一般社団法人全国建設業協会(全建)は、47都道府県建設業協会や会員企業を対象に、『令和4年度 品確法に基づく「発注関係事務の運用に関する指針(運用指針)」の運用状況等に関するアンケート』を実施、このほど調査結果を公表した。
アンケートには会員企業のうち1,341社が回答。今回は地域建設業における資材価格高騰での対応についての項目が注目された。
会員企業の受注環境悪化が4割台
会員企業の現況(受注)では、直近1年間の状況について「悪くなってきた」「悪い」の回答の合計が4割台半ばとなった。ブロック別でみると「北海道・東北」「北陸」で5割を超えている。
受注悪化の要因は、「発注量の減少」(83.1%)、「競争の激化」(64.1%)、「技術者の不足」(52.4%)の順。悪化要因の詳細を見ると、「東日本大震災の復興事業完了や新型コロナ関連への予算流用により発注工事量の減少、事業規模の縮小が顕著に現れ、受注競争が激化し始めている。調査基準価格ぎりぎりでの応札が常態化してきている」など、東北では復興需要の減少が顕著に表れているようだ。
また、全国的に技術者不足は深刻で、それが失注理由となり「技術者の不足解消の観点より、専任の主任技術者兼務要件の緩和(現場間の距離)」の要請もあった。
利益の悪化の理由は「工事原価の上昇」が最多
利益の状況では、「悪くなってきた」「悪い」の回答の合計が4割弱。ブロック別で見ると、「北海道・東北」「北陸」が5割を超えている。利益悪化の要因は、「工事原価の上昇」(73.6%)、「受注の減少」(72.6%)、「競争の激化」(54.2%)の順となっている。詳細を見ると、「資材価格が高騰して、利益率を圧迫している」「単価の上昇はもちろん、物流障害により資機材の確保が出来ず、手持ちや工程に影響が出ている」「工程の遅れにより、手間がかかる。人材を集中して投入しなければならなくなり費用がかかる」など、資材の高騰やサプライチェーンがスムーズに進まないため、地域建設業の利益が圧迫されている状況が明らかになった。
「資材価格の高騰により工事に影響がありますか?」の問いに対しては、97.8%とほとんどの企業が影響を受けていると回答し、価格高騰している建設資材は「燃料」「鉄筋」「生コン」が8割を超えている。資材価格の高騰について予定価格に事前に反映しているかを確認したところ、「反映していない」が国土交通省で5割弱、都道府県で6割台前半、市区町村では7割半ばとなっている。
資材価格の高騰により直近1年(2021年3年6月~現在)でスライド条項の申請については、「申請中(申請済含む)」「申請予定(検討中含む)」の回答合計が5割半ばであった。
単品スライドを「1%以下」でも対応を
スライド条項の申請手続きについては、「手続きが複雑で資料作成の時間を要するので手続きの簡素化を希望する」「発注者の理解度が浅くスライド基準日が後ろにずれ込んだため、スライド金額が低く抑えられる要因となった」など、発注者の理解や手続きの簡易化など、要望は多岐にわたった。
ちなみに、単品スライドは工事価格に対し1%上昇した資材が対象であるが、「該当する資材が多い場合や工事価格が高い場合は該当する資材が少なくなり、恩恵を受けることができない」との声もあり、「1%以下(0.8%もしくは0.5%など)でも対応できるよう柔軟に対応してほしい」との要望もあった。
また、「取引先(下請・資材業者)より契約内容の見直しの要請を受けたことがありますか?」という問いについては、「ある」が約5割で、見直し要請に対し、「対応した」「ほぼ対応した」の回答合計が9割以上であった。一方、「下請や資材業者の値上げ要請に対するには、インフレスライド協議などを発注者に認めて頂く必要があるが、発注者の積算単価と実勢単価(時価)に乖離があった」などの理由で、下請などの取引業者に対しても、値上げ要望に応えることができなかったケースもあった。
価格高騰の速度が速いため、年数回の見直しを
