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【建築学会】竹内会長ら幹部が会見「逃げないで済むまちづくり」で性能設計を徹底。能登半島地震を教訓に

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長井 雄一朗
公開日:2024.07.04
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左から、有賀隆副会長、広田直行副会長、竹内徹会長、賀持剛一副会長、山梨知彦副会長

左から、有賀隆副会長、広田直行副会長、竹内徹会長、賀持剛一副会長、山梨知彦副会長

日本建築学会(竹内徹会長・東京工業大学教授)は6月19日に、東京都港区の建築会館で記者会見し、竹内会長は、主な活動方針として①ICTを利用した地域・性別・国籍を超えた学会サービスの整備、②「世界の中の日本建築学会」としての情報発信、③人口減少・防災・環境に配慮した地域・まちづくりへの貢献の3本柱を示した。

第1の柱「ICTを利用した地域・性別・国籍を超えた学会サービスの整備」では、構造・規準関係のウェブ閲覧サービスを8月から受付、10月からサービス開始し、今後出版物のデジタルサービスを広げる。また、日本建築学会の会誌である『建築雑誌』のデジタル配信についてアンケートを実施中。現在、希望者によって紙媒体による配布とデジタル配信に分けて情報発信する方針を示した。

第2の柱「『世界の中の日本建築学会』としての情報発信」では、竹内会長は中国建築学会長と対話し、日本の建築エンジニアリングやデザインについて現地で講演した。2024年9月には京都で、日本建築学会、大韓建築学会、中国建築学会が共催して2年ごとに持ち回りで開催している国際シンポジウム「ISAIA」を開催、各国建築学会との交流を深めるほか、「基準・論文グローバルタクスフォース」も鋭意進める。

第3の柱「人口減少・防災・環境に配慮した地域・まちづくりへの貢献」では、6月25日に「令和6年(2024年)能登半島地震災害調査暫定報告会」をオンライン開催。また、国土交通省住宅局の職員との意見交換も進め、今回の震災を踏まえて「逃げないで済むまちづくり」がより重要となり、建物だけではなく通信・電力・上下水道を含めての性能設計を徹底し、より継続的に使用できる範囲を拡大する。

すでに関東大震災発生から100年を契機に『過去の100年から未来の100年へ歩みを進めるための、一歩先の常識を、7つの立場の人々の「新常識」』としてまとめた提言「日本の建築・まち・地域の新常識」を公表、その中で「制震構造や免震構造をできるだけ一般化することを表明しているが、こうした動きを進めていきたい」(竹内会長)

関連記事:新用語「優良化更新」の概念が建築業界を変える【日本建築学会】

一方、地域の空き家対策も深刻な課題であり、日本建築学会住まい・まちづくり支援建築会議委員が空き家の現状解説、利活用事例の紹介や、空き家に関する研究論文の探し方、マッチング事業、各部会の成果を報告するサイト「空き家ものがたり」を作成。ビジネスモデルの提案、支援について計画系の学識経験者とともに進める。

竹内会長は活動内容の進捗状況について「この1年でより充実させていきたいが今のところ6~7合目くらいまで到達した」と語った。質疑応答では次の通りに語った。

巨大広域地震念頭に国交省や他団体と協力

重点施策を説明する、竹内会長

重点施策を説明する、竹内会長

――改めて重点的な活動内容の説明をお願いしたい。

竹内会長 ICT分野ではデジタル教材の実装化を目標に掲げている。デジタルツールは日進月歩で変化しており、これをアップデートする仕組みが大変だ。当初予想した時点よりも手間がかかる作業だった。

次は「能登半島地震」を見ても、ハードだけでは解決できない課題がある。一例では、がれきの撤去や復興のプロセスを見ても解決できていない。これはハードや仕組みに限らず、さまざまな法整備、私有財産の処理など多岐にわたって着手する必要との指摘を受けている。今後、南海トラフ地震や首都直下地震などの広域巨大地震が発生する際の事前の準備では、本学会だけではなく国土交通省や他団体と協力しながら、望ましいかたちを早めに発信したい。

また、空き家問題も深刻かつ急速に進展している課題だが、ビジネスモデルの構築や地域おこしの構築について1年目には具体的なアクションに至っていなかったため、今年は行動に移していきたい。

