ダム建設現場の地質を3D化
――どういうサポートをしていたのですか?
宇津木さん 例えば、AIやBIM/CIMなどを使って、現場の地質を3D化して、説明したりしてきました。発注者に対し、感覚的に「地質が悪い」と説明しても、なかなか理解されません。こういうツールを使って、わかりやすく説明すると、理解してもらいやすくなるんです。
――施工前に地質調査しているのに、後で地質が悪いことが判明することがあるんですね。
宇津木さん それは当然あります。ボーリング調査を数mピッチで実施したとしても、ボーリングした間がどうなっているかはわからないからです。
――AIやBIM/CIMは安藤ハザマが開発したものですか。
宇津木さん そうです、既往の要素技術を組み合わせて、現場で使えるものにしました。AIによる分析と言うと難しそうですが、過去の崩落事例の因果関係をもとに、現況に照らしてどうかを分析するということなんです。
現場の技術者から「こんなのやりたくない」と反発されたこともありましたが、発注者に理解してもらわないと、補強工事などのための費用が出ないので、最終的には受け入れてもらいました。AIやBIM/CIMなどの新しい技術をつくっても、実際に現場で使えないと意味がありません。私にとって、現場での経験は大きかったです。
BIM/CIMも徹底的にやりました。ただ絵を描くだけではなく、斜面の計測結果を3D化し、リアルタイムにベクトルで表示できるようにしたんです。オフィスにいながら、世界の現場を見れるようにしました。
竣工検査の際には、キングファイル何十冊に上る資料を納品するのですが、通常は書庫に埋まってしまっています。このソフトでは、この資料データすべてを3次元図にヒモ付けたんです。
既往の要素技術を組み合わせ、独自の解析システムを開発
――独立された理由は?
宇津木さん 父親の介護、妻の体調不良が重なったことが一番の理由です。2018年12月末で会社を退職し、翌2019年1月に会社を立ち上げました。
――どういう会社ですか?
宇津木さん 簡単に言えば、地形、地質に関するITソリューションを提供する会社です。ITは安藤ハザマが開発したものではなく、既往の技術を自分で組み合わせた独自の解析システムを使っています。
例えば、AIは、Googleが開発したオープンソースのTensorfowを使っています。全体のシステムはある会社のクラウドを借りています。
当社が今主眼に置いているのは「まちの防災」です。変位などの情報をヒモ付けた被災現場の3次元図を作成し、防災に活用する取り組みを進めているところです。
地質屋さんは重要。
土木では深くは検討しきれない。
だけれども、土木で一番難しいのは土。
なので、土質屋さんは土木屋の先生。