意匠と設備設計の両部門が協力して活用
――「D-ZEB Program」と「BIM連携ZEB設計ツール」は、どの部門で活用していくのでしょうか。
吉川氏 両ツールは意匠設計と設備設計が協力して使用していきます。当社はどの段階でも「Revit」を利用していますが、「Revit」で作成した単線図の属性情報を利用して、「D-ZEB Program」に落とし込んでいます。一連のフローでは「Revit」を軸にし、作業を行っている状態です。

意匠と設備設計担当が活用 / 大和ハウス工業
――それぞれのツールの開発は、別々に話が上がってきたのでしょうか。
本間氏 起案の段階では別々でしたが、一本の軸で進めていく方針で早い時期から話が決まり、総合技術研究所が「D-ZEB Program」、建設DX推進部が「BIM連携ZEB設計ツール」とそれぞれ開発を担当していましたが、両ツールをもとに短時間で最適な提案を可能にするツールへの方向性が固まっていきました。
――開発のポイントと苦労されたことを教えてください。
本間氏 「D-ZEB Program」では、いかに設計初期に導入するツールとするかがポイントでした。とくに、ファーストプレゼンテーション時にZEBを提案できることを念頭に置いておりました。この場合、建物の少ない情報からBEIを算出しなければなりません。一方で入力情報が多いと作業が大変になりますから、そのバランスを配慮した点が苦労しました。少ない情報からBEIの数値を出すと誤差が若干生じますが、その誤差を開発途上で抑制するようにつとめました。我々は誤差5%以内と考えておりましたが、検証しながら目標に到達しました。
いろんな設備や建物の情報を入力しなければ正確な評価はできませんが、項目によって数値に大きな影響を与える内容があります。その点も見定めていくことも肝要です。
吉川氏 しかるべき器にしかるべき情報を入れることがポイントで、実際に活用する設計者にとって作業の効率化が図れなければツールに誘導できません。そこでアドインツールを用意して、効率化を図り利活用できるBIMモデルとしています。

ツール連携の課題 / 大和ハウス工業
規模を問わずあらゆる用途に活用
――「D-ZEB Program」では、基本の情報を入力するだけで作業的には完了するのでしょうか。
本間氏 単線プラン情報は面積などに限られており、当社のZEB仕様もある程度は決まっていますので、情報の入力で作業は完了し、入力の部分も「Revit」から情報を持ってくることができますので、作業時間はかなり短縮化されています。
――各ゼネコンもZEB設計支援ツールを開発していますが、この潮流をどう見ていますか?
本間氏 各ゼネコンとも、当社と同じ課題認識を抱いているものだと捉えています。つまり、早期にZEB提案をし、BIMと連携し業務の効率化を図る方針だということです。
当社は小規模物件も含めて数をこなしていますし、建築系の意匠や設備関係者全員に影響を及ぼす話ですから、いかに設計当初の段階で少ない労力でこなすためのツールであることはとくに重要でした。

「D-ZEB Program」のイメージ / 大和ハウス工業
――ZEB率100%の目標について、進捗はいかがですか?
本間氏 2030年度までに当社が建築する建物のZEB率100%の目標達成については、順調に進捗しています。社内でもZEBに対する評価が高まってきているので、効率的に技術の手法を含め設計に織り込んでいけば、コストをかけずによりZEB率を向上させることができると考えています。
吉川氏 「BIM連携ZEB設計ツール」を扱う社員の理解度が必要なため、その点の教育を強化し、ツールをしっかりと使用してもらうことが重要です。今、説明があった技術的なノウハウの理解も当然必要になりますから、そのノウハウとツールを使う習得をしっかりと行っていきたいです。さらにツールを使った社員からフィードバックし、ツールの改善にも努めていきたいと考えています。
当社では、BIMを扱う人財育成については、中堅や責任者などそれぞれの階層に沿った教育スケジュールを立てています。また、BIMのスキルを定量評価し、スキルを見える化しつつ成長を促し、スキル向上に努めているところです。当社は事業所が多く、その事業所の中でコアの人財を養成するところから始めていますが、コア人財には若手も多いです。
――ZEBを開発する人材も世界的に求められていると思うのではないでしょうか。
本間氏 ZEBの評価システム(エネルギー消費性能計算プログラム)が運用されてから10年も経っていませんので歴史が浅い分野です。今、行っている研究開発を継続して積み上げて、その中で新技術を探っている状態です。
次は新たな手法を模索し、合理的でコストを抑えるための技術を探っていくことになるのではないでしょうか。また、ZEBには難しい用途もありますので、その点に対応できる技術者を養成する点も課題といえます。
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