建設女子、現場女子を応援するイベント「つくっている私がすき!」
国土交通省がお笑いの吉本興業グループとタッグを組んだ。
建設業に携わる女性技術者・技能者を5年以内に倍増することを目標に掲げている国土交通省は、「もっと女性が活躍できる建設業行動計画」を策定しており、その一環として吉本興業グループ所属タレント「おかずクラブ」をメインキャラクターに起用。建設女子や現場で働く女性作業員の声を取り入れ、彼女たちを応援するキャンペーン「おうちクラブ」を2016年8月から実施している。建設業で活躍する女性の姿を取り上げ、全国各地でキャンペーンを行うなど、建設現場の魅力を発信中だ。
2017年2月25日、そのキャンペーンの一つとして国土交通省は現場で働く”現場女子を応援するイベント「つくっている私がすき!」を、東京スカイツリータウン1階広場で開催した。
司会は、お笑い芸人のあべこうじさん。参加者は「おかずクラブ」のオカリナさん、ゆいPさん、「鬼越トマホーク」の坂井良多さん、金野博和さん。そして建設女子からは大高愛梨さん(T.T.C株式会社)、太田成美さん(中村表装株式会社)が登場。さらに本イベントでは農業、車整備の現場で働く現場女子として、竹内優佳さん(有限会社ファームリンクル)、野寺沙織さん(ダイハツ東京販売株式会社)も参加した。
現場女子の生の声を聞きながら、現場で働くことの楽しさや大変さ、働く環境についての改善提案など、笑い話や恋愛話を交えてクロストークした。建設女子2人の生の声を中心に、ざっくりまとめて紹介する。
建設現場も芸人も女子が増えている!
あべこうじ 今、建設業でめちゃくちゃ女性が増えています。もっと現場で働く女性を盛り上げようということで「おかずクラブ」と「鬼越トマホーク」、現場女子のみなさんが東京スカイツリーに集まりました。
おかずクラブは「おうちクラブ」という国交省のキャンペーンで建設女子を盛り上げていますが、建設現場での作業は女性の体力だと大変だと思いますか?

あべこうじ
おかずクラブ いえ、そんなことはありません。私たちも富士教育訓練センターで実際に作業体験をしました。重機に乗って、ユンボも操縦しましたが、女性の力でも作業は問題ありませんでした。左官は、ちょっと大変でしたけれど。ものすごく楽しいですよ。

おかずクラブ
あべこうじ 今、重機や機械の性能が進んで、女性でも十分作業ができますね。いい時代になりました。鬼越トマホークも「おうちクラブ」キャンペーンのメンバーです。鬼越トマホークは体が大きいから現場感がハンパないですが、鬼越トマホークは現場体験しましたか?
鬼越トマホーク 体は大きいですが、草食系なんです。エアコンの掃除はしたことがありますが、私たちは体が大きすぎて建設現場には狭くて入れないんです。コードを持つことはできます(笑)

鬼越トマホーク
あべこうじ おかずクラブは「おうちクラブ」の企画でいろいろな職業体験にチャレンジして、「おうちクラブ」のWebサイトに動画をアップしていますよね?
おかずクラブ 鉄筋コンクリートの中にある鉄筋を結束する作業もやりました。最初は難しいですが、慣れれば簡単です。女性が入ってきても問題がない現場です。教えてくれた先生もネイルしていました。女性でも活躍できることを知ってもらうために、「おうちクラブ」のWebサイトで動画を配信したりブログにアップしたりしています。
あべこうじ 体験した感じでは、女性が次々と増えている感じですか?
おかずクラブ 増えていますね。建設女子を応援する「おうちクラブ」のサイトのインタビューで建設女子の方々と会って話を聞きますと、みんな建設現場に興味を持っています。ユンボに乗っている姿が格好いいから、という理由でこの仕事を選んだ女子も多いです。

おかずクラブ
あべこうじ 現場女子が増えていることについて、鬼越トマホークはどう思いますか?
鬼越トマホーク 現場女子が増えていることと、お笑いの芸人女子が増えていることは同じ現象ですよ。建設現場も漫才界も同じです。芸人女子は芸が細かく、建設現場も細かい作業は女子のほうがセンスがあります。
おかずクラブ 現場女子も芸人女子もどちらも増えたら楽しいね。でも私たち、楽屋にいるときは居づらいのよ。芸人男子は、散らかすから整理するのは私たち芸人女子なのよ。
あべこうじ 建設現場でもお笑いでも、男子が気がつかないことを女子は気が付きますね。これから、現場もお笑いも女子が増えていくことになりますよね。
そこで、今日は現場女子4人を呼んでいます!この方々です、どうぞ!
(現場女子4人が登壇)

左からあべこうじ、現場女子の大高愛梨さん、太田成美さん、竹内優佳さん、野寺沙織さん、おかずクラブ、鬼越トマホーク
あべこうじ まずは大高愛梨さん、自己紹介から。
大高 はい。T.T.C株式会社の大高愛梨です。美装と養生の作業の仕事をやっています。
あべこうじ 美装とはなんですか?
大高 できあがった建物をクリーニングします。
あべこうじ 養生は?
大高 たとえて言うなら、引越する時にエレベータや荷物を傷付けないように青いシートを貼りますが、あのような作業です。

建設女子の大高愛梨さん
あべこうじ 仕事はどのくらい経験を積みましたか?
大高 1年少しです。
あべこうじ 仕事楽しいですか?
大高 はい。仕事楽しくなりつつありますね(笑)
一同 (笑)
あべこうじ どうですか。女性でもウェルカムな業界ですか?
大高 重いものを持つことはないので、女性でも問題はありません。
あべこうじ このような作業は、女性の繊細さが活きてきますね。それじゃ次は、太田成美さん自己紹介をお願いします。
太田 中村表装株式会社の太田成美です。壁紙を貼っています。

