インフラ整備の遅れを挽回する
――これまでのところ防災の仕事が出てこなかったですが。
荻野さん 防災は、今の職場が一番近いですね(笑)。まさに最前線でやっているところです。
――なるほど(笑)。では、今のお仕事について教えていただけますか。
荻野さん 高知県土木部では現在、次の5つの基本方針に基づき、事業を進めているところです。
- 南海トラフ地震対策の推進
- 豪雨等災害対策の推進
- 産業振興や安全・安心に繋がるインフラ整備の推進
- 既存インフラの有効活用と計画的な維持管理・更新
- デジタル化・グリーン化・グローバル化の推進
この中でとくにチカラを入れている事業としては、1と3に関係する四国8の字ネットワーク(高規格道路)関連事業があります。四国の8の字ネットワークの整備率は76%ですが、高知県は61%と遅れています。ちなみに、一般道路改良率で見ると、都道府県道(41%)、市町村道(46%)ともに全国では下位にある状況です。
これを挽回すべく、直轄部分については、しっかり整備を進めていただけるよう国にお願いしているところです。高知県担当の一部区間については、2025年春頃の部分開通に向け、整備を進めているほか、未着手区間の調査や用地取得、直轄未事業化区間の事業化に向けた取り組みなどを進めているところです。
同じくチカラを入れているのが、1に関係する浦戸湾の三重防護事業です。この事業は、国と高知県の共同事業で、県内の人口や経済が集中する高知市市内を地震津波から守るため、浦戸湾の3つのラインごとに、防波堤の延伸や粘り強い化、海岸堤防の耐震対策などを行うものです。

三重防護事業のイメージ(高知県提供)
県の事業としては、浦戸湾内の第3ライン海岸堤防の耐震対策を進めているところです。海岸堤防以外にも、浦戸湾に流入する河川堤防の耐震対策などを進めています。
直轄を含めたこれらの事業は、いわゆるL1クラスの津波、数十年~百数十年に一度の津波の浸入を防ぐことを主眼においています。L2クラスの津波、東日本大震災クラスの1000年に一度の地震津波に対しては、被害を完全に防ぐと言うより、被害を低減させ、避難のための時間を稼ぐことを目的に取り組んでいるものです。
高知県発祥の1.5車線的道路整備
荻野さん 高知県独自の事業としては、1と3に関連する中山間地域での1.5車線的道路整備があります。道路改良を行う場合、2車線でないと、国から補助がもらえず、県単独で整備するのが原則でした。ただ、高知県の場合、中山間地域の道路をすべて2車線で整備するのは極めて困難であることから、2車線、1車線、局部改良を効果的に組み合わせた1.5車線的道路整備を進めています。
この1.5車線的道路整備については、国に要望して、平成15年から補助の対象にしてもらっているほか、国の道路の計画・設計の考え方の一例として採用されました。高知県での実績をきっかけに、今では他県でも取り入れられています。
――1.5車線的道路整備はまだまだ先の長い事業ですか?
荻野さん 先の長い事業ですね。この道路の多くは、中山間地域の生活を支える道路であるとともに、高知県道路啓開計画における啓開ルートにもなる重要な道路ですが、完了まで何十年もかかる見通しです。順々に整備していくしかないというところです。

1.5車線的道路整備(県道畑山栃ノ木線)のビフォー(高知県提供)

1.5車線的道路整備(県道畑山栃ノ木線)のアフター(高知県提供)
空き家率も全国ワースト
荻野さん 3に関連する事業としては、空き家対策があります。県内の空き家率は12.8%で、こちらも全国ワーストとなっています。土木部住宅課の中に空き家対策チームを設置し、県外からの移住者受け入れとリンクさせながら、取り組みを行っているところです。
――働き方改革への対応はどうなっていますか?
荻野さん 工期設定や費用については、国の歩掛を原則採用しており、基本的に週休2日制モデル工事として発注しています。また、週休2日の実施状況により、工事費補正は100%対応しています。
――BIM/CIM対応はどうですか?
荻野さん BIM/CIMについては、試行的にやっている段階です。まずは、ICT施工による生産性向上が重要と考えており、ICT施工の普及にチカラを入れているところです。
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物事を総合的に見ながら仕事するのが、おもしろい
――土木部長という仕事のやりがいについては、どう感じていますか。
荻野さん 国土交通省では、所管しているインフラの整備や管理が仕事の中心になりますが、自治体では、県庁全体の仕事や地場の建設産業の動きなど、いろいろな方面に目を配りながら、自分の仕事を進めていくという違いがあります。高知県に来て3年近く経ちますが、物事を総合的に見ながら仕事をするという点では、自治体の仕事はおもしろいと思っています。
とくに高知県の場合、インフラ整備が遅れているほか、南海トラフ地震への対策など、やることがいっぱいあるので、ある意味仕事が充実している、やりがいがあると感じているところです(笑)。
――国土交通省の仕事の魅力はなんでしょうか。
荻野さん 私自身の経歴で言えば、道路の経験は少ないですが、それ以外の海外駐在をはじめとするいろいろな仕事を経験してきました。そういう経験を積んできたからこそ、自分の強みになっている部分があると思っています。本省や地整だけでなく、海外駐在をはじめ、国際機関や道路事業者、自治体などに出向するといった多様な職場で仕事ができるのが、国土交通省の仕事の魅力だと考えています。
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