首都高ブランドを活かし、インフラを守る
――インフラドクターをどう展開したいですか?
田沢さん インフラドクター、つまり3D点群データは、いろいろな分野、いろいろな場面で展開していきたいと考えています。インフラドクターは、遠隔で作業できるので、新型コロナウイルス時代にも対応できます。新しいツールなどを乗っけていって、使い勝手が良くて、安くて、サクサク感があるシステムを目指しています。建設業界は、物事を堅苦しく考える傾向がありますが、そういう部分を除いたやり方ができればと考えているところです。
ターゲットは、基本的には全インフラです。インフラには様々ありますが、管理者が考えていること、頭を悩ませていることはだいたい同じです。インフラドクターによって、インフラ管理者が抱えるリスクを減らしていきたいです。インフラドクターは実際に首都高で使っている技術です。このブランド力を使えば、他のインフラの方々にもしっかり使ってもらえるものと確信しています。

首都高技術インフラドクター部のメンバーとスタンディングミーティングに臨む田沢さん(右から二人目)
3D点群技術は、携帯やスマホと一緒で、技術の入れ替わりが激しい分野ですが、われわれも日々改良改善を続け、「入れ替わる」ポジションをキープし続けていきたいと考えています。とはいえ、われわれはインフラ点検のマーケットを牛耳りたいとはまったく思っていません。寡占、独占は危険なことだからです。いろいろな技術がある中で、良い意味での競争をしていきたいと考えています。
――災害にも適用できそうですね。
田沢さん ダムや河川の堤体などのインフラの予防、予測などに使えると考えています。点群のセンサーで監視しておけば、躯体になんらかの変位が生じた場合は、異常を検知してアラートを出すことが可能です。災害後の現状把握にも使えるので、復旧作業のスピードアップにつながります。
あと、保険会社の災害査定にも活用できると考えています。災害が発生した際、保険会社の災害査定は人海戦術で行っているそうですが、非常に大変な作業です。これを点群データでやれば、家屋の倒壊状況などの調査を、確実かつ効率的に行うことができますので。
他人の役に立ってこそ、本当の喜びがある
――座右の銘が「己ばかり考える奴は、己をも滅ぼす、人を守ってこそ己が守られる」だそうですが。
田沢さん そうです。黒澤明の映画「七人の侍」の名セリフです。私はこの言葉を、「自分の成果はではなくても、他の人の仕事(チームとしての仕事)の成果が上がることを喜ぶことが大事だ」という意味に解釈しています。それができるチームが本当の「チーム」だと。
アメフトの名監督も「己を捨てられる選手がチームを勝利に導く」と同じようなことを言っています。「己を捨てる」と聞くと、「プライドも捨てるのか」と言う人がいますが、それは全然違います。
どんなに良いツールがあったとしても、自分たちのことだけを考えていると、先はありません。すぐに飽きられます。他人の役に立ってこそ、本当の喜びがあり、長く続いていくものなんです。そう簡単にできることではないですが。
――プライドではなく、エゴを捨てるということでしょうか。
田沢さん その通りです。プライドは持っておくべきですが、それを全面に出してはいけないということです。
――建設業界にメッセージがあれば。
田沢さん 建設業界というか、インフラ全般に携わる人々には、世界中で生活している人たちに寄り添うことが必要だと思っています。昔はインフラをつくることによって、人に寄り添ってきました。でも今は、インフラを守ることで人に寄り添う時代になっています。
確かに、モノをつくるのは楽しいことです。目に見える成果ですから。ただ、つくることだけがインフラの役割ではないということを多くの人が理解してくれることを期待しています。
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