建設女子の太田成美さん
あべこうじ 大変なところってありますか?
太田 ありますよ。壁紙貼るときは、ノリが必要な場合もありますから、それが重かったりします。自分の慣れもありますが、楽しい方が多いです。
あべこうじ 関東近郊で働いているのかな?
太田 はい、そうです。
あべこうじ でも口調は東北の言葉ですよね?
太田 実は青森の出身です(笑)もともと青森の工業高校出身で、壁紙に関心が強かったんです。職場体験をした際、現場を見て壁紙を貼る仕事に強い魅力を感じました。
あべこうじ 1つのビルを建てるのに、50職種ぐらいの建設職人さんが関わっているそうです。仕事が細分化されています。女性だからこそのセンスが生きてくると思います。
(続いて、農業で働く竹内優佳さん、車整備の現場で働く野寺沙織さんの紹介、そして現場女子に関するクイズ大会が行われた)
【クイズ大会】なぜ私は建設女子になったのか?
クイズの第一問目は、太田成美さんが「この仕事を選んだ理由はなんでしょうか?」というもの。クイズの正解者は、吉本芸人のサイン色紙と、おかずクラブのお弁当箱が貰える。
会場からは「お給料がいいから」「いい男性に会えるから」などの回答があったが、いずれも不正解。
最後に幼い男の子が手を挙げたが、「!”#$%&”&%$#”!」と何を言っているか不明。そこで、司会のあべこうじさんが機転をきかせて、「壁紙にはたくさんの種類があってかわいらしいから? そう、正解!」と、男の子を無理矢理に正解にした。
太田 壁紙はたくさん種類があるのでかわいらしいと思ったのです。中には壁紙では無く木ではないかと思った壁紙もありますね。
あべこうじ 壁紙一枚で雰囲気が変わりますね。大高さんは、いい男性に巡り会えるから入職したのかな(笑)
大高 実はスポーツや体を動かすのが好きで、エネルギッシュな仕事に憧れていました。それでこの仕事を選びました。

建設女子の大高愛梨さん、太田成美さん
クイズの第二問目は、竹内優佳さんが「女子だからこそ現場で困ることは何でしょうか?」というもの。こちらはたまたま会場を通りかかった建設女子が「トイレだと思います」と回答し、すぐに正解が出た。
大高 現場にトイレや更衣室がないのは困ります。汚いトイレですと、1回トイレを開けた瞬間に閉じ、途方に暮れることもあります。
太田 トイレは悩みます。公園があれば借りることもありますが、大規模現場には快適トイレや更衣室が欲しいです。
おかずクラブ トイレは綺麗にしてもらわないと困りますね。気持ち分かるわあ。
クイズの第三問目は、ダイハツで働く野寺沙織さんが「女子だからこそ現場で良かったことは何でしょうか?」という質問。こちらも会場の参加者から「女性だからこそ女性目線でお客様に対応できる」と、すぐに正解が出た。
あべこうじ ダイハツは女性のお客さんが多いから、女性目線が大切なんですよね。
野寺 やっぱり女性同士でお話しできることが気楽に話せますし、顔も覚えてもらえるのです。女性でしか話せないこともあります。
あべこうじ そういうのも楽しいよね。建設女子の楽しみは何ですか?
大高 建物を建築する際は、多くの専門工事業者と協力し合いますが、そのときに自分の職種でない建設職人の方々と意見交換し、技能の知恵や知見を教えてもらうことが多く、それが自分の仕事に役立っています。楽しんでいます。仲良くなる技能者といますと、現場でのやる気も違いますね。仲良くなる人がいると楽しいですよ。現場は楽しくがモットーです。
あべこうじ 太田さんはいかがですか?
太田 同じ意見です。壁を貼るための工程は複雑で簡単ではないのですが、色々と教えていただいています。
あべこうじ みんな素晴らしいよね。現場女子に盛大な拍手をお願いします!おかずクラブはいかがでしたか?
おかずクラブ 建設現場は決して男子だけのものではなく、女性がどんどん参加するために、快適なトイレや更衣室が整備されることを応援していきたいです。私たちも富士山が見える富士教育訓練センターで建設現場の作業を経験しましたが、訓練できる場所があることをもっと知って欲しいし、女性講師の人もいて楽しいですよ。女性講師の人も化粧をしていますから楽しい場所です。
あべこうじ 鬼越トマホークはいかがでしたか?
鬼越トマホーク 女子が頑張れば頑張るほど男子も頑張りますから相乗効果もあると思います。これからは男女がともに頑張る時代と感じています。
あべこうじ みなさん、ありがとうございました!
建設女子が増えるキッカケになるか?

現場女子を応援するイベント「つくっている私がすき!」の参加者
現場女子を応援するイベント「つくっている私がすき!」の会場には、「おかずクラブ」や「鬼越トマホーク」のファン、東京スカイツリーの観光客など、普段は建設業と関係ない方がほとんどだった。今回のイベントをキッカケに、建設業に就業する建設女子、そして男子も増えればと願うばかりだ。
建設業の職種は豊富で、男性の力を必要としない、繊細な仕事も数多くある。建設現場は今、育児介護休暇制度の充実、快適トイレ設置の推進、女性が活躍する工事チームの編成など、女性にとっても働きやすい職場になりつつある。女性にとって働きやすい職場は、男性にとっても働きやすい現場だ。女子も男子も共に働きやすい建設現場になれば、これから社会インフラを支えていく若者も増えるかもしれない。