【i-Constructionの本音3】実例に見るICT施工のスゴさ

i-Constructionのカイゼン事例

前回「i-Constructionの本質はカイゼンにある」という内容を記述した。すでにi-Constructionの本質については、ご理解いただけたと思う。

今回から、いよいよ実際の現場で「カイゼン」している施工事例を紹介していくことにする。

さて、最初の「カイゼン」事例は、

・施工範囲7.8ha
・土工量474,000m3

という土工現場だ。

ICTを活用して施工期間3割減、コスト1〜2割減を実現できるか?

この現場条件で、ICTを活用して施工期間を3割短縮せよ、さらにコストも1〜2割抑えろと言われたら、皆さんはどうするだろうか?

マシンコントロールのICT建機は何台必要か

整形用としてバックホウが3台くらい必要な現場だとしよう。

まずは、あなたがこの現場の担当者だったら、ICT建機を何台調達するか考えてほしい。

i-Construction活用工事を視野に入れて実施するとなれば、ほとんどの方はマシンコントロール、もしくはレンタル費を考えて、マシンガイダンスのバックホウを3台調達するはずだ。

これが一般的な考え方である。なぜならば、丁張レスで工事を進めるためには、ICT建機が必要だからである。

ところが、この現場では実際には、マシンコントロールのICT建機を1台しか調達していない。

それでいながら、丁張レスで工事を実施した現場である。

本当にそんなことができるのか!?

そう疑いたくなると思うが、以下のような流れで仕事を進めたため、ICT建機1台で十分仕事は捗った。


キセイ概念を打破するICT建機の法面施工

マシンコントロールのICT建機1台で丁張レスを実現

上の写真を見てもらいたい。

丁張レスで実施するため、先行の法面掘削は、マシンコントロールのICT建機が施工を行う。

その後ろは、通常のバックホウでオペレータが先行したICT建機の法面の傾きを見ながら施工を行う。

カルガモ走行のような方法で施工を行うことによって、ICT建機が1台ですべての法面施工を丁張レスで実施したわけだ。

結論を聞けば誰でも納得するだろう。しかし、この発想を生み出すことができるのは、現場で工期短縮とコスト縮減を意識して取り組んでいるからこその賜物だと思う。

工期的には丁張レスや施工効率を考えて、ほぼ当初の予定の2割5分から3割弱ほどの効率を上げ、コスト的にも従来の施工方法よりも2割程度抑えることに成功した。

工期の短縮は、コストが高くても良いのであれば、誰だってできる。その逆もまたしかりである。

しかしながら、現実の世界はその両方を求められている。だからといって、一般的に言われている方法や考え方では、その両方は実現できないのが実際の現場だ。

だからこそ、キセイ概念の打破とカイゼンが必要なのである。この2つの考え方を実践できた技術者たちが、本当の意味でi-Construction推進の実務者であり、経験者なのである。


道路土工の法面施工における丁張レスのICT施工

次に紹介する「カイゼン」事例は、一般的な道路土工である。

もし皆さんが、下記の現場の施工をICT土工で実施することになったら、どう取り組むであろうか。

一般的な道路土工にICTを導入して省力化できるか?

当然、丁張レスで施工をするために、ICT建機を導入して施工するのを疑う人はいないはずである。

しかし実際に、道路土工で切土施工を実施した経験のある技術者は、すぐに気付くはずである。

そう、道路土工の法面施工では、小段排水が必須であることに。

切土はICT建機で実施しても、小段排水を施工するために、必ず雨水排水のための側溝布設に丁張を設置しているはずである。

そもそもICT建機を導入して、丁張レスによる施工が効果を上げられるのは、ICTを使っていることが最大の理由ではなく、ICT施工を行うことで丁張がいらなくなり、施工プロセスが途切れずに連続で流せることが重要なのである。そのために必要なものがICT建機である。

すると残念ながら、上記のような現場では、法切りはICT建機で実施し、側溝布設は従来通りの丁張で実施している現場がほとんどだと思われる。

Hololensの電子水糸が誕生した現場

そこで、この現場ではその課題を解決するために、側溝布設時においても丁張レスを行うためのアイデアを考えた。

そのアイデアとは、Microsoftが販売しているHololensをつかって仮想現実(MR)技術を駆使することであった。そこまではおおむね誰でも考えられるアイデアであることは認めよう。

Microsoft Hololeens / Microsoft

通常であれば、MR技術を活用して、排水側溝をモデリングし、画面通りに布設するためにこのようなモデルを準備するのが一般的であろう。

Hololendsを装着

Hololendsを装着した人から見える画面

排水側溝の色はコンクリート色なので、誰でも最初は上記の写真のように灰色のモデルを作ってしまうだろう。

だが、実際にこのモデルで現場で見てもらったら、「まったく見えない!」と怒られた。そう、保護色になってしまって見づらいのである。ならばと思い、側溝のモデルを緑や青などにしてみたが、見えづらさはあまり変わらなかった。

そこで、現場からどんどんカイゼン意見が出てきて、結果的に下記のような形に落ち着いた。電子水糸の誕生である。

電子水糸で丁張の代わりにした状況

実現場でのキセイ概念の打破とカイゼンはこのようにして生まれ、本当の意味でi-Constructionが実現場で実践されている事例である。

施工サイクルの連続性を維持した生産性向上を

ICTやICT建機を使うことがi-Constructionだ、そう紋切り型に考えている方がなんと多いことか。

本当のi-Constructionとは、キセイ概念を打破し、カイゼンすることによって、施工サイクルを止めることなく、連続性を持たせた生産性向上を確立することである。

こうした境地にたどりつくためには、やはり現場での実践がものをいう。

2018年12月25日に発表された第2回i-Construction大賞の受賞者たちも、このような対応を進めている企業や団体が受賞したのではないだろうか。

今まさに、建設業全体として生産性を向上させるためにこのような取り組みが求められている。

いざ、実践あるのみ!

次回は、このような前向きな取り組みの中にも、まだまだ課題が多くあるi-Constructionの状況に触れてみよう。

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バブル崩壊直前に施工会社に入社。施工会社では造成現場に従事し、測量をはじめ現場のノウハウを叩き込まれる。もちろん飲みにケーションなども叩き込まれ、土木の世界に引き込まれる。土木の世界に魅了されるも、もうちょっとスマートな施工管理がしたいと独学でICTを勉強し、社内で数々の変革を起こしたため異端児扱いになる。それでもめげず、どんどん独自ワールドを構築し、今や施工管理でのICT活用は当たり前。最近ではさらなるICTツールの展開や活用を進めるためワールドワードで情報収集中。
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