シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒド。聞いたことがある方も多いかと思います。では、ホルムアルデヒドはどのように危険な物質なのかご存じでしょうか?
ホルムアルデヒドが危険な物質ということは知っているけど、何が危険なのかを知っている人は少ないのではないでしょうか。
この記事では、ホルムアルデヒドの発生源や人体への影響、建築基準法との関連についてご紹介していきます。
ホルムアルデヒドとは
人体に影響があると言われている、ホルムアルデヒド。目では認識できない無色透明な気体で、匂いが特徴的です。ホルムアルデヒドは揮発性の化学物質で、水素、炭素、酸素で構成されており、古い建物や家具に使用されています。
具体的にはどのような性質で何に使用されているのでしょうか。人体への影響と共に紹介していきます。
どんなもの?
ホルムアルデヒドは、不快な匂いが特徴的な気体です。気体なので目では認識できません。
また、ホルムアルデヒドは防腐効果と水に溶けやすい性質が特徴です。そのため、水に混ぜられて防腐剤として使用されます。この水に混ぜられた防腐剤を「ホルマリン」といいます。あの「ホルマリン漬け」の「ホルマリン」です。
ヒトの粘膜を刺激するため、シックハウス症候群の原因となります。
何に使用されている?
ホルムアルデヒドの主な発生源は「合板」です。「合板」は、壁、天井、フローリングなどに使用されています。数年前まで、ホルムアルデヒドは樹脂や接着剤の原料として使用されていました。
ホルムアルデヒドは10年以上経過しても放散が続くことから、古い建物が危険といわれています。昨今の建材は、ホルムアルデヒドの放散量自体は多くないため、それほど危険ではありません。
人体への影響
ホルムアルデヒドは、ヒトの粘膜を刺激し、以下のような症状が発生します。
- 目が妙にまぶしくなる
- 涙が出る
- 鼻水が出る
- のどが渇く
- のどが痛くなる
- せきが出る
- めまいがする
この症状が出ることを「シックハウス症候群」といいます。生活にも大きな影響を及ぼす症状のため、仕事を辞めざるを得ないケースも考えられます。
赤ちゃんへの影響
赤ちゃんは大人よりも皮膚機能が未熟です。そのため、ホルムアルデヒドの影響も受けやすくなっています。
赤ちゃんがホルムアルデヒドの影響を受けやすい理由は、皮膚機能だけではありません。赤ちゃんは、色々な物を舐めますよね。家具や衣類なども舐めてしまいます。そういった行動もホルムアルデヒドの影響を受けることにつながります。
そのため、法律で赤ちゃん服へのホルムアルデヒドの使用量が制限されています。
ホルムアルデヒドの基準値と測定方法
ホルムアルデヒドは人体に悪影響がある物質です。そのリスクを減らすために、ホルムアルデヒドの基準含有量は2003年7月に改正された「建築基準法」によって定められています。
また、接着剤や繊維製品に対しても、有害物質の含有量が法律によって制限されています。関連する法律と、基準値、その測定方法について詳しく紹介していきます。
関連する法律
2003年7月からの「建築基準法」では、ホルムアルデヒドを含む建築材料は、規格によって使用する面積が制限され、さらに換気扇の設置が義務づけられました。材料ごとの制限は以下になります。
- 第3種ホルムアルデヒド発散建築材料:使用面積制限
- 第2種ホルムアルデヒド発散建築材料:使用面積制限
- 第1種ホルムアルデヒド発散建築材料:使用禁止
「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」では、以下のように家庭用品における有害物質の含有量が規制されています。
- 乳幼児用の繊維製品:16ppm以下
- 大人・子供用繊維製品:75ppm以下
- 接着剤:75ppm以下
各自治体でも、有害物質を減らす取組みが全国的に広がってきています。
ホルムアルデヒド濃度の基準値
屋内空気中のホルムアルデヒド濃度によって、人体に現れる症状は以下になります。
