某艦艇基地での台風被害
海上自衛隊の主要艦艇基地の敷地は、海と崖にはさまれている狭あいな敷地に位置するところがほとんどでした。
私が勤務していた某艦艇基地も同様で、急な勾配の崖が庁舎や倉庫等の裏にあるのが当たり前な環境で、台風や地震で崩れた箇所のみ法面をのり枠工で保護している状態でした。
この時、私の担当していた工事ではありませんでしたが、台風被害を受けて予算要求が通った法面のアンカー工が施工中でした。施工段階としては、モルタル吹付前の段階だったと記憶しています。
場所は、殉職された隊員の慰霊碑の真裏であり、日本庭園のしつらえと鯉がいる池がありました。当時の艦艇基地の総監(階級は海将、軍隊で言う海軍中将に相当)は慰霊碑の心配をされていたので、事前の打ち合わせでは慰霊碑周辺の仮囲いとネットをかけており、養生はしっかりとなされていました。
そのような中、台風が某艦艇基地に来るという気象予報がだされました。朝の会報でも総監は法面工事に触れ、慰霊碑には損傷のないよう指示を出されていました。担当者も施工業者には台風通過前には慰霊碑を確実に養生されているよう確認をし、工事現場での台風被害がでないよう指示を出していました。
台風通過は夜中から明け方にかけてでしたので、その日は当直以外は早めに仕事を切り上げ帰庁しました。当時、私は艦艇係留岸壁工事の担当をしており、朝6時には出勤していたため、5時ころに起床しました。
外を見ると雨は上がっていましたが、大雨と風により樹木が散乱していました。岸壁工事現場の確認をしようといつも通り6時前に正門を通過したとき、遠目から法面の一部が崩落して基地内道路に流れ落ちていたのを見つけました。
パッと見たところ大きな崩落ではなさそうな感じだったので、担当者が当庁してから対応するだろうなと思って庁舎に向かって歩いていると、その崩落した崖のふもとに人が2人立っているのを確認しました。