PC床版(スパンクリート)のムダな施工時間
1フロア8世帯14階建てのマンション建設が始まって間もない頃、私は長期応援で現場に入りました。
このマンションは、RC構造6棟から構成されます。柱と梁は現場内で製作(サイトPC)され、PC床版(スパンクリート)は工場で製作されて搬入。このPC床版は、1戸当たり10枚敷くことになります。
トレーラーで搬入されたPC床版は、2枚ずつ吊り天秤にナイロンスリングを併用したもので玉掛け者が吊り、上部で取付け者が敷き込みました(図1、2)。
2枚ずつ揚がってきたPC床版は、いったん任意の場所に仮置き、荷揚げが終わった時点で1枚ずつ敷き直す。つまり、1戸当たり8~10回の吊り直しが必要となります。
この場合にかかる時間と人工は次の通り。
◎必要な時間と人工
- 荷揚げ:20分(5回)
- 敷き直し:20~25分
- 時間計:45分/1戸
- 玉掛け者:1人
- 受け取り:2人
- オペ:1人
これではムダが多く、作業工程を減らす必要があると、私は考えました。
PC床版(スパンクリート)の施工時間を短縮
問題点は、2枚ずつ仮置きしたPC床材を、改めて吊り、敷き直しているため、1戸あたり計45分も時間がかかること。そして、トレーラーで搬入されるPC床材が、図1のように2枚ずつ吊るようにセットされていること。さらに、5回目の玉掛け時には、9枚目と10枚目を重ね直していることなどが挙げらます。
そこで私は所長を説得した上で、次のように作業工程を改善しました。
まず搬入時、PC床材の積み込む形を改めました。PC床材どうしの隙間を開けずに並行に密着配置し、かつ水平に2枚ずつ吊れるようにしました(図3)。
吊り天秤の形状も変更し、はじめから正規の位置に置けて、敷き直しがないように変更。吊り治具は、PC床1枚につき、4点+4点=計8点で吊り、安全性も確認しました。
参考までに当時のメモを掲げておきます(図4)。
現場全体の「改善意欲」を醸成
こうした細かな改良によって、PC床材の取り付け作業にかかっていた時間は、45分だったのが20〜25分と約半分になり、玉掛け時および上部の作業のムラやムリがなくなりました。さらにPC床版の取付け作業がスムースになったことで、クレーンの使用時間が少なくなり、早めにほかの業者へ渡すこともできました。
また、こうした諦めていた作業の改善は、波及効果として、現場全体における改善意欲にもつながり、現場はスムーズに進みました。
ご参考ください。