ハザードマップの3D化
――防災ですか?
宇津木さん ハザードマップは全国にありますが、国や研究機関などがそれぞれで作成していて、一元的に管理されていません。自治体が作成するハザードマップは、2次元のモノがほとんどです。紙のハザードマップは地形がわかりにくいし、スケールや地域によって何枚ものマップが必要で、全体を俯瞰しながら見ることが難しい代物です。
GISを活用したオープンなマッピングシステムがいくつか出ていて、私はArcGISというソフト使っています。私はArcGISをベースに、様々なハザードマップを貼り付けて、一元的な3Dハザードマップを作成しています。
お付き合いのある自治体から作成しているので、現在はまだ10自治体ほどですが。ソフトを買ってデータを貼り付けるだけなので、誰でもできるんです。
ある自治体の3Dハザードマップを作成しましたが。もともとのハザードマップでは、洪水などで浸水が予想される場所に避難所が設置されていました。全体を俯瞰しないから、こういうことが起きるんです。
住民は、自治体が指定した場所に避難するのではなく、自分で逃げる場所を決めるのが基本です。自治体が指定しているからといって、必ずそこに避難する必要はありません。
2014年8月に広島土砂災害が起こりました。この災害は、花崗岩によって形成されたV字形の沢に、大量の水が流れ込み、地表が洗い流されたことによって、発生しました。花崗岩はマグマが冷え固まった硬い石です。
広島市在住の防災士の方が個人的に、私が作成した3Dハザードマップを購入していただきました。彼は、既存のハザードマップをもとに、市民に対し災害のメカニズムを説明したところ、まったく伝わらなかったそうです。
ところが、私が作成した3Dハザードマップで説明すると、V字形の地形が視覚的にわかりやすく、市民に理解してもらえたとのことでした。
あと、災害で問題になるのは、住民が自分で災害情報を探さないといけないことです。川の氾濫情報はこっちのHPを確認するとか、雨量情報はあっちのHPを確認するといったことが必要になります。
このやり方だと、アクセスが集中してサーバーがダウンするリスクもあります。バラバラな情報を一つのハザードマップに載せて、プラットフォーム化することが重要だと考えています。
私は「一人土木地質コンサル」
――防災以外の用途も考えているのですか?
宇津木さん 3次元図は、水道管など地中構造物もプロットできます。スマートシティにも活用できます。島根県益田市のスマートシティの試験モデルに選ばれたある会社の方から声がかかり、私も参加し、益田市の3Dマップを作成しました。
最終的には、まちの現在、過去、未来すべての情報入った3Dモデルをつくり上げたいと思っています。情報に変更があればAIはがそれを判断する。そういう時代が来ます。
――今後どのような活動を?
宇津木さん 私は自分を「一人土木地質コンサル」だと考えています。
普通の地質コンサルは、山を見ることもなく、ボーリング調査して地質図を描いたらそれで終わりですが、私は現場で毎日、山を見て、様々な課題に対処した経験を活かし、データをもとに3次元図を作成し、様々な情報を一元管理することで、防災やスマートシティに役立てるようにしているわけです。
システムがあれば、私が現場に行かなくても、現場を遠隔でサポートすることができます。そういうこともやっていきたいところです。
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地質屋さんは重要。
土木では深くは検討しきれない。
だけれども、土木で一番難しいのは土。
なので、土質屋さんは土木屋の先生。