地震発生時での変形の抑制を示す

――免震や制震建物の一般普及に力を入れるとの話があった。この点の現状や課題などを教えていただきたい。

竹内会長 能登地震では住宅の被害が大きかったが、基本的には建築基準法を満足しても壊れる場合がある点について理解が進んでいる。建築基準法は最低基準であり、その上の性能設計はより高いグレードで大地震後も継続して使い続けられるメニューを示していきたい。(一社)日本建築構造技術者協会(JASC)も行っているが、基本的には大きな地震が発生した際には変形をどれだけ抑制するかを発表したい。

結果的に低層の建築物でもRC造であれば壁をしっかりとつくり込むなど性能を表に出すようなメニューを、建築家や施主が分かるような内容を提出していきたい。もし大地震が来ても施主が使い続けたいという希望があれば、レベルを向上する建築が必要と明示すれば選択肢が広がる。たしかにコストはかかるが、リスクを考えれば免震や制震も必要と判断する資料の提案を行い、具体的にはパンフレットや資料的な内容を用意していきたい。

――土木学会とMOU(協力に関する覚書)を交わしているが、今後の方針は。BIM/CIM分野での連携については。

竹内会長 土木学会とは今回の能登半島地震でも連携を進め、調査を行った。規準の国際化でも総合的に情報交換を進めた。BIM/CIM分野でも密に連携したい。BIM/CIMではベースとなるコンセプトに違いはあるが、できるだけ共通のプラットフォームで使えることが望ましい。土木と建築と明確に分離できないような構造物も増えており、街全体を共通のプラットフォームでデジタル化を進めることが肝要だ。

土木学会の佐々木葉新会長は日本学術会議の土木工学・建築学委員会の副委員長で、私はその委員長をつとめており、コミュニケーションがとりやすい。これからさまざまなイベントでも相互乗り入れをしながら、何らかのかたちで提言も具体化していきたい。


また、記者会見では各副会長が抱負を述べたのでここで紹介する。

広田直行副会長(日本大学教授、学術レビュー・教育推進担当) 提言「日本の建築・まち・地域の新常識」を公表したが、より高い耐震性能、環境性能を求めていかなければならない。先日の国土交通省の意見交換会では、「一部屋改修による健康・省エネ・地域創生効果を考える」を提案し、一部屋だけでも環境に留意した高断熱の住まいをつくっていく話があった。提言の中に「優良化更新」という言葉がある。建築は新築以降時間が経つと価値が下がるが、性能を向上する「優良化更新」を進めるべきと提起を行っている。先日、北海道でのシンポジウムに参加し、道内の地域では脱炭素社会に向けた取組みとして空き家対策、災害対策、健康に良い住宅を掛け合わせた政策が進展している。このいいモデルを本学会として発信したい。

賀持剛一副会長(大林組設計本部常務執行役員設計本部長、総務財務担当) かなり年数の経った建築会館の運営、維持管理をしっかりやっていきたい。また、建設産業も2024年問題、人手不足問題などを抱え、賃金アップなどで業界としては対応している。また、建設業界に対して学生の入職が減少していることも感じ取っており、建築の魅力をアピールし、もっと人材を建築にシフトする手法について本学会でできることはないかと引き続き考えていきたい。

有賀隆副会長(早稲田大学教授、新任、研究教育機関(全国)、情報・国際担当) 「ISAIA」を通じて、中国や韓国の学会との交流を進め、地域に根差して国際的な視座を備えるとともに建築都市の科学と実学との連携を強めるプラットフォームをつくれるよう尽力したい。日本はアジアの一員でここは災害多発地域であり、グリーンインフラにブルー(水系)インフラも加えて展開ができれば望ましい。

防災、カーボンニュートラル、人口減少など自然と社会科学を含め、建築と都市に直結するような提言をこれまでも行ってきた。ただし日本の国土全体を見ると、実学の部分と接続して、実証化する重要なタイミングに来ている。空き家問題、放棄されている社会ストックがあり、社会インフラをどう再編していくのかが大事な視点となる。本学会の多彩な人材を活用しなければ解決できない課題も多く、推進していきたい。

山梨知彦副会長(日建設計チーフデザインオフィサー常務執行役員、新任、社会ニーズ対応・普及啓発担当) 私の役割は学会の活動を社会のニーズにしっかりと届ける点にあり、学会と社会を架橋することが使命だ。私の経験から見ても本学会には多くのシーズがある。そのシーズを社会実装することで社会が豊かになることは数多くある。この点についてこの2年間では注力したい。

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長井 雄一朗
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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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