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NTTドコモと首都高技術がコラボ!ドローンは橋梁定期点検の救世主となるか?

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公開日:2021.10.13 / 最終更新日:2022.08.16
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ドローンで難点検箇所を攻略できるか

加藤さん(首都高技術株式会社)

加藤さん(首都高技術株式会社)

首都高でのドローン点検実験に当たり、首都高速湾岸線荒川湾岸橋や辰巳橋など、点検箇所を絞り込んだ。いずれも点検員による近接点検が難しい、いわゆる首都高では点検困難箇所と言われている箇所だ。

中でも、荒川湾岸橋は、首都高の数ある構造物の中でも特殊構造物に指定されている難点検箇所の一つだ。従来は、吊り足場などを設置し、なんとか接近点検している箇所だ。この点、「今回の実証実験の最大のテーマは、点検が困難な箇所を効率的にどう点検するかにあった」(加藤さん)と振り返る。

ドローンの運用では、大型ドローンと小型ドローンの2つのドローンを併用する手法をとった。大型ドローンの飛行には、平面の離発着場所が必要。一方、小型ドローンは、手のひらなど、どこからでも離発着できるという違いがある。大型ドローンの離発着場所が確保できないところは、小型ドローンを飛ばすというのが、共同研究において確立した手法の一つだ。

首都高でのドローン点検実験の様子(画像提供:NTTドコモ)

首都高でのドローン点検実験の様子(画像提供:NTTドコモ)

大型ドローンは、株式会社自律制御システム研究所が開発した非GPS環境下でも自律飛行可能な「ACSL-PF2」。LiDARセンサーやフルサイズのステレオカメラ、ライトなどを装備する。

小型ドローンは「skydio 2」。AIによる自律飛行が可能で、上向き90度の画角調整が可能なカメラ(1200万画素)を搭載し、障害物回避機能も備える。飛行経路を任意で設定できる飛行経路導出機能を備えており、非GPS環境下でも飛行させることができる。

荒川湾岸橋での実験では、小型ドローンが大いに活躍した。荒川湾岸橋では大型ドローンの離発着場所を確保できなかったからだ。結果的に、小型ドローンのみで点検することになったわけだ。

小型ドローンでの点検も、決して「イージーに」とはいかなかった。

近接点検の様子(画像提供:NTTドコモ)

近接点検の様子(画像提供:NTTドコモ)

「橋には管理用のハシゴや通路などがあるが、人1人がやっと通れるほどの狭いスペースしかない。そこをよじ登り、橋桁の近くまで行って、小型ドローンを飛ばす必要があるが、ドローンを担いでハシゴを上ることはできず、まず人だけが上って、ヒモで吊るしたドローンを引き上げるしかなかった」(加藤さん)と言う。

ドローン点検では、離発着場所の確保がいかに大事かがわかる。

試行錯誤しながらのドローン点検だったが、結果は良好なものだった。「実際の定期点検にほぼ近い点検結果が得られた」(加藤さん)と評価する。「従来の定期点検では見つけられなかった損傷を見つけるという成果もあった」(同)と言う。

AI解析、報告書作成が今後の研究課題

田仲さん(株式会社NTTドコモ)

田仲さん(株式会社NTTドコモ)

首都高技術とNTTドコモは、これまで実験結果を以って、「ドローンで橋梁点検する技術を確立した」としている。表現が少しわかりにくいが、「ドローン点検は実際に使えることがわかった」ということらしい。ただ、共同研究はこれで終わったわけではなく、実用に向けては、これからが本番のようだ。

この点、首都高技術は「最終的なゴールは、人手をかけずに報告書まで作成することだ」(加藤さん)と話す。NTTドコモも「同じゴールに向かって、より運用しやすいよう、いろいろと突き詰めていきたい」(田仲さん)と力を込める。

そのためには、AIによる解析が重要な研究課題になってくる。「プラットフォーム上の画像データは大きな財産。今後、教師データが揃ってくれば、AI解析なども十分に可能になる」(木田さん)と話す。

他のプラットフォームとの連携は「まだまだ先の話」

気になるのは、docomo skyと他のプラットフォームとの連携だ。首都高技術には、GISと3D点群データを活用した「InfraDoctor®」という独自のプラットフォームが運用中だからだ。この点、「ドローン点検した画像データなどをInfraDoctor®で一元管理する予定は今のところはない。当面は別々のプラットフォームとして運用していく」(加藤さん)としている。

ただ、「InfraDoctor®」を所管するセクションには、「ドローンで撮影した画像の位置情報をGISに付加することができれば、InfraDoctor®の中でデータ管理することも可能だ。ドコモさんもウチも考えていることは一緒だと思う」(安中さん)という意見もある。

木田さん(株式会社NTTドコモ)

木田さん(株式会社NTTドコモ)

NTTドコモは、「お客様から『docomo skyと他のシステムを連携させたい』というご要望が出てくることを想定し、API連携が可能な設計になっています。つまり、システム連携は可能です」(木田さん)と話す。

しかし、「現時点では、多くのお客様にとって、ドローン点検が実際に使えるかどうかを試している段階。その先のシステム連携はまだまだ先の話というのが現状だ」(木田さん)と指摘する。他のプラットフォームとの連携は、当面は「次のステップ」(田仲さん)になりそうだ。

今は、「ドローン点検市場」を育てていくステージ

海上で点検するドローン(画像提供:NTTドコモ)

海上で点検するドローン(画像提供:NTTドコモ)

もう一つ気になるのは、ドローン点検ビジネスを手がける他社との競合だ。近年、「Drone as a Service(DaaS)」という言葉とともに、ドローンで取得したデータを活動した様々なビジネスが生まれている。

とくに、株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマーク(JIW)は、ドローンによるインフラ点検サービスという点で、ほぼ同じビジネスモデルのように見える。なにより、NTTドコモとJIWは、同じNTTグループだ。「同じグループ会社で、競業するのはどうなの?」という疑問があるわけだ。

この点、「現時点では、(JIWなどと)競合しているとは考えていません。今はまだ市場が成長している過程です。むしろ、いろいろな企業と連携し、市場の成長に寄与したいと考えています。」(木田さん)と指摘する。

その上で、「将来的には、誰も人がいないところで、ドローンが勝手に点検しているという世界が来ると考えています。ただ、そこに辿り着くまでには、いくつかのステップを踏みます。今回首都高技術さんと共同研究していることも、そのステップの一つです。これからも一つずつ確実にステップを重ねていきながら、われわれが目標としている世界に到達していきたい」(木田さん)と力を込める。

ドローンによるインフラ点検を巡っては、ここ数年、建設業界内外から高い注目を集めてきた。だが、その期待の高まりとは裏腹に、飛行可能エリアが限られるといった制約のほか、点検やAI解析の精度が確保できないといった課題は、未だに残り続けている現状がある。

そろそろ、インフラ点検分野で「実装されたDaaS」というものをこの目で見てみたいものだ。

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この記事を書いた人

四国の犬
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基本的には従順ですが、たまに噛みつきます。
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