TOTO株式会社は、8月から順次、国内向け主力水まわり新商品を投入する。大便器や洗面化粧台など主力の「水回り全4部位」で新商品を発売するのは、2010年以来で12年ぶりのことだ。テレワークなどにより在宅時間が大幅に増え、「おうち時間を豊かで快適に過ごしたい」というニーズの高まりに応えた。
新商品の内容は、グローバル統一モデルとしての一体形便器「ネオレスト」に、便座の裏を除菌、洗浄する新機能を搭載する「LS」を加えた。便器部に継ぎ目がないフルスカート形状で、水から作られる除菌成分(次亜塩素酸)を含む水「きれい除菌水」を便座裏の先端部分までふき、汚れをしっかり抑制し除菌する「便座きれい」機能を追加、長期間にわたり清潔なトイレを維持できる。なお、LSモデル本体の希望小売価格は45万8,700円(税込)とした。
ほか手洗いや照明にタッチレス機能を追加し、除菌水での洗浄も可能にする洗面化粧台「オクターブ」、周辺ユニットを拡充したシステムキッチン「ザ・クラッソ」、床ワイパー洗浄機能を備えたシステムバスルーム「シンラ」などをそろえる。
2022年度計画(売上高)では、日本・海外住設事業は、今回の新商品効果を中心に過去最高の7100億円を目指す。今回は、清田徳明代表取締役社長執行役員がTOTOの戦略の全体像を説明、今回の記者会見の内容を深堀してリポートする。
「デザインとテクノロジーの融合」が強み
記者会見の冒頭、TOTOの清田社長は2022年度における戦略を語った。2021年4月から、新共通価値創造戦略「TOTO WILL2030」を推進している。今後一層TOTOを取り巻く環境変化は、「早く」「大きく」「不確実」になっていく状況を踏まえ、長期的に目指す姿を明確に定めている。そこで世界の顧客に満足していくような商品をそろえ、マテリアリティの実現を目指していく。
まず、ものづくりについては、デザインの優位性を示した。世界中の顧客が真に望むデザインを追求し、デザイン力と生産技術をより一層高めていく。この5年間で国際的に権威ある「reddotデザイン賞」「iFデザイン賞」を36商品、うち最高賞は3商品で授賞し、第三者の評価も高まっていると自信を深めている。
新商品の説明では、グローバル統一モデルから入った。TOTOの数あるトイレ商品の中でも最上位グレードである「ネオレスト」シリーズを一新。新モデル「LS」を投入し、既存製品もモデルチェンジし、デザインや機能とともにグレードアップする。4段階のラインナップにグレードを拡充し、グローバル視点でより多くの顧客のニーズに応える。
「LS」は、特徴的なウェーブライン、メタル調のアクセントで空間に華やぎを演出するが、世界各国の顧客のデザイン志向を分析し、グローバルに自信を持って提案したデザインとした。「ネオレスト」シリーズはグローバルでの販売を2024年度では2021年度実績の年間22万台から30万台へと高める。
また、シャワーのグローバル統一モデルでは、節水と快適な浴び心地を両立する独自の吐水技術をベースにバスルーム空間を美しく演出できる形状、コーディネートしやすい色・素材感・仕上げに磨きをかけた。今回、新たに提案するシャワー水栓は、ノズル一つ一つの配置にまでこだわり、「癒しを与え」、「気分を変え」、「活力を生む」などの吐水体現価値を提供する。
自宅で快適に過ごすニーズで新たな需要が創出
次に、日本住設事業を紹介した。コロナ禍では衛生意識の高まりや自宅で過ごす時間が長くなったことによる「おうち時間を豊かで快適に過ごしたい」というニーズの高まりは今後とも継続すると指摘。こうしたニーズにより応えるように、デザイン性、快適性、衛生性を高めた住宅向け新商品を全4カテゴリーで投入する。
「ネオレスト」シリーズとも組み合わせやすい、手洗いカウンターや床材の新商品も投入し、トイレ空間としてのコーディネートにより、「暮らしを高める、美しさ」を提案する。
洗面化粧台「オクターブ」では、フルモデルチェンジした新商品を投入し、デザインがさらに洗練され、タッチレスも拡充、スタイリッシュドレッサーとして、豊かな暮らしを提案する。
システムキッチン最上位シリーズである「ザ・クラッソ」は「光のキッチン」で好評なクリスタルカウンターを拡充、「気持ち、まいにち、きらめくキッチン」として豊かな暮らしを演出する。
最後にシステムバスルーム。最上位シリーズ「シンラ」にモダンなインテリアを演出できるアイテムや、好評の「ファーストクラス浴槽」など癒やし機能を拡充し、「上質で心休まる穏やかな時間」を提供する。
この後、詳細な商品説明後、質疑応答に入った。回答は清田社長、ウォシュレット生産本部副本部長の合田智一氏、第二デザインマーケティンググループの大塚航生氏、キッチン・洗面開発第二部部長の喜多智氏、浴室開発第一部部長の木村晋氏、上席執行役員グローバル事業推進本部本部長の岩﨑亨氏、商品営業推進部部長の千葉寛哉氏が対応した。
コロナ禍での価値観変化により大幅モデルチェンジに
――近年、これほどのモデルチェンジはなかったかと思います。
清田社長 2020年からのコロナ禍で顧客の価値観や生活観も変化するという前提のもとで、2022年度に今回4部位一斉発売に至りました。
――資材価格が高騰していますが、新商品の価格に織り込んでいますか?
清田社長 さまざまな部品や原材料が速いスピードで価格が上がっています。今回の新商品にもその部分についてプライシングを設定しております。ただし、単に値上げをするのではなく顧客に新たな価値を提供し、その部分をプライシングに上乗せいたしました。
――このコロナ禍で納期遅延の可能性はありますか?
清田社長 コロナ後、あらゆるサプライチェーンが分断され、さまざまな部材や調達物が調達しにくい環境になりました。昨年の後半では一部ウオッシュレットの受注を一部規制せざるを得ない状況になりました。この件については徐々に改善され、おそらく今夏には解消すると考えています。
浴室換気暖房乾燥機「三乾王」は、上海のロックダウンの影響もあり、現在、受注に制約を入れている状況です。ただしロックダウンが解除されようやく動き出したので、物流も含めて状況が少しずつ改善していくことを期待しています。
――10日から訪日観光客の受入れが再開されます。そこでTOTOファンを増やすことの期待は。
清田社長 訪日外国人が多く来訪することはウェルカムな話です。本日は住宅4部位の発売の発表でしたが、今後パブリック商品も投入します。
当社は住宅以外でもホテル、観光地、公共施設等のパブリックでも高いシェアを確保しているため、世界で一番進化している安全なトイレなどをお使いいただくことで、帰国した際に購入の意欲が湧くという流れをつくっていきたい。ある意味、「日本全体がショールーム」と言え、インバウンドの方々が当社の商品に触れていただくことはありたいことです。