すでに6年近く前になるが、下関市役所に出向中の国土交通省職員(砂防職)の佐々木美紀さんのインタビュー記事を書いたことがある。先日、なんとはなく中国地方整備局のHPを見ていたら、とある砂防事務所所長に同じ名前を見かけた。あの佐々木さんに違いないだろうということで、取材を申し込んだ。
その後、あの佐々木さんから取材OKのご連絡が来た。ということで、広島西部山系砂防事務所長の佐々木美紀さんにいろいろお話を聞いてきた。
広島土砂災害を機に、平成31年に新設された砂防事務所
――まず、広島西部山系砂防事務所について、教えて下さい。
佐々木さん 平成30年7月に広島で土砂災害がありまして、これをきっかけに平成31年4月に新設された事務所になります。
――事業区域、主要事業などについて教えて下さい。
佐々木さん 今の事務所ができる前は、太田川河川事務所が直轄砂防事業を行っていました。平成11年6月に広島で土砂災害がありまして、これをきっかけに、平成13年度から直轄砂防事業に着手しました。
太田川河川事務所の直轄砂防事業区域は、広島市、廿日市市、大竹市の一部で、とくに民家が集中する地域や重要交通が横断するなど、社会的に重要な地域に対して集中的に砂防堰堤の整備を進めていました。平成30年7月の豪雨災害を契機に、太田川河川事務所から独立するカタチで、新たに広島西部山系砂防事務所が新設されました。
広島西部山系砂防事務所では、従来の事業区域に、呉市や坂町といった安芸南部山系が新たに加わっています。当事務所では、通常の砂防事業のほか、実際に災害が起こった箇所での災害対策事業を実施しています。令和3年8月に広島市内で土砂災害が発生しまして、こちらの箇所の災害防止工事も進めているところです。主な事業としては以上になります。

広島西部山系砂防事務所HPより引用
――現在の事業箇所数はどれくらいですか?
佐々木さん 令和6年度時点で、通常砂防事業は11箇所で実施しています。災害対応箇所は、平成30年災害対応が4箇所、令和3年災害対応が3箇所です。
――他の砂防事務所と比べ、広島西部山系砂防事務所の特色などはありますか?
佐々木さん 特色としては、広島県が担当していた砂防事業区域に国の直轄事業が入っていることがあります。砂防事業の対象となる箇所数が多く、かつその区域で災害が発生したことから、国の直轄砂防事業もその区域に入って、広島県と役割分担しながら事業を実施しています。基本的に、規模の大きな箇所や技術的に難しい箇所を直轄砂防事業としてやっています。
あとは、山を切り開いてできた団地の近くで直轄事業を実施していることです。人口が集中する住宅の近く、人の近くで直轄事業を実施している砂防事務所は少ないです。
9年ぶりに砂防の現場に帰ってきたら、犬型ロボットが測量していた

広島市安佐南区八木・緑井地区で進められている砂防堰堤工事(広島西部山系砂防事務所HPより引用)
――所長になられてどれぐらいですか?
佐々木さん 2024年7月に来ました。まだ半年ぐらいです。
――お話するのは下関市役所出向中以来ですが、砂防の仕事は久しぶりではないですか?
佐々木さん 9年ぶりぐらいですね。久しぶりなので、またイチから勉強しています(笑)。
――所長も初めてですよね?
佐々木さん はい、そうです。
――久しぶりの砂防と初めての所長、ダブルパンチですね(笑)。所長として現場は回っているんですか?
佐々木さん 現場には行きたいんですけど、なかなか回りきれていないというところですね。少しずつ見ていくようにしています。
――9年ぶりとなると、以前の砂防事業と様変わりしていると感じることもあるのではないですか?
佐々木さん そうですね。最近はICT施工とか、VRとか、ARとか、DXがスゴく進んでいますね。ある現場に行くと、犬型の四足歩行のロボットが測量していました(笑)。以前は想像もつかなかったようなことが現場では繰り広げられています。

SPOT稼働状況画像データ(広島西部山系砂防事務所提供)
――今やICT施工はもう普通ですか?
佐々木さん 過渡期ですかね。普通に使われるには、もうちょっと時間がかかるかもしれません。今は工夫しながら取り入れようとしている段階です。
――ICTの勉強もされているんですか?
佐々木さん そうですね。だいぶ遅れを取っているので(笑)。
――たいへんそうですね。トゥーマッチではないですか?
佐々木さん 砂防事業はなじみがあるので、たぶん大丈夫です(笑)。

重機遠隔操作画像データ(広島西部山系砂防事務所提供)
職員が思い詰めないように、楽しくやっていただくように
――所長として、働き方改革への対応はどうですか?
佐々木さん 職員数が限られているので、どうしても業務量が多くなってしまって、職員に負担をかけてしまっている部分はあります。なので、「働き方改革はできています」と胸を張って言える状況ではないですが、なるべく負荷が一定のところにかたよらないように、職員が思い詰めないように、楽しくやっていただくように努力しているところです。
発注者としては、管内の各業者さんに働き方改革に取り組んでいただいているところです。基本的には、完全週休2日で現場を回していただいていると聞いています。