女性が継続的に働き続けるとの思いを込めて設立した(一社)女性技能者協会(石川由希恵代表理事)は、「女性技能者による新時代の幕開け」のテーマや「#私たちは建設現場の殻を破りたい」というスローガンをもとに、9月16日に京都市内でシンポジウムを開催した。
この席上、石川代表理事は「業界に新規参入する技能者100人増やす」「YouTubeチャンネルの設立」「女性技能者に寄り添った社会保険セミナーの開催」「定期的な意見交換」「シンポジウムサミットの開催」「女性技能者1万人に会う」「孤独にならないような女性技能者が集まる場の設置」などに取り組む決意を示した。
石川代表理事は「女性技能者が増えれば少数派ゆえの悩みも解決できる。男性社会という建設業界のイメージを変えることができる。そうなれば、社会から一目置かれる業界に変わると信じています」と語る。
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当日は、日本建設業連合会 けんせつ小町委員会 人材確保専門部会長の木村梨絵さん(三井住友建設)が「けんせつ小町の活動紹介」、松村秀一・早稲田大学教授が「新・建築職人論:オープンなものづくりコミュニティ」をテーマに講演したほか、女性技能者らによるパネルディスカッションも開催。講演した松村教授、木村さんに加えて、女性技能者協会からは石川代表理事、補修業をしている柴田ゆみさん、同じく補修業の新屋舞さん、電気工事士の仁位彩乃さん、内装仕上げ工の古木麻衣さんが出席し、「女性は本当に現場で活躍しているのか」「現場で心がけていること」「これからの現場で必要だと感じること」「女性技能者を目指す方に一言」の4点について議論を深めた。

登壇する石川代表理事
女性は本当に現場で活躍しているのか?

パネルディスカッションのようす
パネルディスカッションでは、「女性は本当に現場で活躍しているのか」を最初のテーマに語った。
新屋舞さん(以下、新屋さん) 私が建設業界に入ったときは、女性はほぼいなかったですね。たとえば、200~300人集まるような現場でも、女性は私ともう一人いらっしゃるかどうかでした。いまは少しずつ増えてきている印象もありますが、一年経ったころにはまた減っていて、女性技能者は定着しづらいように感じています。
私の仕事は個人プレーなので、ほかの技能者の方と一緒に仕事をする機会も少なくて、意見交換することも決して多くはありません。とはいえ、トイレの問題は皆さん共通している悩みなので、これが解決されればさらに女性活躍が進んでいくと思います。
仁位彩乃さん(以下、仁位さん) 私の視点では、皆さんめちゃくちゃ活躍されています。でも、私個人については胸を張って「活躍している」とは言えません。「あなたがいないと困る」「キミがいて助かった」という評価を一度もいただいていないからです。一緒に働く技能者の仲間から評価をいただく機会があれば、活躍していると実感できるようになっていくと思います。
古木麻衣さん(以下、古木さん) 私もこの仕事をしてから20年経ち、女性技能者が増えている印象はあります。ですが、今回のシンポジウムでは、女性技能者が減少しているという研究データが語られたので、驚いています。
ただ、私の見方では責任のある立場の女性が増えたように感じます。現場監督や職長で活躍されていて、現場も女性を歓迎している雰囲気があるので、私は女性が現場で活躍しているという認識です。
石川由希恵さん(以下、石川さん) 私自身、18年間技能者をやってきましたが、SNSで発信されている女性を見かけることも増え、それぞれの場所や職種で活躍されているなと感じています。ただ一方で、女性が継続して働ける場所にはなっていないという問題意識もあります。

女性技能者が増えなければ、働きづらさの問題が放置される。改善するためには、女性技能者が増えることが大切と石川代表理事は指摘する。 / 出典:石川代表理事講演資料
女性技能者が現場で心がけていること
次のテーマでは、「現場で心がけていること」について語られた。
柴田ゆみさん(以下、柴田さん) 現場では、女性技能者をどう扱ったらよいか分からない男性もいるので、コミュニケーションを取ることを心がけています。ほかの技能者の方がいたら、仕事がスムーズに進むように積極的に話しかけています。