今後の発注者への要望も何点か浮上した。公共では、「価格高騰の速度が速く実勢価格との乖離が広がるため、年度に1回ではなく数回は見直しをして頂きたい」「単品スライドについて、資材ごとに1%を超える条件では、対象になる材料が限られているため、条件の見直しを検討していただきたい」や「提出書類の多さと煩雑さを解消し、簡素な手続きによる、適正な価格の反映をお願いしたい」との要望があった。
また、民間では、「価格協議が困難であり、発注者側には、資機材高騰による工事価格の増加を理解してほしい」や「民間鉄道、デベロッパー(都市再開発)などは、スライド条項があるものの、スライドを実施することに大きな抵抗があり、交渉が難航している(今までスライドを実施した実績がないとの理由)」などシビアな問題も浮上した。
また、制度としてスライド条項は確立されているが、「公共発注者の監督員にスライド条項適用申請の相談をしたところ、前例が無いのでできないと言われた」「市町村に対してもスライド条項を契約約款に採用し、適用するよう国からも継続的に指導願いたい」や「公共発注者について予算がないからスライドの手続きはできないというのはやめてほしい」などの声もあり、運用面でスライド条項に課題がありそうだ。
各都道府県建協会で見直しに動き、具体事例も
一方、各都道府県の建設業協会では、適切な価格転嫁に動くところもあり、「県工事の主要資材については、これまで、4月、7月、10月、1月の年4回となっていたが、当面8月から毎月改定すると対応を表明しており、市町村工事についてもその単価が反映されると期待している」「生コンの単価上昇について、県に対しては単品スライドの適用を要望し、今年度より当面の間、単品スライド条項の弾力的に運用することになった」など具体事例も示された。
約7割が賃上げ表明。総合評価の加点措置を狙う
国土交通省は、総合評価落札方式における賃上げを実施する企業に対する加点措置を2022年4月1日から実施している。これは、事業年度や暦年単位で従業員に対する目標値(大企業3%、中小企業等1.5%)以上の賃上げを表明した入札参加者を総合評価で加点する措置だ。加点を希望する入札参加者は、賃上げを従業員に対して表明した「表明書」を提出すると、加点割合は5%以上となる。ただし、実績確認もあり、未達成の場合はその後の国の調達で入札時に加点する割合よりも大きく減点する。そこで地域の公共工事に強い実績を持つ地域建設業は賃上げを実施する動きもあった。
今回の全建調査によると、「賃上げの表明」を「行った」「行う予定」の回答合計が7割弱に及んだ。8割弱が「給与総額」で行って(行う予定)おり、2割強が「一人当たりの平均受給額」となった。会員からは、「賃上げに見合う設計労務単価、現場管理費、一般管理費の引上げをお願いしたい」「賃上げ基準を達成できなかった場合の減点措置はなくしてほしい」「今年度は賃上げを行ったが、今後続けられるか不透明である」などの懸念する声も上がった。
全体スライド額で差額に対し請負額の1%を受注者負担にする意味が分からない。
あとスライド額決定に際してどれがどの単価になったのか発注者から内訳を明示されず決定額だけ伝えられ、想定とかなりズレた場合でも内訳を教えて貰えないのは契約者としていかがなものかと感じる。
設計変更額でもそうだが発注者も根拠を示してほしい。
そして担当でさえ計算式をイマイチ理解していないようなシステムを作るのか?申請させないためとしか思えない。
スライド申請中21.1%で申請予定34.3%って想像もつきません。
そんな回答するのは日本全国どのくらい?土木の一部?
ワタシの回りの公共建築工事では過去実績は0件。
具体的に該当するにはどういう試算になるのか想像つきません
色んな土木業者に聞くと、公共工事は変更ありきなので担当者と協議して物価だけでなく全体増減しているので深刻ではない。との事。
じゃあ変更を認めてくれない建築は?
2億の工事で石膏ボードが来年2月から30%値上。硝子もこの2年で50%近い。
でも単品限定で1%なので
硝子は予算比率で0.01%→材料費が100倍になる必要がある
せっこうボードも予算比率で0.06%→材料費が60倍になる必要がある
単純計算で土木工事と職種の数と扱いを同じだと思っているシステムに問題があるのか?
土木と建築の違いに誰も意見を言わない我々に問題があるのか?