パートナー企業とともに繁栄する考え方が大切
――協力会社との関係はいかがでしょうか。
斉藤 当社は現業を直接持っているわけではないため、パートナー企業には当社の品質基準に沿って工事などの役割を果たしていただきながら、当社はこれがしっかり実行されているかを管理・監督し、当社が約束する品質としてお客様に提供することになります。つまり、パートナー企業あっての工事部門ですから、優秀なパートナー企業と良好な関係を保つことが重要なテーマです。
良好な関係をつくっていく上では、ビジネスとしてウィンウィンの関係を構築していくことが大切です。我々元請が下請の方々や協業のパートナーに、自らの儲けを大きくすることだけを考えて価格面で叩くような不合理なことをすれば、パートナー企業は離れていくでしょう。
――具体的にはどのような行動が必要でしょうか。
斉藤 まず、我々自身が良い仕事を取ってくるということ。良い仕事というのは、事業性能が良いこともそうですが、ブランドの強化やクライアントとの関係強化に資するなど、次の仕事につながるかどうかも重要です。そして、当たり前ではありますが、その中で、パートナー企業には良い仕事をしていただければ、我々は適切に報酬として還元していく、パートナー企業にとっても実績と信頼の強化と次の仕事につなげていく、という形です
当社のお客様は法人・個人向けと多種多様であるため、パートナー企業の数も多く、それぞれ得意な工事の領域も異なります。当社の持つ工事に関係する情報も、小さな給湯器の交換から大規模なオフィスビルの内装工事まで多岐に渡っており、こうした工事の情報リソースはパートナー企業にとっても魅力的なものとなると考えていますし、当社もその期待に応えなければならないと思っています。
グループ総力をあげた付加価値の提案で勝負
――リフォーム・リニューアル工事では、上流からの提案が重要になるという企業も増えてきていますが。
斉藤 単なる価格競争に陥っては消耗戦になり、業界にとってもよくありません。認めていただくべきは、当社ならではのアイディアやスキル、品質の高さや安全安心といった付加価値の部分です。良品高価路線での仕事をしていかないと、パートナー企業も競争に巻き込まれて疲弊していくことになります。また、ブランド強化にもつながりません。
私たちは、お客様に寄り添い、お客様の課題やニーズを受け止め、そして、お客様自身も気づかなかった新たな価値、新たな空間デザインを提案していくことが求められていると考えています。
――異業種からの参入も増えていますが。
斉藤 当社は建設業です。リニューアル工事は参入障壁も低いことから競争も激しい。しかし、当社の強みは、繰り返しになりますが、新築中古を問わず、業務系や住宅など用途を問わず、ソリューション手法も設計・工事・ファニチャリングなど多岐に渡って一貫対応できる能力です。
つまり、当社の業容自体が非常にユニークであり、他社と差別化できる武器となるものです。また、当社では、働き方提案などが代表例ですが、世のトレンドを捉えて活用や使い方などのコンサルティング力が大きな武器でもあります。こうした強みで激しい競合の中で勝ち抜いていきたいと考えています。

ホテルの事例
――働き方提案でよくある事例で一つ教えていただけませんでしょうか。
斉藤 最近は、「自分で仕事内容に合わせて最適なワークプレイスを選択する働き方であるアクティビティ・ベーストワーキング(以下、ABW)」が増えてきています。在宅勤務やリモートでカフェで仕事をするなど働く場所が多様化する中で、オフィスも今や働く唯一の場ではなく選択肢の一つとなっています。同時に、オフィスはこのABWの効果として、リモートワークで不足しがちな社員のコミュニケーション活性化や、創造性の向上などに寄与していることが、当社の研究からも明らかとなっております。
ABWを実施する為には、働き方の見直しが重要です。例えば、ペーパーレス化が進んでおらず、意思決定も紙の決裁書に承認者のハンコが必要な状況なら非効率を招きますし、固定の席で仕事をしている状況を管理するマネジメントの仕方では、個人の裁量が制限されてしまします。ABWの実施には、オフィス環境の基盤整備と合わせて、マネジメントの見直しと、社員の意識改革が大切です。
また、単なる什器やデスク、会議室や各スペースの配置だけでなく、それを使いこなすための運用やマニュアル、ツール、研修プログラムも含めた準備が必要で、当社ではトータルのコンサルティング提案をしています。
つまり、当社は単なる場をつくるだけではなく、ビジネスのパフォーマンスを向上させるお手伝いをしているわけです。経営視点での提案が重要ということです。
この提案のために、当社では世界の先進的なオフィスの情報収集や産学共同研究に力を入れるなど、ワークスタイルワークプレイスの研究に力を入れています。ニューノーマルな時代に、生産性やクリエイティビィティを生み出す多様な働き方に合った「ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)」のオフィスを、今月より営業を開始した新オフィスでも取り入れております。その時々の仕事の内容に応じて働く場所が自由に選べるABWの考えに沿ったオフィスだからこそ、効果が期待できるのです。
事業領域のウィングをさらに拡大へ
――今後の方針については。
斉藤 当社は三井不動産グループですので、まずはグループ内事業の付加価値を高めていく役割をしっかり果たしつつ、そこで磨かれた能力をもって外へ向けて受注を強化していくつもりです。また、対応用途も今はオフィス、ホテル、住宅が中心で、住宅では個人リフォームと家具商販の比率が高いですが、業務系については物流施設、スポーツ施設、レジャー系施設などにウィングを拡大し、住宅では個人リフォームのマーケットポテンシャルが大きいと見てこれを伸ばしていきたいと考えており、成長戦略の柱だと考えています。
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