予算や技術者が少ない管理者さんはどうすれば?

木の根元にアンカー
――本当に必要な補修を、適切なタイミングで、確実な品質で実施すると、吊橋が長寿命化のメンテナンスサイクルに入って、安全とコストが均衡してくるから、管理者さんの潜在需要に応えているということなんですね。それで、「小規模吊橋健全度評価システム」を利用したい場合、費用的にはどうなるんですか?また時間軸でみると、技術革新によって(今般でいえば大規模吊橋に使っていた技術を小規模吊橋に的確に導入するイノベーション)、点検や診断の精度が上がって、長寿命化修繕計画が見直されるのは自然のことのように感じますが、「小規模吊橋健全度評価システム」は長寿命化修繕計画の見直しにも対応する提案となっているということですか?
角さん 予算が潤沢にある管理者さんや補修優先度を考慮した計画を策定したい管理者さんは一歩踏み込んで詳細調査(非破壊検査など)を実施しています。道路会社さんは有料事業で安全をお金で買う理論ですから当たり前ですが。
なので、読者の皆さまも同じことを考えているとは思うのですが、「じゃあ、そうでない管理者、つまり予算や技術者が少ない管理者さんはどうすれば良いのか?これを『小規模吊橋健全度評価システム』で解決できるのか?」ということですよね。
「小規模吊橋健全度評価システム」は小規模な管理者さんの感覚からすると、決して安くはないです。数年前、小規模吊橋を数多く管理する自治体さんにシステムの提案をした際に、「お金が高いんですね、このお金があれば補修工事ができます」と言われたこともあります。その後、その管理者さんの吊橋の維持管理程度を確認すると、ケーブルを立ち木(枯れた杉)に引っ掛けたり、構造力学を完全に無視する対策に及んでいたりと…。自分たちで補修するという精神は素晴らしいとは思うのですが、その結果が安全の犠牲につながっては元も子もないのです。お金は補修に回したい気持ちはわかります。ですが、そもそものその補修の根拠が揺らぐような土台であれば、そこに依って立つ補修の効果は危うく、それこそ貴重なお金を無駄にしてしまうことになってしまいます。
このように管理者さんは多様でいろいろなことがあるにしても、根拠に基づく長期修繕計画の見直しについては、需要が高いのは事実で、それに応え得る提案としています。
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観光シーズン到来。心に残る吊橋景観は?

現在の角さんはこんな感じです=旅行先の三島スカイウォークで、手前のくろもこもこは愛犬クロちゃん
――余談なんですが、観光シーズンにも入りますので、教えてください。角さんは多くの吊橋をご覧になってきたと思うんですけれど、この景観はいいな~と思う吊橋はありますか?春夏秋冬いろいろあるとは思うんですけれど。例えば、心に残る景観10橋とか教えていただけますか?
角さん それぞれの吊橋の魅力は尽きないところですが、車が通行できる橋では大鳴門橋や関門橋、来島海峡大橋、小鳴門橋などでしょうか。大鳴門橋は鳴門海峡をまたぐ四季折々の表情を感じますし、本四公団に入社後最初に担当した吊橋であり、その20年後には維持管理を担当した吊橋で愛着があります。
関門橋は本州と九州をつなぐ近代長大吊橋の先駆者、本四公団に入社するきっかけとなった吊橋です。来島海峡大橋は来島海峡にスレンダーな3連吊橋であり、日本初の箱桁吊橋で計画を担当しました。小鳴門橋は日本で初の4径間吊橋です。主塔が3本以上の吊橋を多径間吊橋と言いますが、設計が難しい橋です。本四架橋完成後、私たちが検討した海峡横断道路超長大吊橋(豊予海峡や早崎瀬戸)でも必須の技術ですが次世代の夢の吊橋です。大鳴門橋への出勤途中に必ず通る吊橋で愛着があります。

大鳴門橋 撮影:角さん(課長時代に千畳敷で)

関門橋 撮影:角さん(福岡県課長時代に)

来島海峡大橋 撮影:角さん(副所長時代、糸山公園展望台から)

小鳴門橋 撮影:角さん(課長時代に通勤途中)
――そうなんですね。1橋、1橋、それぞれすごく思いの深さが伝わってきます。そういえば来島海峡大橋って、しまなみ海道の橋ですよね。しまなみ海道の橋って歩行者と自転車用のレーンが橋にあるので、歩いてみたいと思っていたんです。本四さんのホームページを見るとちょうど2026年3月31日までは歩行者・自転車は無料で通行できるみたいですし。車は通行しない吊橋はどうですか?
角さん そうですね、三島スカイウォークや、もみじ谷大吊橋、宮前橋(恋の吊橋)、美濃橋、苔の橋、久野脇橋なども周囲の景観と良い感じです。
三島スカイウォークは日本最大の歩道吊橋、もみじ谷大吊橋は紅葉に大吊橋がとても映えますし、宮前橋(恋の吊橋)はコンクリート主塔が苔で覆われているんですよ。美濃橋は日本最古の近代吊橋で国指定重要文化財、苔の橋も絶景です。久野脇橋は橋下の川や鉄道(SL)とマッチした写真などでも有名ですね。
――橋に苔がむすとは…、どの橋も趣がありますね。観光吊橋もあれば、生活橋として普通に地域で使われている橋もあります。近くに行く機会があれば立ち寄ってみたいと思います。ありがとうございました。

三島スカイウォーク 撮影:角さん

もみじ谷大吊橋 撮影:角さん

宮前橋(恋の吊橋) 撮影:角さん

美濃橋 撮影:角さん

苔の橋 撮影:角さん

久野脇橋(塩郷の吊橋) 撮影:角さん
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