野原グループの工事部門を担う事業会社・野原産業エンジニアリング株式会社は、金属製建具工事や金属工事、内外装リフォーム、リニューアル工事、環境対応型建材販売を柱とし、とくにビル用新築サッシ工事は50年の歴史を持つ。
最近では、野原グループが展開するBIM設計-生産-施工支援プラットフォーム「BuildApp(ビルドアップ)」にも注力するほか、野原ホールディングス株式会社、東亜建設工業株式会社の3社で、国土交通省の2022年度「建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業」に「鋼製建具生産サプライチェーンにおける生産性向上のためのBIM活用方法の検証」のテーマで採択されるなど、専門工事会社の枠にとどまらない多様な取組みを推進している。
野原グループの強みは複合企業群にあり
――まず御社の強みはどこにありますか。
野口取締役 まず、当社の売上比率はゼネコンを顧客とした新築部門のサッシ工事が全体の約70%、次に外装の金属工事が約20%、そして髙橋部長が管轄している改修部門が約10%ですが、専門工事会社として設計・工事・営業・積算の機能をすべて兼ねそろえ、ワンストップでの業務を展開していることが第一の強み、そして50年に及ぶサッシ新築事業の中で培ってきた実績に基づき、ゼネコン各社との太いパイプが第二の強みです。
現在は鉄筋の販売・加工・工事であればノハラスチール株式会社、生コン・セメントの販売であれば野原産業セメント株式会社と事業部門ごとに分かれています。こうしたコングロマリット的な企業群は建設業界には多くなく、複合企業群でグループ間での連携が図れることが野原グループ全体の強みといえます。
もちろん、野原グループの一員とはいえ、当社は専門工事会社ですから、高い施工力も特長だと考えています。新築サッシ工事50年の歴史を見ても、施工力が評価されなければ、仮に見積もりが安くても、次の仕事につながりませんから。当社には技能者の社員はおりませんが、協力会である「野原産業エンジニアリング共栄会」に所属する約50社の協力会社の皆さまに協力いただき、高い施工力と品質を担保しています。
髙橋部長 とくに、私たちが手掛けるマンションの改修工事は、住民の方々が住まわれている間に「居たまま施工」を行う必要があります。取付けの技術は言うまでもありませんが、お客様に対する丁寧な対応・言葉遣いなども要求されます。より良い対応を行うために、お客様とのトラブルの事例なども社内(施工管理担当、営業担当など)だけでなく協力会社にも共有するよう、心がけています。
商社機能と工事機能を兼備し、提案力に自信
――注力されているマンション共用部の改修工事の市場をどう見ていますか?
髙橋部長 現在、マンションもストック型に移行しつつあり、築年数が経ったマンションでも快適に、そして長く住めるように改修しなければなりません。とくに、分譲マンションの建替え工事は、住民の合意がなかなか得られないこともあり非常に困難ですので、改修市場は伸びていくとみています。
野口取締役 首都圏では、300万から400万もの世帯が分譲マンションに居住していますが、その平均築年数は25~30年と推定されており、これから膨大な改修工事の時期を迎えます。当社では新築向けのサッシ・玄関ドア・手すりなどのアイテム自体は用意していましたが、3年前からこれらの商材に代表される、マンション共用部の改修工事に向けて本格的に注力しました。
管理組合がマンションの玄関ドア、アルミサッシの改修工事を検討される際には、メーカーをネットで検索することが一般的です。すると、そのメーカー系の改修工事会社単独からしか見積もりを取れず、価格の比較もできませんが、当社は商社機能と工事機能の両方を持っているため、玄関ドア一つにしても3社の見積もりを提出することができます。マンションの住民に対して多くの選択肢を一括で提案できる点では、顧客を獲得するにあたり、大きな強みとなっています。

施工実績の一例。劣化した玄関ドアを交換して高齢者や小さなお子様でも楽々開閉を実現
――とはいえ、このコロナ禍では売上を上げることは大変だったのでは。
髙橋部長 管理組合での会合は3密になるということで、理事会が中止になるなど、改修工事の案件がなかなか進まなかったことも実情です。とはいえ、ここ1~2年はオンラインでの会合も増え、一定程度の仕事量と利益率は確保できています。
その上で、一昨年、改装工事のサイトに関する投資を本格化し、ホームページもリニューアルしたことで、問い合わせ件数も増えているところです。以前はホームページからの前からの問い合わせはほぼないような状態でしたが、野原ホールディングスのマーケティング部に入ってもらい、質の良いリードを獲得できるようになりました。今期から年間の計画の数値に寄与させようと目標を立てていますが、追及物件の数からいえばかなり確保でき、大きな成果を得られています。
また、築40年以上の高経年マンション戸数の増加見込みを背景に、2月1日から同年3月31日まで、「共用部分の再点検キャンペーン」を開始しました。防災セットのプレゼントや補助金申請の無料代行などを行っています。引き続き、お客様の資産価値を高める改修工事の提供と情報提供をすることで、2025年度中の「現在の受注額の約4倍達成」を目標に、マンション改修事業をさらに強化していく考えです。
――商社としての強みというお話もありましたが、野原産業エンジニアリングでは独自の環境建材なども提供していますね。
野口取締役 ええ。再生木材の”WOODSPEC ®”や透湿外断熱システムの”パッシブウォール ®”などは、省エネ効果が期待されることから導入物件も増えています。また、外断熱の建材を導入することでコンクリートの劣化を抑えられるため、これからはこれから”建材”という角度からも、マンションの長寿命化に貢献していければと考えています。
髙橋部長 改修工事で外断熱の建材を導入すると、建物内部の室温変化が小さくなり快適に過ごすことができます。しかし、これだけでは片手落ちで、窓とドアの改修を併せて実施することで、より断熱性能を上げることも大切です。当社はこうした工事をトータルで提案し、施工することが可能です。これは将来的にも有望な分野と期待しています。
鋼製建具のBIM活用で東亜建設工業と協業
――これから、野原グループにおいて、どのように存在感を発揮していかれますか?
野口取締役 グループ全体で進めている案件で、当社も参加している、BIM設計-生産-施工支援プラットフォーム「BuildApp(ビルドアップ)」の投資には、今後も注力しています。当社としては、BuildAppのサービス群のうち、BuildApp建具(建具施工図自動化、建具BIM生産連動など)において、金属製建具の積算‐設計‐製造(工場)までを繋ぐシステム開発に取組み業界全体の生産性向上を目指しています。
また、国土交通省の2022年度 「BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業」に、「鋼製建具生産サプライチェーンにおける生産性向上のためのBIM活用方法の検証」をテーマに、野原ホールディングス、東亜建設工業株式会社と3社共同で応募し、同年7月に「パートナー事業者型」として採択されました。実証では「BuildApp」を用い、スチールドアなどの鋼製建具の見積もり、製作図、工場生産までのプロセスをBIMデータでつなぐ仕組みの構築・効果検証を行っており、従来の2D作業とBIMモデルを比較して、数値的にどの効果が向上したかの確認を行っています。”建具のサプライチェーン”に係る効率の向上を目指し、いずれ業界全体にこの技術が展開されることを願っています。

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