化に伴う「災害関連死」を抑制するための生命線だ。現状のインフラ整備では、平時の脱炭素化施策と非常時の自立型電源確保の連携は、いまだ十分なレベルに達しているとは言い難い。CNに向けた地域の分散型電源や蓄電システムの導入は、そのまま地域の災害対応力強化に直結するはずだ。だからこそ、これら両者を一体的に運用する枠組みの構築が急務となっている。

第3に、実証実験や一部の先進事例で優れた効果が確認された新技術や低炭素資材でも、一般的な工事へ「普及・定着」させようとする段階で、高い壁にぶつかるケースが存在する。背景には、施工の安全性を担保するための評価基準の不在や、関係主体間の責任・役割分担の未整理という論点がある。さらに深刻な問題もある。数十年前の技術水準や従来の社会経済環境を前提に作られた既存の「施工基準、規制、公共調達制度、運用の慣例」そのものが、新技術の経済的自立や現場への導入を阻害する構造的な障壁として機能していることだ。

次のページCNの「普及の壁」を打破する3つのアプローチ

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この記事を書いた人

長井 雄一朗
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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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コメント(1)

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  • - 2026/06/11 19:11

    世界情勢を見るとCNがどうなるか分かりませんね…。

    先ずは電力をどうするか考えないと駄目な気がしますね。

    物事を大きくとらえるとAIが稼働する事も関係しますね。

    国内だけで考えるのも何か違う気がしますしね。

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