人件費が国境を超えている
――中小企業の問題として、建設業もサービス業も其々似たような課題を抱えている印象を受けました。ところで、建設業は外国人労働者の受け入れを推進し、ベトナム人の就労誘致をしているサブコンもあるほどです。それは、供給が間に合わない実情があるのですが、グラフィック制作の現場では外国人の起用問題はありますか?
園田さん まさに、その問題は制作現場も同様で、人件費の安い中国やタイ、ベトナムに発注する事例を散見します。弊社でも、街全体を3DCGで制作する案件は、工数がかかるので人員リソースが安価な海外に発注したことがあります。
――中国語や外国語などの言葉の壁は?
園田さん それはあります。ただ、基本的に日本語が喋れるディレクターが在籍している海外の会社にお願いします。もしくは、日本語が堪能な中国人ディレクターが在籍する会社ですね。そうしないと問題が発生します。
資料添付して図面だけ渡して「作ってくれ」ってメール文面で翻訳しても、細かいニュアンスや仕様の重要な部分等は明確に伝えないといけないので。
しかし、今は逆転現象が起こり、中国の人件費が日本より上がっているんです。
―― 一人っ子政策が原因でしょうか?
園田さん それもあるかも知れませんが、単純に中国やタイの人件費が高騰しています。聞くところによると、アニメやゲーム業界では日本の相場よりも高い人件費で中国資本のコンテンツ制作会社に従事する日本人もたくさんいるようです。
つまり、海外に優秀な人材が流失しているということですね。
――それ、ショックですね。
園田さん はい、それが現実です。要は日本人の給料が下がっているんですよ。これから給料が上がっていくという望みがあったりとか、もっと自分が成長していけるというチャンスが与えられてビジョンが描けないと、そりゃ、嫌になっちゃいますよね。
先ほど申し上げた日本の生産性が低いことと、お金が廻ってないという問題点は、国民の給料が上がっていかないことに要約できると思います。
――残念ながら、先進諸国の中で給料が上がらないのは日本だけですからね。
園田さん ですね。先進国の中で経済成長してない唯一の国。結局、いくら大変な作業でも給料が上がり将来明るくなっていくという実感を持たせられれば、若者も頑張れると思うんですよ。
給料安いのに納期まで追い回されて精神的にプレッシャーかかったら報われないですよね。だって、給料安い訳ですから。
結局、日本が25年以上経済成長していないことが問題だと思います。若者の仕事の定着率とか、人材の定着率が悪いっていうのは、将来に希望がもてないからっていう。
今は現場のICT化を促進している段階
――こんな不景気が続けば鬱屈した社会になってしまいますが、園田社長が手がけられているグラフィックで未来を描いた作品がありますね。これは、スーパーゼネコンの清水建設(株)さんの案件ですね?
園田さん はい、これは随分前に手掛けたものなのですが。
――私もガンダム世代なので世界観に惹かれますが、若者たちに未来を示したとても意義あるグラフィックですね。これは「子どもたちに誇れるしごとを。」という清水建設(株)さんのコピーに合わせた当時のキービジュアルですね?
園田さん はい、清水建設の子会社の(株)CSPという会社から委託されて制作しました。清水建設のCSRの一貫ですね。もう、10年以上前のお仕事ですかね。
CSPはもちろん、清水建設の技術研究員の方たちもこのプロジェクトのワーキンググループの中心にいて、みんなで創り上げていきました。非常に楽しい作業でしたよ。
科学的に間違ったことを描けないので、その辺をご指導いただき気をつけながら制作していきました。皆さまの知見を伺いながらデザインに落とし込む作業でした。
――科学との整合性を図る作画なんてなかなかないことなのではないでしょうか?
園田さん そうですね。リアリティを持たせて現実に実現できるという構想で創るお仕事でしたね。実際、そのワーキンググループはJAXAとも繋がりがあって、建設業の域を超えた科学技術を社会に応用していく先鋭的な方々で組成されていました。
――地球上の建設需要といっても、採取主義の拡張でこれから30年後50年先なんて分からないですもんね。「地球は有限」。
園田さん そういう危惧も見越して宇宙に関するプロジェクトを立ち上げたのではないでしょうか?
今では、イーロンマスク氏が提唱しているような「ハイパーループ構想」とかが実現されれば、輸送需要や地上の渋滞解消など、よりよい社会により景気も上向くかもしれません。
あと、SFのようですが、「軌道エレベーター」といって、ロケットを発射しなくても宇宙ステーションに移動できたりする構想もありますからね。
――そうしたら、もう、人類は次の段階で全く異なる社会が待っている。
園田さん そういう世の中がきたら、やはり、スーパーゼネコンが未来社会を建築してくれるのでしょうね。
――未来を示す意義は子供・若者だけでなく、女性に対してもだと思います。ICTの活用が女性雇用促進の鍵のような気がしていますが、いかがでしょうか?
