暴力はすべて否定されるのだろうか?
大手ゼネコンが施工管理を行う大学総合病院の建設工事が始まり、着工後1年を過ぎた頃、常駐していた職長が持病のため入院し、私が代わりに職長の任に就くことになった。
建物はA棟~E棟、さらに看護学校も有する大型総合病院。工事の進捗状況は、全体の7割程度。1日の稼働作業員は500人、職員30人という現場で、躯体工事と仕上げ工事が錯綜する大変な時期での就任だった。
そんな建設現場でのエピソードを紹介する。
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大手ゼネコンの新人現場監督を教育指導するハメに
大手ゼネコンの若手現場監督であるK監督は、事ある毎に、私のもとへ質問や相談に来るようになっていた。最初のうちは、私も「まあ、若手の現場監督で、経験も少ないのだからしょうがない」と親切に、手取り足取り教えていた。
しかし、何度回数を重ねても、一向に現場監督としての成長の兆しが見られない。聞いてくる内容は、「どうすればよいか?」という単純な質問ばかりで、完成されたストレートな答えだけを聞こうとしてくるのだ。
私は、その足場や設備は、誰が、何のために使用し、いつまでに必要なのか?また、使用機材はどのようなものが望ましいのか?安全設備や使用勝手はどうか?など、現場の状況や自分自身の経験を踏まえて一つひとつ教えていた。
夏の暑い日である。朝から30度を超す猛暑日、前日にE棟の車寄せ部分の天井の最後の仕上げ工事と、照明器具の取り付けが終わったので、その下に組んであるステージ状の足場の解体作業をしてほしい、というK監督からの手配があった。
その日の予定には入っていない急な手配ではあったが、どうしても朝一番でやってほしいというので、私と若手の2人で現場に向かった。
憮然とした態度の新人現場監督
解体作業をするためにステージに昇ってみると、目に余る悲惨な状況に、私は即刻、作業に着手することを止め、K監督に現場に来るよう連絡した。
ステージの上には、天井ボードの残材と、照明器具が入っていた梱包材がそのまま放置され散乱していたのだ。現場の状況も確認しないで、ただ手配をすれば、何でもやってくれるという安易な考え方について、私はK監督に注意した。監督者の仕事というのは、前の作業の完了状況と、作業後の片付けを確認してから次の手配になるはずである。
「Kくん、君は何にも確認しないで、解体作業の手配をしたのか?ふざけるのもいい加減にしろ!やりっぱなしの業者を呼んで、すぐに片付けさせろ!それができなければ、自分で片付けろ!終了したら連絡をくれ!」
少しきつい言い方をしたが、いつも甘えてばかりいては、本人のためにならないとの想いで、一度突き放してみたのだ。
20分ぐらいしたら、K監督が「片付けが終わりました。ステージの解体作業をしてください」と言いに来た。その顔は憮然としていた。おそらく、自分で作業せざるを得なかったのだろう。彼の額には、大粒の汗が光っていた。
私はK監督に自分で苦労して、手配する、人を動かすということが、どういうものかを、少しは感じてほしかったのだ。「少しは薬になったのかな」と思いながら、解体作業に入った。若手を下に配置し、ステージ上で解体した足場板を次々に降ろしていく。互いに声を掛け合いながら手渡しの作業だ。呼吸とテンポが合わなければ、効率も悪くなる。
猛暑の中の作業なので、ここまでやったら、一息入れようという目標を立てて、作業を進めていた。ダラダラと、気合の入らない仕事の仕方をすることは、油断にもつながり、かえって危険なのだ。
権力を振りかざす世間知らずの勘違い野郎どもは本当に消えていただきたいです。