仁位さん 私は負けず嫌いな性格なので、「できひん」と言わんようにしています。背も低いし、重いモノを持たれへんこともようけあるんですが、持てるように工夫・努力をしています。また、「できひん」ことをカバーするために高所作業車上での作業は人一倍頑張っています。
古木さん 男性社会の中で仕事をしている自覚は常にあるので、女性らしさを大切にしています。その上で、愛想や言葉遣いを丁寧にし、伝わりやすくするようつとめています。また、手先を見てもらうために、所作を綺麗にする努力をしています。
新屋さん 私もまったく同感です。挨拶というのは人間関係を築く上での基本ですよね。現場にいらっしゃる技能者には必ず仕事があるわけで、挨拶は欠かせません。古木さんと同じ話になりますが、言葉遣いを丁寧にすることが大切です。私は感情的に話してしまうことがあるので、いったん自分の中で飲み込んで整理して話すようにしています。
石川さん いま、皆さんの話を聞いて心が痛くなりました。自分には「現場を任されたのであれば、こうやりたい」という信念があって、それを譲らない性格もしています。男性技能者から「こいつうるさいわ」と思われても信念を曲げたくありません。ただ、皆さんの話を聞いて、女性らしさを出したほうがいいとも感じました。
木村梨絵さん(以下、木村さん) 皆さんは第一線で活躍されていることもあり、強い気持ちで現場に望んでいるなと感じました。私の場合は、現場で頑張りすぎないようにしています。私も20年以上現場でやっている中で、若いころは「男性に負けるものか!」と気を吐いた時期もありました。
しかし、それだと疲れてしまいます。男性と同じように重いモノは持てませんし、諦めるところは諦めました。できないことがあるのは当然なので、逆に気配りなど自分のできることを頑張ればいいんだと気持ちを切り替えました。いまも無理はせずに、できることを頑張っていく方向で仕事をしています。また、笑顔で仕事をするとみなさん優しくしてくれますので、それも大切なことだと思います。ニコニコして現場を歩くと、和やかな雰囲気になり、仕事もスムーズに進むからです。
女性技能者がこれからの現場で必要だと感じること
3番目は、「これからの現場で必要だと感じること」がテーマとなった。
仁位さん “朝礼絶対参加”のルールを緩和しなければ、女性技能者は増えないと考えています。私が大阪市内から片道1時間半、混んでいれば2時間の現場に通っていたときのことです。朝礼だけであれば、朝8時に現場に到着すればいいのですが、危険予知活動や協力会社の点呼など、朝礼の前にもやるべきことがあるので、結果、朝7時くらいには現場に到着していなければならなくて、朝5時には出発しないといけなかったんです。
半年続けてみて「これはムリや」「こんな働き方はとてもできない」と思って、当時勤めていた会社を退社しました。なので、朝礼絶対参加は今すぐ緩和してほしいです。
古木さん SNSの発展で気が付いたところは、悪い仕上がりだとさらされてしまうことです。悪い仕上がりのほうが目立つのかもしれませんが、いい仕上がりは共有されません。いい仕上がりもSNSや本を通してどんどん共有してほしいですし、技能者のモチベーションにもつながると思います。
新屋さん いろんな職種の方が、建物を仕上げるために一緒の意識で、協力して頑張っています。なので、各職種の方同士が尊重しあえるような環境を整備すること、なおかつ「みんなで一緒に頑張ろう」と気持ちを抱きながら工事を進めること大事だと思います。
「ウチの工事が先だから」と一方的に主張するのではなく、各職種同士でコミュニケーションを深め、どうすればスムーズに工事を進められるかをみんなで考えつつ、それぞれの立場を尊重しあえるような仕事場であってほしいです。
柴田さん 技能者が働きやすい現場が一番です。朝礼が早い、エレベーターが使えない、各書類作成が多いなど、課題は多々あります。もちろん事故を防止するために実施していることについては理解できますし、少しずつ改善しているのは分かりますが、まだまだ変えてほしいところはあります。

シンポジウムには様々な立場の人が参加した