- 0.04ppm:敏感な人はアトピー性皮膚炎になる
- 0.2ppm:目に刺激を受ける
- 0.5ppm:臭いによる不快感を覚える
- 1ppm:発がんの危険性が高まる
- 2ppm:鼻や喉に刺激を受ける
- 4ppm:涙が出る
- 10ppm:呼吸困難に陥る
- 20ppm:急性中毒を起こす
- 50ppm:肺炎を起こし、死亡する可能性もある
わずかな濃度でも症状が発生することから、厚生労働省は、0.08ppm相当以下が健康上望ましいという指針を発表しています。
ホルムアルデヒド濃度の測定方法
空気中のホルムアルデヒド濃度を測定することは、シックハウス症候群に対する最初の対策です。簡易測定器も販売されているため、自分で測定することもできます。ただし、測定結果のブレが大きいと言われているため、おすすめできません。
専門業者に頼めば、10万円以下で測定してくれるので、室内濃度の測定は専門業者へ依頼することをおすすめします。
ホルムアルデヒドへの対策
2003年7月以前に建てられた住居に住んでいる場合、ホルムアルデヒドへの対策はどうすればいいのでしょうか。
ホルムアルデヒドによるシックハウス症候群を防ぐには、影響を避ける、除去するといった方法があります。赤ちゃん服への対策も、考えておくべきリスク対策です。
また、上記の対策でもどうしようもない場合、引っ越すことも必要です。それぞれの対策ごとに具体的な方法を紹介していきます。
影響を避ける方法
ホルムアルデヒドは水溶性のため、水に簡単に溶け込みます。衣服や生地であれば、洗濯するか水で洗い流してしまうことでホルムアルデヒドの影響を避けられます。新しい服や赤ちゃんが使用する衣服は、使用する前に洗濯すれば安心です。
家具を買い替えることもホルムアルデヒドの影響を避ける対策のひとつです。特に、古い家具にはホルムアルデヒドを含んだ物質が使用されているため、ホルムアルデヒドを放出しない商品に買い替えることは根本的な解決方法といえます。
除去する方法
換気は最も簡単なホルムアルデヒド対策です。窓を開けるだけでなく、換気扇や24時間換気システムも利用しましょう。特に、最近の住宅には24時間換気システムの設置が義務付けられているので、常に換気システムを稼働させてください。
また、ホルムアルデヒドは熱せられると空気中に溶けだします。室内が30~35℃程度になるようにあたため、その後、一気に換気するベイクアウトは効果的です。
オゾンによる脱臭もホルムアルデヒド対策になります。オゾン脱臭器はホルムアルデヒド以外の臭いの元も分解することが可能です。
性能の高い空気清浄機は効果的に思いますが、ホルムアルデヒドはガス状の化学物質のため、フィルターで取り除くことは難しいです。あくまでも補助的な使用にとどめましょう。
赤ちゃん服への対策
赤ちゃん服のホルムアルデヒドの影響が心配な場合は、「水通し」をしておきましょう。
ホルムアルデヒドを使用していない赤ちゃん服を購入することも対策のひとつです。その際は、購入時のビニール袋に入れた状態で保管してください。なぜなら、ビニール袋から出してしまうと、室内のホルムアルデヒドが付着してしまうからです。
引っ越しも手段のひとつ
ホルムアルデヒドに対し、除去できれば良いですが、賃貸物件の場合、対策自体が難しいケースも考えられます。そのような場合は、思い切って引っ越しするのもひとつの方法です。
シックハウス症候群の症状に悩んでいる場合は、新たな物件を探してみてはいかがでしょうか。2003年の建築基準法によって、ホルムアルデヒドを発散する建材の使用制限や、換気システムの設置が義務付けられています。2003年以降に建てられた住宅を選びましょう。
危険性を理解し、きちんと対策を立てよう!
ホルムアルデヒドは壁、天井、フローリングなどに使用される、人体に有害な化学物質ですが、現在では法律によって使用が制限されています。2003年以降の物件や家具を選ぶことが一番の対策になりますが、完全にホルムアルデヒドが無くなるわけではありません。
換気をはじめとした対策をとるだけでなく、異変を感じたら専門家に確認してもらいましょう。