東京都の小池百合子都知事のイニシアティブにより、「改正環境確保条例」が可決した。これにより、2025年4月から新築住宅の屋根に太陽光パネルの設置を、一部例外を除き義務化することになった。東京都のほか義務化を発表もしくは表明をしている地方自治体は、京都府、京都市、神奈川県・川崎市などだが、この動きはさらに加速・拡大しそうだ。
そんな中、”双子コンビ”で太陽光発電や蓄電池システムの販売・施工を手掛ける株式会社トラーチ(奈良県・奈良市)に注目が集まっている。前職が大阪府警の警察官という異色の経歴を持つ代表取締役の稲場基泰氏(兄)とトップ営業の稲場康祐氏(弟)の両者で運営する同社は、2021年の創業からわずか2年弱で年商10億円を達成。TikTokでは「稲場双子社長」のアカウントで2.8万人以上のフォロワーを集め、若手経営者として身に着けた「個」のスキルを若者に伝えていきたいと、日々営業ノウハウなどを発信している。
同社では営業担当が直接、太陽光パネルの設置工事にも携わるため、顧客からの信頼も非常に高い。「一番になる」ことにこだわり、急速な成長を遂げるトラーチの双子兄弟・兄の基泰社長と弟の康祐氏に熱い想いを聞いた。
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設置義務化が進む太陽光発電は時流に沿っている
――現在の太陽光発電の市況をどのように見ていますか?
兄・基泰氏 現在、ロシアによるウクライナ侵攻により、日本全体でエネルギー調達が困難になっています。また、原子力発電所の再稼働がなかなか進まない情勢もあり、そこで再生可能エネルギー、とりわけ太陽光発電に注目が集まっています。
たとえば、東京都は2025年4月から新築住宅などを対象に太陽光発電設置義務化を盛り込んだ「改正環境確保条例」を可決しました。義務化の対象事業者は、年間都内供給延床面積が合計2万m2以上のハウスメーカーなどの事業者、あるいは申請し、知事から承認を受けた事業者(特定供給事業者)です。このほか、東京都では、環境性能の高い住宅の新築時や既存住宅の断熱改修を行った際に、あわせて設置する太陽光パネルに対しても補助を行う制度を設けています。
こうした地方自治体の動きに加えて、最近のエネルギー価格の高騰の影響も大きいですね。2022年2月には関西電力管内の燃料調整費の項目が上昇し、冬場の燃料費が上がりました。お客様からも「同じ燃料消費量なのに、燃料費は1.2~1.5倍に上がってしまった。今まで太陽光発電には関心がなかったけれど、一度シミュレーションをしてほしい」との相談が多く寄せられ、当社でもインターネットからの集客は対前年比で3倍に伸びています。
――近年、エネルギー価格は不安定さが増していますからね。
弟・康祐氏 ウクライナの情勢はまだ不透明ですが、仮にこの戦争がいったん収まったとしても、日露関係が以前のような関係に一挙に戻るとは考えにくい。やはり時間が掛かると思います。かつて日本は、ロシアから原油やLNG(液化天然ガス)、一般炭を輸入し、依存してきましたから、これからの時代は再生可能エネルギーへの視点がより重要になります。
それに、最近は毎年猛暑が続いていますが、地球温暖化が進んでいることが肌感覚でも分かります。太陽光発電はSDGsにも貢献できる商品ですので、需要はもっと伸びると期待しています。まだ確定こそしていませんが、政府は2030年代にガソリン車の新車販売禁止に動いていますし、東京都でもいち早く2030年までに都内で販売される新車のすべてをハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)などの電動車に切り替える方針を示しています。先ほど紹介した東京都の「改正環境確保条例」でも、商業施設やオフィスビル、マンション(賃貸物件も対象)など、すべての新築建築物にEV充電設備の設置を義務づけることも盛り込んでいます。
東京都のほかにも、再生可能エネルギーや太陽光発電の設置義務化を表明もしくは検討している主な自治体は、京都府、京都市、川崎市などがあります。さらに政府としては、2021年10月に閣議決定された「第6次エネルギー基本計画」で示したように「2030年において新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備の設置」を目標に掲げています。
兄・基泰氏 使い道のない屋根にソーラーパネルを載せることで、社会情勢に左右されず、ご自宅でエネルギーを調達し、使用することは時流にも沿った商品だと思います。
警察官時代には太陽光発電詐欺の相談も…業界のイメージをクリーンに
――時代の潮流があったとはいえ、警察官を辞めて独立されるに至ったのはなぜですか?
