建設業における女性活躍推進の取り組みは「生産性向上にマイナス」
建設業での女性活躍の推進に関する興味深い調査研究が報告されました。
調査研究によると、建設業において女性活躍推進の取り組みを進めると、生産性向上にマイナスの効果を生んでいるというものです。
他産業では女性活躍を進める企業ほど、生産性が向上するという結果となりましたが、建設業はその逆。
建設現場での女性活躍推進の取り組みは、効果がないのでしょうか。
「国土交通分野における女性活躍推進策と生産性向上に関する調査研究」の分析結果
調査は、国土交通省 国土交通政策研究所が実施した「国土交通分野における女性活躍推進策と生産性向上に関する調査研究」。
2015年12月から2016年1月に、東証1部、2部の上場企業214社、従業員844人に、経営方針・経営者の意向、管理職の研修、女性の採用・育成・職域拡大、ワークライフバランス、職場・育児環境の整備などについてアンケートを行い、結果を分析しました。
国土交通政策研究所は、女性活躍推進策が生産性向上のマイナスとなった要因について、建設業は「他産業より制度などの導入が遅れたことによるタイムラグの可能性が大きい」と指摘。まだ投資に見合った効果を回収できる段階ではないと分析しています。
他産業の女性活躍に関する先行研究でも、効果発現までの時間がかかることも確認されているとのこと。「効果発現までの継続的な取り組みが必要だ」と、中長期的なスタンスで続けていくことで、生産性向上への寄与が見込まれます。
建設業ならではの「取り組み」を考える必要がある
また、「屋外単品受注生産という建設業の特性から、個々の現場の取り組みが企業全体に波及していない可能性もある」と、取り組みの水平展開が難しい建設業固有の課題も挙げられました。取り組みを継続する上での課題として「建設業ならではの取り組みを考える必要もある」という指摘もありました。
調査の中の、建設業の従業員に対するアンケートでは、「部下を公平に評価しているか」「部下のキャリア希望や生活環境を考慮して設定しているか」といった職場環境づくりの項目で、男性に対しての方が実行されていると回答する女性が他産業に比べ多い傾向が見られました。昇進についての項目では、男女ともに、男性の方が有利に昇進していると回答しました。
企業側の推進制度の整備は、他産業より着手が遅れたものの、現在では同程度以上の取り組みがされていることから、制度はあっても、従業員に浸透していないケースや使い勝手の面でまだ課題があることが考えられます。
企業の制度整備や、取り組み推進が増加したのは2012年以降で、今後も工夫や試行錯誤を重ねることで、早期の生産性向上への貢献が望まれます。