仲間と喜びを分かち合うのが、最高に嬉しい
――嬉しかったことはありましたか?
谷田さん 建設は一つひとつの事業期間が長いので、事業の節目に立ち会うという機会が少ないんです。ただ、それだけに、建設が終わり、ついに供用を開始したときの喜びは、並々ならぬモノがあります。建設中は、一筋縄ではいかなかったこと、さまざまな苦労苦難があったからです。
ここ数年は、時節柄できませんが、以前は、完成を機に、過去に携わった社員らが集まって、祝杯を上げていました。仲間とともに喜びを分かち合ったひとときは、私の土木人生の中でも、最高に嬉しかったことの一つですね。
―― 一方で、ツラかった仕事はありましたか?
谷田さん やはり、住民説明会は一番プレッシャーを感じました。何度も経験してきましたが、住民全員が賛成ということはまずありません。あくまで交渉事なので、すべてが自分の思い通りになるわけではありません。
私の力不足もあって、お叱りを受けたこともありました。何度もキャッチボールしながら、ご理解いただくように努めました。なかなか言葉にしづらいところがありますが、非常にツラいと感じたこともありました。
ただ、誰しもが経験できることではありませんし、これを経験したことによって、自分が成長できたという実感があります。比較的若いときに経験できたのも幸運だったと思っています。
婚約者などと連絡が取れない中、震災現場を点検した

倒壊した神戸線のコンクリート桁解体作業の様子(写真提供:阪神高速)
――先の震災のときの思い出はありますか?
谷田さん 震災のときは、大阪の管理部門にいました。プライベートな話ですが、震災の前日は休日で、自分の結婚式の準備をしていましたが、発災後、婚約者や親と連絡がつかなくなりました。
そういう状況で、心に不安を抱えながらでしたが、点検のため、神戸線の尼崎より東側区間の被災現場に入りました。ポラロイドカメラとマジックを持ちながら、検査路をずっと歩きました。ただ歩くだけなら大したことはないのですが、途上に橋脚や横桁などの障害物がたくさんあって、これをかわしながら歩かなければならないので、なかなかシンドかったです。

同じくPC床版撤去作業の様子(写真提供:阪神高速)
あと、橋脚天端で損傷している支承部の写真を撮るために、狭い桁下空間に頭を突っ込むような姿勢で写真を撮っていると、道路上を緊急車両が通るたびに、桁がタワむんです。本来桁を支える支承が破損しているからです。すると、ヘルメットがスレてキュンキュンという音がするんです。非常に怖い思いをしました。
会社に寝泊まりしながら、そういう点検作業を2週間ほど続けました。当時入社5年目だった私にとって、貴重な経験でした。最近は、震災を経験した社員が少なくなっているので、震災の教訓をしっかり伝承していくため、会社を挙げて工夫を凝らしているところです。
――工夫と言いますと?
谷田さん 例えば、震災資料保管庫というものを設置しています。被災構造物の現物を収集展示するもので、一般にも公開しています。新入社員には必ず見せています。また、当時の社員だったOBの方に語り部となって頂くこともあります。あとは、要領やマニュアルの整備とそれを前提にした定期的な防災訓練を実施しています。

連続桁変曲点付近の座屈(写真提供:阪神高速)

上沓の破断(写真提供:阪神高速)