園田さん そうですね。実際に建築業界は進んでいると思っています。例えば、昔だったら紙図面なんか用いて施工管理しているイメージですが、今はドローンや遠隔操作自走ロボットの活用とかICT化が進んでいる印象を持っています。
現在は、現場のICT化を促進している段階なんだと思います。現場で普及すれば女性も活躍できるのではないのでしょうか? VRとかARのソリューションを使えば作業員のトレーニングとか、安全衛生教育への活用、建設現場のサポートで竣工までの高品質化が図られていくのではないかと思います。
最新技術を使って工程毎の完成形を可視化すれば、ミスも防げるし、現場監督が現地へ赴かなくても遠隔で管理できるのは大きいですよね。
――ずっと、現場事務所で金勘定しかしてない監督さんもいますからね(笑)。
精神鍛練で仕事を諦めない
――園田社長ご自身の課題はクライアントとの折衝や納品に関するオペレーションのことだとお伺いしましたが、何か仕事を推進させるコツはありますでしょうか?
園田さん 人は、それぞれの立場が違えば言い分も変わるので、コミュニケーション力を日々鍛えてますね。
仕事って、問題解決の部分が大半を占めていると思うので、なるべく人の話を聞くようにしています。それで、顧客との妥協点を見つけてお互い折れるところは折れて、「これ以上は引けない」という最低ラインを示し意見交換するように心がけています。
あとは、精神的な部分で言うとボクシングをしています。

自宅から近いボクシングジムで汗をかく園田社長
――ボクシングですか!? 精神的にも強くなれそうですが、今度は非科学的なお話ですね。
園田さん はい。自分にとってかけがえのないものですね。週に2~3日通っています。今はリモートワーク主体ですし、ジムも家から近いんですよ。
やはり、体を動かすことで体力もつきますし、ジムで汗をかくと余計な邪念が無くなります。人間って動いて行動していないと鬱っぽくなるらしいんですね。1週間仕事だけで日々過ごすのではなく、定期的に体を動かすことで集中力がついて仕事の推進力が高まるんです。
それに、クライアントとの折衝はストレスも被るのですが、それを解消できるので人に対するイラだちも持たなくなってくるんです。
――ダイエットにも効果的のようで、スポーツクラブでもボクササイズのクラスは女性に人気のようですね。
園田さん 女性のほうが美意識も高いですからね。キャリアウーマンも様々なストレスを受けていると思いますよ。仕事と結婚。そして、育児の両立も難しかったり…。
――ボクシングはモチベーション維持の効用もありそうですね。園田社長が観たボクシングの試合で、「俺も仕事頑張ろう」と感銘した試合はありますか?
園田さん そんなこと聞かれたら取材時間いくらあっても足りなくなりますが大丈夫ですか?(笑)
…やはり、それがボクシングの醍醐味で、下馬評では絶対に負けると言われていた選手が大差で勝利すると、観客のボルテージも上がり、もの凄い感動がありますよね。それは、人生に例えられるし、仕事にも例えられる。諦めないで勝利を掴んだボクサーの試合を観ると凄く勇気をもらいますよ。
――「下馬評をくつがえす試合」というのは?
園田さん 辰吉丈一郎とシリモンコンの試合ですね。相手が若く飛ぶ鳥を落とす勢いで、辰吉選手が勝てないと言われていたんですけど、7ラウンドに辰吉選手がTKO勝ちした瞬間に、会場が揺れているのがテレビの画面越しにわかりました。
――仕事も競技のプロセスも共通する部分はあると言えますが、諦めない心が肝心ですね。
園田さん そうですね。例えば、一つの仕事とかプロジェクトがあったとして、納期があって、それが8ラウンドしかないとしますよね? でも、12ラウンドまでラウンドがあるんだと思って仕事に取り組むようにしています。
人生も仕事も諦めなければ12ラウンドまであるんだと。倒れても立ち上がってくる奴になりたいんです。ロッキーみたいでカッコいいじゃないですか(笑)。
――今日はグラフィックの話から仕事に対する精神論まで、貴重なお話をありがとうございました。最後に「施工の神様」の読者に向けて、建設業に関わる人々が元気でいてほしいというメッセージをお願いします。
園田さん われわれサービス業と違って第二次産業なので、住宅の建築もそうですしインフラの整備もそうですし、なくてはならない業態で国民の暮らしに密接に関係していると思います。第二次産業の建設業が低調なら市場規模から波及も大きいとおもいますので…。
私どものような第三次産業のサービス業でも、建設業に関わってお役に立てることがあれば嬉しいですね。
これから時代の変容は加速する。
コンピューターの処理能力は人知を超え、車両の自動運転などを代表に20~30年後はあらゆる産業でIT化は進む。建設業も、完成形をデバイスに写すMR技術や建築デザインを出現するAR技術など、ICTの活用がさらに普及する。
リアルとソフトを融合すれば建設業の仕事はもっと面白くなっていく。そう希望を語る園田社長からは健康的な清々しさを感じた。
撮影協力 : Reason足立 (ボクシングジム)
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こんな訳の分からない中途半端な外部の意見を取り入れてるのが間違い。
内容もただの老人讃美歌。こんな人間に好き勝手言われて、ホイホイ聞いてる建設業界がダメなんじゃないか?
そうやって外からの意見をなんでもかんでも否定する人が多いから、この業界はダメだと言われるんじゃない?
参考にするかしないかは読んだ人各々の問題で、別に違う角度の意見を聞くのは悪いことではないんじゃないか?
ICT化の有効性についての謙遜したコメントで、好き勝手言ってないかと。