松村教授 今回、講演で紹介した「コミュニティ大工」(※)には、施主が必ず参加します。
※コミュニティ大工・・・施主(依頼主)の希望や条件をもとに物件を探し、家主との契約交渉から、改修工事、施主が物件を活用し続けるサポートまでを請け負う。九州各地で、空き家再生のハードからソフトまでを担っている。鹿児島県では大きなうねりになり、県庁内では「県庁コミュニティ大工クラブ」も設置し、職員も参画している。最近では宮崎県でもコミュニティ大工による空き家再生などの取組みが展開されている。
ですから、施主の技量で施工の目指すクオリティが決まってきます。たとえば、施主が幅木の角が揃っていなくてもいいと判断すれば、問題がないという”ゆるさ”があります。コミュニティ大工である加藤潤さんがおっしゃるには、「現場に女性が参加することが重要」だと指摘されています。コミュニティ大工というゆるく楽しい現場は、女性やいろんなレベルの方がいるので、ほめ合うんです。この加藤さんはとてもほめ上手で、ある現場で加藤さんが「はじめてにしては、とてもうまく仕上がっているね」と声をかけると、皆さん次の現場にも来る気になるそうです。
これは普通の建設現場とは違うものですが、まったく違うからこそみんな楽しい現場なのです。普通の現場をコミュニティ大工の現場のようにゆるくすることはできないけれども、きちっとしなければならないことが多すぎるのでしょう。変えていくためには、”楽しい”という方向性でモデルを作成することが大切になります。
また、女性に限りませんが、ある職種の技能者から見て、別の職種のすごいと思うことをレポートし、YouTube上で発表するような試みをやられてはいかがでしょうか。
石川さん いまの松村先生のお話で、お互いを知ることが重要やなと認識しました。マイクレスリングをやってみるのも楽しそうですね。私は電工女子なので、相手は鉄筋女子がいいかもしれません。互いに感じている不満をぶつけ合うセッションもいつか設けてみたいです。相手の考えていることが分かると寄り添うことができますし、協力できる体制につながるのではないでしょうか。
先輩技能者から、女性技能者を目指す方へ
最後に、「女性技能者を目指す方へ一言」が語られた。
古木さん 昔は質問をしても、言葉も返って来なくて、「オレの背中を見て覚えろ」の世界でしたが、いまはみんなしっかり教えていこうという体制に変わりました。学んだ技能は自分のものになるので、技能者はとても有利な仕事であることを知ってほしいですね。
仁位さん 現場に入ったら、思った以上にしんどいやんということが多いですが、3か月もすると身体が慣れるので心配しなくて大丈夫です。私の経験でも、現場に入って3年くらいすると大抵のことができるようになります。
新屋さん シンプルに「やってみたい」と思ったことは、ぜひやってほしいなと願っています。私は建材の補修の仕事をしていますが、いまは昔と比べてどこも人材を求めていますし、技能が身に付いたらみんなが認めてくれる世界です。ただ、1週間や2週間で理解できる世界ではないので、仁位さんがおっしゃたように3か月は頑張ってみて判断してほしいですね。
柴田さん 技能者になるのに、早いも遅いもありません。やってみたいというチャレンジ精神があれば、ぜひ頑張ってほしいです。働きたい場所やどのように働くかもご自身で決めて、道を切り開いていくことを願っています。
木村さん 技能者の皆さんには、やりたいと思ったことにはぜひ挑戦してもらいたいですね。しかし一方で、本日のお話を聞いて、トイレの問題など、現場の環境に不安を抱いてしまった方もいらっしゃるかもしれません。私たち日建連が中心となって、現場の環境を変える行動を引き続き実施して、安心して現場に入れる建設業を目指していきます。
――テーマに基づいたパネルディスカッションが終了した後、活発な質問も寄せられ、盛り上がる中でシンポジウムは終わった。
女性活躍より外国人・・・、という流れもありますが、頑張って欲しいです。
女性活躍の空気より、移民歓迎の空気の方が先になるとは思うな〜。
少子化止まる頃には空気を重んじる純日本人は多数派じゃ無くなるんじゃないかと思ってる。移民の数が上回って。
すでに自身で女性を理由にちょいちょい甘い考えが見え隠れしていますね。