兄・基泰氏 東日本大震災の際に機動隊として現地に出動したのですが、そのときに太陽光発電や蓄電池の住宅だけが停電していなかったことに大きな感銘を受けたんです。
それに、うちは子ども3人の5人家族なのですが、月々の電気代が高いなと感じていたこともあって、まずは自宅で太陽光発電・蓄電池を導入することにしました。そうしたら、月々2万5,000円だった電気代が、2,000円まで減ったんです。しかも、補助金までもらえて。このときに「太陽光パネルは良い商品だな」と実感しました。
ただ一方で、警察官時代には太陽光発電の詐欺に遭われていた方の相談に乗ることもありました。せっかくいいモノなのに、悪徳業者によって業界全体のイメージが悪くなってしまうことがすごく残念で仕方なかったんです。
それならば、私たち兄弟が業界の悪いイメージをクリーンにして、世の中に太陽光発電を普及していこうと、2021年8月に独立し、住宅用太陽光発電・蓄電池システムの販売会社・株式会社トラーチを設立しました。
――太陽光発電の施工業者は数多くあり、差別化も難しかったのでは?
兄・基泰氏 この点は自社施工にこだわりを持っています。私自身も第二種電気工事士の資格を取って、すべての従業員・営業担当にも同様の資格を取らせています。また、仕入れもメーカーと直接やりとりし、間に商社を挟まないので、安価で仕入れることも可能です。つまり、工事の品質と仕入れ価格の安さがトラーチの強みだと考えています。
また、一般的には営業と施工は別の者が担当することが多いですが、当社では営業担当が施工にもかかわり、なにか問題があればすぐに地元の営業担当が駆けつけられる体制をとっています。地域的なことですが、奈良県や三重県の方々は同じ県内の方を信頼される傾向にあるので、補助金などの申請も含めて、マンツーマンサポートをすることでファンも増えています。
私たちも、営業担当には「太陽光発電のプロになれ」と指導しているので、営業・施工に加えてアフターサービスでのお客様対応まで、一流になるよう育て上げています。
――ハウスメーカーや工務店との関係性はどのように構築されていますか?
弟・康祐氏 トラーチでは、ハウスメーカーや工務店とアライアンス契約を結んでいるのですが、新築工事にあたって、太陽光発電の部分についてはトラーチが間に入ります。また、ハウスメーカーや工務店向けに勉強会を開催し、提携を進めています。
兄・基泰氏 提携先は12社で、提携内容は2点あります。1点目がハウスメーカーの営業担当が新たに太陽光発電の知識を覚えることは大変ですから、太陽光発電に興味を示していただいたお客様に対しては、私たちも商談に同席し、説明します。2点目がコンサルタント的な役割でハウスメーカーの営業担当に知識とノウハウを伝授し、その方が太陽光発電・蓄電池もあわせて説明していただいて、ご契約された際には、当社から太陽光パネルを仕入れていただいています。成約率も90%まで上がっているので、多くの工務店から「ブランディングにもなるので、やってよかった」との声をいただいています。
これからのハウスメーカーや工務店は、SDGsから目を背けることはできません。いま、トラーチは太陽光発電については大手ハウスメーカーに引けを取らない提案力と価格力で工務店をサポートできている自負があります。
急成長の原動力は警察官の父の教え「一番にこだわれ」
――施工方法の強みはいかがでしょうか?
弟・康祐氏 屋根材によって大きく変わります。最近増えているのが金属屋根です。金属屋根の代表的な施工方法「縦ハゼ葺き」であった場合は、ハゼに穴をあけずに架台をつかみ、雨漏りを防ぐ「キャッチ工法」で施工可能です。同業他社であれば屋根にビスに穴をあけてコーキングするだけで済ませることも多いのですが、当社では屋根に穴をあけない工法にこだわっています。
他の瓦屋根、スレート屋根、カラーベストについては従来通り、穴をあける施工となりますが、その場合もブチルシートというメーカー指定の防水素材の商品を使い、雨漏りしないようつとめています。他社の事例では、安価な海外製品の素材を使い、雨漏りがあったとクレームがあるとも聞いています。トラーチではメーカー指定の素材を使用することを大切にしているので、そういったクレームはありません。
有力メーカーのシャープさんやエクソルさんのカタログに、当社の施工事例を掲載していただいており、大変光栄に思っています。自分で言うのも恐縮ですが、施工の品質は高く、見た目にもきれいなので掲載していただいていると思っています。
――太陽光パネルのメーカーとの信頼関係も厚いのですね。
弟・康祐氏 ええ。このビジネスにおいて、メーカーとの協力は欠かせませんから。新商品が発売されれば、必ず研修を行ってもらって、情報のアップデートにつとめています。
兄・基泰氏 各メーカーでは定期的にセールスコンテストを開催していますが、毎回圧倒的な1位を目指しています。直近でもシャープエネルギーソリューションさんのコンテストで、2位と大きな差を広げ1位を獲得することができました。
うちの家族は警察一家で、父も警察官なのですが、父からは「中途半端なことをしたらあかんで。一番にこだわれ」と厳しくしつけられてきましたし、何より双子なので常に比較されてきたこともあって、兄弟そろって負けず嫌いなんです。それが私たちのいまの原動力になっています。
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