CM的役割で存在感示す
――施工についてはいかがでしたか?
熊澤部長 今回は戸建て住宅に強い古谷野工務店が施工されました。工務店業界にはまだまだBIMは普及していませんが、CFS建築とBIMの両輪を使えば、工務店でも同規模の医療建築の施工は可能であることが今回の案件をとおして証明できました。
今、ゼネコン各社は同規模の工事にリソースを割けない実情もある中で、当社にご相談があったのですが、当社としてもスキームをコーディネートして、材料を供給し、工務店をアテンドして、発注者との合意形成まで担当しました。今回に関しては建材価格の均一化を切り口にし、施主と工務店の間に入り、案件をまとめましたが、野原グループのように横つなぎの会社が存在したほうが施工も円滑に進むと考えています。
――コンストラクション・マネジメント(CM)方式のようですね。
熊澤部長 野原グループとしても、CMの立ち位置を目指していきたいと考えています。一般的に総工事費10~20億円規模の工事であればゼネコンが着手するかもしれませんが、今回の規模では野原グループが発注者と施工者の間に入り、交通整理の役割を果たすことができました。
――古谷野工務店からどのような感想がありましたか?
熊澤部長 木造やS造では、多少ではありますがのちの変更が可能です。ですが、今回の現場は壁構造のため、最初の合意形成が重要になります。レイアウトを正確に決めて工事を進められたこと、そして建て方が早かったことについてはポジティブに捉えていただきました。
CFS建築とBIMは好相性
――構造的にはいかがでしたか。
熊澤部長 見た目には2×4工法で木造のように映りますが、構造はS造です。音の問題や耐震性について質問されることも多いのですが、耐震性は構造計算するのでクリアできますが、静音性についてはRC造並みに引き上げていくことが課題としてあります。ただし。予算が厳しい施主にとって魅力的な金額でできあがり、工期短縮と人員削減に効果がある点もほぼ実証できたため、RC造ではコストが合わない建設物に対して提案していく考えです。
また、今回は2階建てのため、CFS建築でもおさまりの不具合はなく、3階建てでも問題ないと考えています。しかし、現状では4階建てになるとおさまりに問題が出てくると予想しています。階を積み上げていくときのジョイント部分のおさまりが今後のポイントになるのではないと考えています。医療系建築では、特に都心部では敷地もなく3階建てでは対応しきれないと思われます。高層化が求められるので、構造面での検討は今後も進めていく考えです。
――今回はBIMも活用されましたね。
熊澤部長 CFS建築はBIMと非常に相性がいいと考えています。今、新築ではBIMで図面を作成する事例も増えていますが、今回の規模の物件へのBIM導入はまだまだ普及していません。この規模の工事でも建築の工業化とともにBIMを採用することができた良い事例でした。とくに、今回の健診棟増築工事のように、ホテルや病院にあるような同じ部屋が並ぶような物件に適していると感じました。設計もBIMを使えばコスト試算がしやすいので、CFS建築とBIMとともに進めたいと考えています。
――BIMにより合意形成も早かったのではないでしょうか。
熊澤部長 健診棟の完成イメージの合意には、仮想竣工したBIMモデルを活用しました。BIM モデルは3D で立体的に目視確認できるので、関係者全員で外観や内装、動線を含む完成イメージを共有・確認しやすい利点があります。医療関係者の方にもBIMで描いた空間の中に入っていただきましたが、医療関係者と建設関係者間のギャップを埋め、合意形成を容易にした点は大きいと思います。
従来、医療関係者は図面の見方に慣れていないため、現地に行かないと分からないことも多いですし、あるいはある方はこれでいいとOKを出しても、別の方はNGを出す場合もあるので、関係者全員が現場に行って合意形成を取らないとなかなか決まらないということもあります。
しかし、今回の案件では、定例の企画会議で次回に繰り越されることはほぼなく、迅速な合意形成と企画内容の確定が実現し、着工までのプロセスを円滑に進められました。
――今後の展開としては。
熊澤部長 医療業界や介護業界にアピールしていきます。建築費が上昇している課題は介護施設でも同様ですから、CFS建築で施工した際の金額も含めて提案しているところです。施工でCMの役割を果たし、BIMで構造体の製造を展開できれば、野原グループの強みを活かせます。さらに工務店業界へもBIM展開が出来れば望ましいですね。
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