ゼネコンの竹中工務店、ハウスメーカーの住友林業も参加
協会設立に向けては、2021年4月から農林中央金庫、住友林業、竹中工務店、三菱地所、ユニバーサルデザイン研究所の5社が準備を進めてきた。
現在、同協会では会員を募集しており、木を積極的に活用したいと考える企業や団体、自治体、デザイナー・クリエイター等に積極的に参加を呼び掛けている。会員には、部会の設置と参加、ウッドデザイン賞に関する情報収集や相談、ウッドデザインに関わる情報を網羅するデータベースへの掲載と利用や、同協会からの情報収集、業界横断での連携を行うことができるとともに、木材に関わる多彩な活動に参加できるという。
現在、ハウスメーカーは言うに及ばず、ゼネコンも木造化の動きに重大な関心を抱き、RC造で建築するようなマンションを木造化した例は増えている。
さらに言えば、三菱地所等が札幌市中央区に開発した「ザ ロイヤルパークキャンパス札幌大通り公園」は10月1日に開業、RC造と木造を組み合わせた国内初の高層ホテルも誕生している。ほか、高齢化施設等にCLTを活用する動きもあり、木造化への関心はゼネコンでも高まっている。今後、同協会へ参画するゼネコンやハウスメーカーなどが増えるのではないかの観測がある。
こうした意味でも今後、同協会の動向に注目が集まっていることは極めて当然ともいえる。
農林水産省や林野庁とも連携を深める
日本ウッドデザイン協会について、行政や政治はどのように動いたか。来賓に出席した下野六太農林水産大臣政務官はこう語った。
「木材利用の官民一体の国民運動を展開していくにあたり、民間企業、業界団体、調査・研究機関、地方自治体等が参加される団体が設立されたことは時機を得たものだ。農林水産省では建築物をはじめ一層の木材利用や木のある暮らしの普及について貴協会と連携していきたい」

来賓に出席した下野六太農林水産大臣政務官は、農林水産省と同協会が木材利用で連携すると語った。
次に、天羽隆林野庁長官からもメッセージが寄せられた。
「”木のある豊かな暮らし”の普及やさらなる木材利用の推進に向け、林野庁としても貴協会をはじめとする皆様と連携して取り組んでいきたいと考えており、今後のご活動がウッドデザインという名称に込められた意味を踏まえて豊かに発展されるよう期待しております」
三菱地所、竹中工務店や住友林業の木材利用の戦略
住友林業は、1691年の創業から350周年を迎える2041年を目標に、高さ350mの木造超高層建築物をつくる技術開発を進めている。また、中大規模木造建築「MOCCA」事業を強化し、非住宅建築の木造化にもシフトしている。
市川晃代表取締役会長は、「森林環境の保全等社会課題の解決に向け取り組み、木造建築物の普及を促進することで”街を森にかえる”環境木化都市を実現させ、脱炭素社会の実現に貢献したい。今後は木・森林という自然資本の可能性と付加価値を高めていく」というメッセージを寄せた。

中大規模木造建築「MOCCA」事業を強化している住友林業の市川晃会長
一方、竹中工務店はかねてより、建築の木造化では大きな存在感を示している。開発・推進する、耐火集成材「燃エンウッド®」、木質耐震補強技術「T-FoRest®」、CLT利用技術等の先進的な木材利用技術を通じて”都市木造”を推進し、森とまちをつなぐ持続社会を実現している。
また、森林資源と地域経済の持続可能な好循環を「森林グランドサイクル®」と名付け、その構築に向けて、林業事業者・各地方自治体など各方面のステークホルダーとの連携を進めていることも注目点だ。
竹中工務店の佐々木正人社長は、「木材活用の気運を高め、イノベーションの拠点となる日本ウッドデザイン協会において、ステークホルダーの皆様とともに活動することにより、更なる木材利用推進へ貢献していきたい。木を植える・育てる・使うという循環を続けることで、環境社会や地域活性化にも貢献する。力を合わせて木造建築を増やす」と高らかな意欲を述べた。

森林資源と地域経済の持続可能な好循環に強い意欲を燃やす竹中工務店の佐々木正人社長
デベロッパーでは、三菱地所が参画している。同社は「三菱地所グループの Sustainable Development Goals 2030」における重要テーマの具体目標のひとつとして、「国産材活用による持続可能な木材利用の推進」を掲げ、さまざまなプロジェクトで積極的に木を採用し、新たな価値の創造に取り組んでいる。
また、川上の製材・製造工場や川中のプレカット工場の運営や木造・木質化の設計・施工機能の強化も行っており、新会社・MEC Industry株式会社も設立し、CLT活用を強化したことも記憶に新しい。
三菱地所の吉田淳一執行役社長は「北海道は、北海道産木材を使った建築物を「HOKKAIDO WOOD BUILDING」(ホッカイドウ・ウッド・ビルディング)として登録され、PRする制度をはじめております。登録第1号は、”ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園”で当社に登録証が交付されました。是非、木の香りを楽しんで欲しい。木材の利活用の可能性は無限にある。持続可能で新しい社会の価値をデザインしていきたい」と話す。

国産木材の利活用にシフトする三菱地所の吉田淳一執行役社長
今年は、ウッドショックもあり、国産木材が再評価された年であった。また、戦後、植林された木材が本格的な利用時期を迎えているものの、林業の担い手確保・育成も建設業と同様に深刻化しているのが実情だ。
また、施主からの観点では木の利用について木材には腐りやすい、燃えやすいという性質のほか、アレルギーの問題もある。しかし、最近の技術開発により、これらの点は克服されつつあり、今後はPR活動の強化が重要となるだろう。
現在、木造の高層化が進展し、他の建材等とのハイブリッド建築により、商業施設、ホテル、高齢向け施設、ホテル、運動競技場と広がり、技術開発がさらに進展すればより木造の高層化が実現していく。
いずれにしても、同協会設立の動きは、政府、行政、地方自治体、建設関係の民間企業にとって注目すべき動向と言える。
日本ウッドデザイン協会 組織概要
- 設 立:2021年11月18日
- 会 長:隈 研吾氏(建築家)
- 副会長:奥 和登氏(農林中央金庫 代表理事理事長)氏、市川 晃氏(住友林業 代表取締役会長)、佐々木 正人氏(竹中工務店 取締役社長)、吉田 淳一氏(三菱地所 執行役社長)
- 代表理事:岩曽 聡氏(農林中央金庫)、関本 暁氏(住友林業)、松崎 裕之氏(竹中工務店)、長沼 文六氏(三菱地所)
- 所在地:東京都港区新橋
- ホームページ:https://www.wooddesign.jp/association/