技術開発支援もいずれビジネスにつながることを期待
――国土交通省ではグリーンインフラに資する技術開発の支援もされているようですね。
高森さん はい、行っています。2024年度は4件採択しているのですが、わかりやすいもので言うと、透水性舗装と湿潤舗装を組み合わせた多機能を有する舗装の技術があります。
降った雨をまず透水性舗装で浸透させて、その水を湿潤舗装に導水し、保水するもので、雨水浸透と暑熱対策(ヒートアイランド対策)の両立をねらった技術です。神戸市のフィールドで実証実験を行いました。こういった技術開発事例がいずれビジネスにつながることを期待しています。
「グリーンインフラ創出促進事業」公募の選定結果について(国土交通省HP)
グリーンインフラ大賞はビジネスと切り離している
――グリーンインフラ大賞の審査ポイントなどはどうなっていますか?
高森さん 評価のポイントしては、「自然と共生する社会に合致した取り組み・企画・計画」としていて、入口としては広いものになっています。
細かく見ていくと、たとえば、「関係者と連携した取り組み」であることをポイントの1つにしています。今年度も含め、過去に大賞を受賞した事例を見ると、地域などと連携した事例が多いです。
「自然が有する多様な機能の活用」もポイントになっています。グリーンインフラには、防災・減災、生物多様性、ウェルビーイングといった様々な効果が期待されているので、単一ではなく複数の効果が発揮されているかを評価しています。「効果を発揮させるための工夫」として、維持管理に関する工夫などもポイントになっています。「汎用性が高くて、全国的に横展開できるか」もポイントです。
――ビジネス的な視点はポイントに入っていなんですね。
高森さん ええ、現在のグリーンインフラ大賞ではビジネス的な視点を評価のポイントとして入れることはしていません。ビジネス的な観点に特化してポイントに入れると、限定された表彰制度になってしまうことも懸念されるので、入れてないです。あくまで、グリーンインフラに資する幅広い取り組みを表彰するというコンセプトで行っています。
――「関係者と連携した取り組み」を高く評価する意図はなんですか?
高森さん グリーンインフラは、整備して終わりではなくて、維持管理も重要なんです。たとえば、地域住民を巻き込んで、維持管理にボランティアで参加してもらえれば、費用的な面も含めて維持管理を継続できるようになります。そういうところをしっかり評価するということです。
――個人的には、首都高速道路のおおはし里の杜が受賞したのは、なぜこのタイミングだったのか、ちょっと気になっているわけですが。
高森さん 首都高速道路は、2011年におおはし里の杜をつくっただけでなく、つくってからこれまで、しっかり維持管理やモニタリングしてきたことを含め、応募されました。その内容が評価され、今回の受賞に至ったと考えています。
たとえば、400種類以上の鳥類や昆虫を確認していたり、道路事業者として初めて環境省の自然共生サイトに認定されたり、周辺の学校などと連携して、稲作体験を行ったり、エコロジカルネットワークを形成したりといったことをされてきました。
どちらかと言えば、つくったことよりも、つくった後の取り組みが高く評価されたということです。
グリーンインフラの具体的な事例を示し、蓄積するという重要な役割
――グリーンインフラ大賞という制度について、どう評価していますか?
高森さん グリーンインフラ大賞はこれまで5回実施していますが、応募件数は年々増えてきています。蓄積した事例も200件近くに上っていて、事例集としてとりまとめています。
冒頭でグリーンインフラの定義についてお話しましたが、われわれとしては、グリーンインフラをわかりやすくお伝えするためにも、グリーンインフラの具体的な事例をお示しすることは非常に大事だと考えているところです。グリーンインフラ大賞は、グリーンインフラを普及、発展させていく上で、重要な役割を果たしていると認識しているところであり、今後も継続して、さらなる事例の蓄積を図っていきたいと考えているところです。
グリーンインフラに一番先進的に取り組んでいる局は都市局と水管理・国土保全局
――各直轄事業におけるグリーンインフラの取り組み状況について、どうごらんになっていますか?
高森さん グリーンインフラに積極的に取り組んでいる国土交通省の局としては、都市局と水管理・国土保全局が挙げられますが、都市局は、グリーンインフラそのものとも言える、都市公園や緑化政策を所管しているので、連携して取り組みを進めています。直轄事業ではありませんが、都市緑地の確保という面でも、都市局が民間事業者や自治体をサポートしながら、緑被率の向上に取り組んでいます。
水管理・国土保全局の直轄事業では、流域治水とグリーンインフラを組み合わせるカタチで、グリーンインフラに取り組んでいます。たとえば、環境に配慮した多自然川づくりや、河川整備計画への定量的な目標の設定といった取り組みが挙げられます。
道路局も、最近はネイチャーポジティブな取り組みを加速させています。たとえば、直轄事業では、道路計画を立てるときに、できるだけ自然を壊さない構造で計画するとか、高速道路上の動物の移動に配慮してボックスカルバートや橋梁を設置するといった取り組みが挙げられます。高速道路会社のほうでは、湿地の整備といった取り組みも一部行われています。
港湾局は、ブルーインフラということで、独自のクレジット制度をつくったり、港湾の緑地政策といったことに取り組んでおり、グリーンインフラ関連の政策を着実に進めています。
程度の差はありますが、各局ごとにグリーンインフラにしっかり取り組んでいると認識しています。
――セクションごとに濃淡があるということでしょうか?
高森さん 濃淡はあると思います。
グリーンインフラに対する各局の関心は高まっている
――グリーンインフラ政策に関する他局への働きかけはどんな感じですか?
高森さん グリーンインフラ推進戦略を策定した際には、各局課長級の会議を設置して、政策の取りまとめを行いましたし、常日頃からの各局との意見交換も行っているところです。私の感覚としては、数年前と比べると、グリーンインフラに対する各局の関心は高まっているように感じています。
――地方整備局や事務所などの出先はどうですか?
高森さん 幹部クラスは当然ご存知だと思いますが、出先事務所の職員となると、公園担当の方や過去に携わったことがある方などは関心は高いと思いますが、それ以外の職員の方々に対する関心を高めていくことに関しては、今後の課題だと思っています。
――各地方整備局ごとにグリーンインフラの担当はいるのですか?
高森さん 地方整備局にグリーンインフラに特化した担当はいません。本省各局のラインごとに必要な政策が現場まで下りている感じだと思います。
グリーンインフラに対する国民や自治体の理解度向上は今後の課題
――グリーンインフラに対する国民の認知度はどうなっていますか?国民にどうアピールしていくつもりですか?
高森さん とあるメディアがグリーンインフラの認知度調査として、土木分野の方々を対象にアンケートを実施しているのですが、その結果を見ると、「意味を知っている」と「聞いたことがある」を合わせると9割を超えていました。その一方で、とある自治体が住民に対して、同様のアンケートをしたところ、2割ぐらいにとどまりました。つまり、グリーンインフラに関する国民の認知度はまだ低いということになります。
国民の認知度が低い要因の1つとして、「定義のわかりにくさ」があると思っています。われわれとしても、国民に対して、グリーンインフラというものをわかりやすく噛み砕いて説明するということやっていく必要があると認識しているところです。
あとは、自治体にグリーンインフラをちゃんと浸透させることが重要だと考えています。官民連携プラットフォームには多くの自治体にメンバーに入っていただいているのですが、全自治体数に照らすと、約7.5%ほどに過ぎません。もっと多くの自治体にグリーンインフラを理解していただき、政策として取り入れていただく必要があると感じています。そうなれば、国民により直接的に伝わります。その方策を今後検討していきたいと考えているところです。
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