震災資料保管庫の展示(写真提供:阪神高速)
「会社とともに自分自身が成長できる」のが魅力
――土木など技術者の人材育成について、どうお考えですか?
谷田さん 技術者集団であるわれわれの強みは、建設、維持管理に至る現場を持っていることだと考えています。だからこそ、道路に関する計画段階から建設、維持管理に至るすべてのことに関わることができるのです。コンサルさんやゼネコンさんは、ある特定の分野で、非常に深い知識やノウハウをお持ちですが、関り方が異なります。
たとえば、維持管理段階での問題点を建設段階の設計にフィードバックするといったワークフローは、われわれのような会社しかできないことだと考えているんです。こういった橋渡しをキチンとすることが、われわれ技術者が果たすべき大事な役割のひとつだと考えています。つまり、人材育成では、「技術の裾野を広げる」ということが大事だと考えています。
そして、「技術の裾野を広げる」と同時に、そのなかでも、何か一つでも自分の得意とする専門性を併せ持とうと言っています。
――ゼネラリストとスペシャリストの違いと同じことですよね?
谷田さん そうですね。我が社では、ゼネラリストとスペシャリストはどっちも必要だと考えています。これらを兼ね備えた人材を「プロフェッショナル人材」と呼んでいます。このプロフェッショナル人材が、我が社の目指す人材像です。
――阪神高速の魅力はなんでしょうか?
谷田さん 私は、阪神高速には、新しいことにチャレンジをする風土と言うか、組織文化が伝統的にあると思っています。「会社とともに自分自身が成長できる」というのが、会社としての魅力だと感じています。
―― 一般論として、「若者の建設業離れ」が指摘されていますが、どうお考えですか?
谷田さん 3K(きつい、危険、汚い)とか言われた時代がありましたが、これについては、国を含めた発注者と建設業界の受注者の双方が課題と認識しています。他の業界と比べれば遅れを取っているところもありますが、CIMや遠隔臨場の導入など、職場環境、作業環境の改善とあわせて生産性向上の取り組みも進められてきており、徐々に変わってきているのではないかと思います。
弊社も採用に力を入れていますが、担い手不足は、建設業界全体の課題です。業界全体として健全に発展していくためには、発注者、コンサル、ゼネコン、ファブどれかに偏ることなく、均等に担い手が確保されなければならない、と考えているところです。これが偏ってしまうと、発注しても誰も手を上げないということになりかねないからです。
「事業の大義」をしっかり認識しておく必要がある
――土木を志す若者に向けてメッセージがあれば。
谷田さん 大学で土木を学んでいる方々であれば、構造力学、土質力学、水理工学、土木計画学、交通工学といった基礎的な学問を学んでいるところだと思います。これらの学問は、いずれ社会に出たときにもベースになると思うので、しっかり学んで欲しいということをお伝えしたいです。
ただ、これらを学んだとしても、それだけですぐに社会で活躍できるわけではありません。土木は、経験工学と言われますが、現場ごとに新たに学ぶことがたくさんあるからです。
たとえば、環境の知識だったり、法律の話だったり、土木以外の分野のことも知らないと、土木の仕事は前に進まないことがあります。土木はもちろん、土木以外の知識も、常にふくらませていくことが大事だと考えています。新しいことに対して臆病にならず、常に勉強し続ける姿勢、常に成長し続ける姿勢を保ちながら、立派な技術者になっていって欲しいと思っています。
また、「QPMIサイクル」という概念があります。業務マネジメントツールとしては、PDCAサイクルがありますが、QPMIはPDCAにとって代わる新しいマネジメントツールであり、阪神高速では、人材育成計画の中で、このQPMIの概念をとりいれています。
「Q」は「Quality」と「Question」、「P」は「Person」と「Passion」、「M」は「Member」と「Mission」、「I」は「Invention」と「Innovation」を意味します。つまり、社会課題に対して、一人ひとりが情熱を持って、組織として使命感を持って取り組むことによって、技術革新や発明が起きる、という概念なんです。
これからは、「VUCA(ブーカ)」の時代と言われ、予測不可能な時代と言われています。そして、今まで見たことがないもの、誰もやったことがないこと・ものへの対応がスゴく増えてくると予想しています。どうやっていいかプランすらたてられないことに直面するのです。
そういう時代に一番大事なことは、担当する「事業の大義」、つまり事業の目的や本質をしっかり認識したうえで、情熱を持って取り組むこと、あきらめないことです。知識と情熱、この2つを持って、前に進んで欲しい。これが私なりの若者へのメッセージです。
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おたくは偉くて現場の現状知らんやろうけど、あんたらが雇ってくる委託監督が、保身で作らせる、無駄な書類。あれ何とかしてよ。竣工検査で見ることなく終わるものばかり、、、
それと偉そうな態度。ほんまもんの発注者が偉そうにしとるのは100歩譲ってガマンするけど、なんでクソ委託が偉そうにしてんだよ