それぞれの監督にカラーがあり、やり方も十人十色
振動や騒音について対策をした後は、実際に耳による感覚も重要である。
数字上は騒音や振動を低減できていても、人間がうるさいと感じてしまえば、それは苦情につながる。私は、実際に住民の住む境界まで足を運び、工事中の騒音がどのように聞こえているのかを確認するようにしていた。
気になる箇所を見つけた場合は、その近隣の家を訪問し、「騒音はうるさくないですか?」と聞くように心がけた。そこで、「うるさい」という言葉を受けたこともあった。
その場合は、住民の方が出かけられる時間帯を狙って作業を行い、工事の作業内容をこまめに伝えるようにしているうちに、その対応に感動され、あなたの工事ならば我慢するとまで言ってくれるようになった。
ここまでしていると、先輩から「工期が最優先だからあまり気を使いすぎるな」と指摘を受けたこともあった。しかし、私の場合は結果的には、その騒音の低減対策や実施状況が評価され、なんと創意工夫の項目で満点を獲得することができたのだ。
確かに、工期や工事における作業効率も重要なポイントである。しかし、自分が工事を任された以上、そこは自分の現場なのだ。どこに力を入れて、高得点を獲得するのかも、自分で決めて良いのではないだろうか。
工期などは少し遅れてしまったが、私は人間的な努力が得点をカバーしてくれたと思っている。
それぞれの監督にカラーがあり、やり方も十人十色だ。人のやり方ばかり気にせず、自分のやり方を少しずつでもよいので模索すれば、この仕事はもっと楽しくやりがいを感じることができるだろう。
私も住民説明会や近隣挨拶では、出来ない事ははっきり断りますし、騒音振動工事や粉塵については一言「ご主人、奥様の思っている以上だと思います。」と必ず言います。