嫌だった現場監督ベスト3
17年間のキャリアを捨て、大工職から施工管理に転身した私だが、実体験から思うことは、職人としての施工経験やノウハウは、施工管理で必ずしも役に立つわけではないということだ。
施工管理の新任として、現場に挨拶回りに行った時のこと。行く先々で、職人から開口一番に言われた言葉は、「あまり細かいところは見過ぎないでね」「大工が来るなんて、なんか仕事しづらいなあ」だった。
納まりや段取りを知っている、元大工の施工管理者が現場に来るというだけで、現地の大工はやはり「やりづらい」という感覚を抱くようだ。できれば、現場を知っている施工管理者より、あまり現場を知らない施工管理者のほうが、職人も自由に気持ち良く仕事ができるのかもしれない。
私の場合はどうだっただろうか。職人だった頃のことを思い返してみた。使えない監督や、無茶苦茶なことを言う監督もたくさん見てきた。職人時代の気持ちに戻り、『嫌だった現場監督ベスト3』を挙げてみた。
第3位 堅物で臨機応変な対応ができない監督
- 安全帯やヘルメットが必要のない場所で、かえって施工の妨げになるのに徹底的な装着を執拗に指示する
- マニュアル通りでは納まらないのに、マニュアル通りに強引に納めさせられ、歪な納まりにさせられる
- 納まりが分からないから、これどうします?と聞いてもすぐ答えを出せず、会社に持ち帰って一向に返答がない
第2位 仕上がりよりも、現場を早く終わらせたいと思っている監督
- 最後はコークや補修屋を入れるから、そんな細かいところ適当に納めてと指示する(コークは魔法じゃないよ)
- いつ頃終わる?と、煽り立てる感じで工期のことばかり何度も聞いてくる
第1位 段取りが悪く、後手後手の監督
- 設計との打ち合わせ不足、図面チェック不足により指示がなく、結局壊す羽目になる
- そもそも、職人の図面と監督の図面が違う。変更点が伝わっていない
- 材料が入ってこない。そもそも発注していない
共通していることは、監督のミスで「作ったものを壊す」「工程を逆戻り」「待たされる」「急かされる」ことが、職人にとって一番嫌ということ。職人をやっていたからこそ、痛いほど気持ちは分かる。
私はそうならないように、反面教師にして努力することを心に誓った。施工管理者の皆さんは、このどれかを3回でも繰り返したら、「ダメ監督」のレッテルを貼られるので注意しましょう。
職人が喜びを感じる瞬間とは
施工管理者として、工程管理や施工時の正しい判断、トラブル時の迅速な行動など、これらは職人に喜ばれるという以前に、プロなのだから出来て当たり前のことだろう。同じように、職人にとっても納まりを褒められたところで、職人自身は出来て当然と思っているので、ヘタに持ち上げる必要もない。
では、職人たちは何に喜びを感じるのか。職人時代の嬉しかった出来事を思い出してみた。
自分の工程を終え、無事に次の職人に引き継いで数日したある日、監督から「あの職人さんの後はとてもやりやすいと、○○さんが言ってたよ」と伝えられた。同業種の職人に言われることはもちろん嬉しいが、特に、次工程の職人からの評価は非常に嬉しかった。職人冥利に尽きる瞬間だったし、喜びもやる気も倍増した。
そして施工管理者となった今、私が元職人だっとはいえ、施工管理者の立場で評価をしても、あまり説得力も効力もない。むしろ、褒めるのは失礼な話だとさえ感じる時もある。職人同士だから響くのだ。
職人は、次工程の職人からの評価を聞く機会はほとんどない。だからこそ、施工管理者である我々が、次工程の職人の作業のはかどり方や顔色を見ながら情報を集め、その評価をそっと前工程の職人に伝えてあげる。これが、職人のモチベーションを保つうえでとても大事になる。ちなみに、間違っても悪い評価は伝えないように(笑)。
建築は、完成までのリレーなので、口伝を繰り返し、喜びを連鎖させるようなイメージで家づくりをしたいものだ。職人同士が讃えあっていけるような環境をつくるために、重要な鍵をにぎっているのが「施工管理職」ではないだろうか。
全く同感で、久々にいい記事読ませてもらいました。
そもそも、職人の図面と監督の図面が違う。変更点が伝わっていない
→コーヒー吹きました笑
職人と話が出来なければ良い仕事は出来無い。
良い記事
ですね。良い記事です。
自分自身を見つめ直すきっかけになる良い記事でした。
どちらの立場もたててある書き方ですんなり読めました
※2の方と同様に図面が違うは苦笑いですわ