【ケーススタディ】埋設ジョイント交換+床版耐力向上
――橋梁の状態から教えてください
阿部会長 施工した橋は兵庫県内のRC橋で橋長は15mです。

施工した橋梁
――どのような補強でしたか?
阿部会長 補修工事の一環として、主桁の補強工事と合わせて、伸縮装置の取替工事をしました。
RC床版コンクリート上面に暑さ140mm程度のアスファルト舗装があるので(図1)、MMジョイントDSの設置は、コンクリートの不陸修正に協会が推奨するEQM工法とグリッドメタルを採用して、再劣化と段差の防止ならびに床版耐力向上となるEQM-J-G工法として施工しました。

図1:設置寸法の概略
――手順は。
阿部会長 この橋のEQM-J-G工法による不陸修正の施工は写真4、MMジョイントDSの設置は写真5の通りです。

写真-4:グリッドメタル筋を配置した不陸修正(EQM-J-G工法)

写真-5:MMジョイントDS設置(EQM-J工法)
まずアスファルト舗装厚140mm、幅430mmをRC床版上面までコンクリートカッターで切断し、ブレーカーでハツリ作業を終えると、RC床版のコンクリート面に損傷が見られました(写真-4-(1))。ブレーカー作業に伴い不可避的に発生する微細なひび割れの補修で浸透性接着剤KSプライマーを塗布し(写真-4-(2))、グリッドメタル筋を配置(写真-4-(3))して、界面の接着性を高めるKSボンドを塗布(写真-4-(4))、超速硬コンクリートで不陸修正をしました(写真-4-(5))。
3時間養生後にMMジョイントDSの設置に入ります。不陸修正をしたのち(写真-5-(1))、遊間部にバックアップ材を設置し、バインダーを塗布します。プレートを設置してバインダーを塗布し(写真-5-(2))、1層目の特殊合材を打ち込んでバインダーを塗布(写真-5-(3))、2層目の特殊合材を打ち込み転圧(写真-5-(4))、細骨材を散布して転圧し(写真-5-(5))終了ののち、表面温度が50℃以下になると交通を解放しました。
――不陸修正が要らない場合はどうなりますか?
阿部会長 コンクリート面を切削してはつったのち、MMジョイントDSを図2に示す手順で施工します。
施工フローに基づき、バックアップ材を設置後、バインダーを塗布、ギャッププレートを設置します。
次に、1層目のバインダーを塗布し、30mm厚で特殊合材を打設、同時にバインダーを塗布、特殊合材を打設し、2層目を打ち込みます。最後にローラーで転圧し、表層バインダーを塗布、専用の骨材を散布して、仕上げに転圧後、完成となります。

図2:施工フロー
――不陸修正が50mm以下の場合はどうなりますか?
阿部会長 旧ジョイントをブレーカーでハツリ撤去した後、ブレーカーにより発生した微細なひび割れの補修法として浸透性接着剤のKSプライマーを塗布し、界面の接着性を高める付着用KSボンドを塗布、リフレモルセットSFで不陸修正します(写真-5-(1))。
この手順は床版の再劣化を防ぐ目的で開発したEQM工法と同じです。MMジョイントDSの不陸修正にEQMを活用したもので、EQM-J工法と称しています。EQM工法を導入することで2工程がプラスされ、工事費も従来工法より高くはなりますが、長寿命化が図られます。
この不陸修正ののち、MMジョイントDSの施工に入ります。バインダーを塗布してプレートを設置し(写真-5-(2))、1層目の特殊合材を打ち込んでバインダーを塗布(写真-5-(3))、2層目の特殊合材を打ち込んで転圧(写真-5-(4))、細骨材を散布して転圧仕上げ(写真-5-(5))をして完了です。
EQM-J工法としたことで、効果が目に見えた分かりやすい事例を紹介します。2017年に、熊本県の国道266号線、八王寺跨線橋でMMジョイントDSの設置工事が行われました。交通量は1日3万7,000台超と多い橋梁ですので、これまでも損傷が早い場所で、ここに初めて埋設ジョイントのMMジョイントDSを施工することになりました。
施工において、既設ジョイントを撤去すると、不陸修正が剥離し、界面が、土砂化していました。まず、これを標準的な工法で不陸修正を施し、MMジョイントDSを設置しました。その結果、数カ月でMMジョイントDSにわだち掘れが発生しました。MMジョイントDSは、そもそもわだち掘れや段差ができないよう耐性を高めた埋設ジョイントです。そこで、8月に原因究明のためにジョイントを撤去したところ、床版の割れの影響で不陸修正コンクリートにすべて割れと剥離が確認されました。
これがわだち掘れの原因であると思われましたので、そこで、新たにEQM材料を用いたMMジョイントDSを設置するEQM-J工法を実施した結果、MMジョイントDS表面にわだち掘れやひび割れの発生が見られず、健全性を維持しています。本来のMMジョイントDSの性能ならびに機能が発揮されているのです。
ジョイント交換の際に留意して頂きたいことは、ジョイント交換する橋梁床版はジョイント付近の床版に損傷が見られる場合は併せて部分補修を施す必要があるということです。これを放置するとRC床版そのものが抜け落ちへと進展してしまいます。また、取り付け道路側の段差も全て補修することで、床版、ジョイントの寿命がさらに向上するものと考えられます。
【ケーススタディ】荷重分布型ジョイント
――どのような施工でしたか?
阿部会長 熊本県内の橋で試験施工をしました。

施工の様子
――施工手順は。
阿部会長 まず、旧伸縮装置を撤去し(写真1(1))、伸縮装置が設置できる寸法(装置の高さ+10mm)のはつり作業をします。今回、橋梁のアスファルト舗装厚が100mm程度でしたので、コンクリートのはつり作業は10mm~20mm程度でした。

写真-1:荷重分布型伸縮装置の施工手順
次に、装置を固定するアンカーボルト(4カ所)の位置と中間部のアンカー筋の位置にドリルで孔を開け、仮設置します(写真1(2))。
さらに、はつり作業によりコンクリートに微細なひび割れが発生することから、ひび割れ補修として浸透性KSプライマーを塗布します(写真1(3))。これにより、0.05mm以上のひび割れに浸透し、コンクリート表面は強固になります。
その後、流動性モルタルフィルコンSとの付着力を高めるためにKSプライマーの上にKSボンドを塗布します(協会の不陸修正工法)(写真1(4))。併せて伸縮装置の荷重分布鋼板の下面にもKSボンドを塗布します。
再度、伸縮装置を設置してアンカーボルト、アンカー筋で固定します(写真1(5))。アンカー筋を打ち込む際に発生するひび割れには浸透性KSプライマーが浸透し、コンクリート表面が強固になります。
設置後、直ちに流動性モルタルフィルコンSを注入孔より順次充填し、バイブレータ振動により広範囲に充填します。荷重分布型伸縮装置には200mm間隔で注入孔が設けられています(写真1(6))。また、10mmの隙間に自然注入で直径300mm以上に充填されることも確認されています。
充填終了後は、鉄筋を配置し(写真1(7))、再度KSボンドを塗布します(写真1(8))。同時に超速硬コンクリートの練混ぜ準備をします。今回の工事ではジェットモービル車を使いました。コンクリート打設・表面仕上げ後、伸縮装置に止水対策を行い、表面仕上げして完成しました。
今回の工事では試験施工および講習会も兼ねているため、幅員8mを、3日で実施しました。初日は片側車線4mを入口側、2日目は出口側を行い、3日は反対車線の入口、出口側8mを実施し、延長16mを終了しました。