トンネルに関する情報を一元管理

坑内の情報をリアルタイムで把握できる事務所内モニター(同)
加藤さん DXに関する取組みとしては、トンネル情報管理システムを構築しています。坑内にはWi-Fiを飛ばしているので、データ通信やIP電話通話、発破合図放送などといった通信が可能になっています。これはさして特殊なモノではありませんが、坑内にレーザーマーキングシステムやWEBカメラを設置することで、さきほど申し上げた詰所や事務所を含めたデータの一元管理ができるようになっています。坑内の空気環境を24時間自動計測する環境自動計測システムも入っています。ICタグによる入退坑管理、労務管理を実施しています。
これもさきほど触れましたが、BIM/CIMを活用しています。周辺地形やトンネル3次元モデルを可視化することで、そこに切羽観察やAI計測データなどを関連づけたり、構造物の部材の干渉チェックをしたり、トンネルアニメーションを作成したりといったことに活用しています。

エレクター一体型吹付機(同)
トンネルの鋼製支保工建込みを自動化し、切羽を無人化施工するシステムを取り入れています。切羽の無人化施工技術については、一部区間で試験的に運用しています。エレクター一体型吹付機に改良を加えることで、オペレーターによる遠隔操作によって、一連の作業を切羽に立ち入ることなく施工できるようにするモノです。
生産性向上の取組みとしては、25tダンプなどの大型重機の採用、エレクター一体型吹付機の採用、軽量型AGFの採用があります。これは工期短縮を目指した取り組みです。前方探査・土壌分析の工夫、デジタル文字シートの活用があり、こちらはコスト縮減を狙ったモノです。
防塵に関する新ガイドライン目標に対応

コンクリート充填2層ユニット式防音扉(同)
加藤さん 環境の取組みとしては、発破時の防音対策があります。防音扉には、総重量160tのコンクリート充填2層ユニット式防音扉を設置しています。発破時にはかなりの低周波が出るのですが、この扉のおかげで、周辺住民からの苦情は出ていません。仮設ヤードには吸音型防音万能板を設置し、防音を図っています。
新ガイドラインに基づく粉塵目標レベルを満たすため、送風機にダブルサイレンサー搭載超低音型コントラファンを選定したほか、集塵機にダストセンサー・ダスト自動排出機能搭載付フィルター式最新鋭集塵機を選んでいます。
あとは、SEC練りと言って、2回に分けて練り混ぜることで、コンクリート吹き付けに伴う粉塵を低減させています。フライアッシュという細かい微粒子を配合することによって、粉塵の低減のほか、CO2の削減も図っています。エアシャワーの設置、燃料促進剤の採用、排気ガス浄化装置の設置、再生エネルギーであるRE-100の新電力の導入といったことも実施しています。
まだ使ってないのになんで音が出るの?
――現場周辺への対応についてはどうですか?
加藤さん 細かいことも含め、たくさん対応しています。ちょっとホコリが舞うとか、車両が土を引っ張っているとか、音が気になるとか、いろいろなクレームが入ってきます。それらに対しては、真摯に受け止めてなるべく早く対応するようにしています。
まだ現場が始まっていなかったころ、現場で吹き付けのプラントの仮設備を整えていたのですが、夜間にこのプラントが誤作動して、エラー音が鳴ったことがありました。それで苦情をいただいたんです。「まだ使ってもいないのになんで音が鳴るの?」と思ったのですが(笑)、対応に当たり、事を収めました。
現場見学会で大事なのは「食いつき」

坑内に設置されたベビーカステラとりんごアメ屋台と、見学に訪れた児童たち(同)
――現場見学の受け入れはどうですか?
加藤さん 地元住民の方々や地元小学生などのほか、現場で働く現場社員の家族を対象にした見学会を実施してきています。見学のほか、地元の漁協さんと連携し、四万十川へのアユの稚魚放流といったことも行っています。国土交通省関連の見学会では、YouTubeのWEB配信を行いました。
最近では、地元の小学校4校の生徒108人が現場見学に来られました。トンネル坑内に屋台を2軒出しましたが、好評でした。

立派なりんごアメ(同)
――屋台ですか?
加藤さん ええ、ベビーカステラとりんごアメの屋台を大阪から呼んだんです。子どもたちの手土産として配りました。
――それはどなたのアイデアですか?
加藤さん 私です。20年ぐらい前にも、見学会にたこ焼き屋を呼んだことがあります。やはり「花より団子」ですから、ぶらさげるニンジンがないと、子どもたちの心はつかめないんですよ(笑)。きっかけづくりが大事だと思っています。おかげさまで、手土産の話をしたら、一番の歓声が上がりました(笑)。
下河さん(現場代理人) 当日、私は司会をしていたのですが、「お土産として持って帰ってください」と言った瞬間、大歓声が上がりました(笑)。
――モノを送ってもらうのではなく、現場でつくって、配るという発想がスゴいですね。
加藤さん すべては印象に残すためです。現場見学会はどこでもやっていますから、変わったことをやらないと、印象に残りません。対象によってもなにをやるかは変えています。大人向けの見学会のときは、岐阜から栗きんとんを取り寄せて、配りました。賛否両論あるとは思いますが、私はそういう考えでやっています。
――なぜ栗きんとんを選んだのですか?
加藤さん 冷凍して長期保存できるので、オールシーズン配れるからです。キロ買いしました(笑)。
――いろいろな取り組みについてお話していただきましたが、屋台のお話が一番インパクトがありました(笑)。
加藤さん 一番大事なのは「食いつき」ですから(笑)。
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斬新です。まずは記憶に残る事が一番だと思います。器量の大きい所長、会社で羨ましいです。
戸田建設(株)の社員です。いつも興味深く拝見しております。とても良い記事をありがとうございます。シェアさせて頂きます。
プラント建設の現場代理人です。
どの取組も素晴らしいですね。
特に見学会の屋台にはびっくりしました。
是非参考にさせてもらいます。
勉強になりました!