工期厳守のプレッシャーと戦う土木工事

土杭を巻き込んだ現場付近の今
この工事では、土杭を取り除くことが可能だったので、無事に工事を竣工させることができましたが、万一、推進機中の後続設備を解体して、土杭の処理ができなかったとしたら、施工途中の推進機と施工済みの管路を残置させて、新たに段取り替えをしなければなりませんでした。もしそうなっていたら予算も膨らみ、工期も厳守することが困難になっていたことでしょう。
また、地上から10メートル以深まで開削して、推進機と埋設管を掘り出さなければならない状態だったら、近接建物の沈下や、クラック発生等の影響、それに伴う保証問題等も発生するという2重、3重のリスクも配慮しなければならなかったかもしれません。状況によっては、その場所での工事自体が不可能になり、計画の見直しをせざるを得ない可能性もありました。
都市土木工事で注意すべきこと
土杭自体は、道路よりもかなり下の方に埋設されていたことから、江戸時代の地盤をさらに埋め立てて整備されていたと推定することができました。
後日、港区図書館で調べたところ、この工事現場は江戸時代に、三万石以下の大名並びに幕府直参の旗本屋敷跡地であることが確認できましたが、江戸時代に施工された土杭が具体的にどのようなものであったかまでは、残念ながら確認することができませんでした。
工事発注の前段として、外注による設計委託業務を実施したわけですが、都内や旧埋立地における比較的浅い場所での推進工事、シールド工事を予定する場合には、委託業務の中に古地図等による地形確認業務等を含めて実施することが必要だと思われます。
実際、隣接する建築現場でもかなり多くの土杭が出てきて、その処理に苦労されていました。また伊達家下屋敷周辺における遺跡調査等でも土杭が出ています。
その他の埋立した場所でも、工事中に江戸時代の川を埋立た場所であることがわかり、船着き場跡で船を停泊するための木杭が残されていたという事例や、貴重な井戸遺構が工事中に出てきたという事例があります。
私も旧東京都庁の跡地に建設した東京国際フォーラムの現場では、工事中に江戸城の石垣遺構が広範囲に発掘され、調査のために長期に渡り工事を中断せざるをえなかった経験があります。私が経験した今回のケースは、ちょとした配慮がトラブルを救うということを経験できた恰好の事例でした。
この記事の中の「配慮」はどこにあるの?
作業員大勢巻き込んで休日返上で作業した事は配慮ではないと思うんですが。