保険も万能とはいきません
2017年9月17日、Xさんが所有するRC造4階建ての築40年のビルが建つ松山市に台風が襲来して1日188mmの集中豪雨がありました。排水ドレンが詰まり、ベランダがプール状態になり、屋内に雨水が侵入しました。
また、外装材の目地から雨水が侵入し、雨染みだらけになってしまいました。建材も傷み、カビ発生の懸念もあるとして、Xさんは内外装を撤去し、スケルトン工法で改装するしかないと判断し、「店舗総合保険・営業継続費用保険」に加入していた損保会社Yに保険金3,750万円を請求しました。
ところが、損保会社Yは「時価を勘案すれば仮に保険金を支払うとしても補修費は310万円程度」と主張しました。
判決は、現地調査を実施した専門委員の意見に基づき、スケルトン工法は不必要としました。また、壁の目地からの雨漏りは維持管理不足が原因であり風災による損害とはいえないため保険適用外としました。風災による損害額は384万円であり、そこから管理不足相当分を差し引き、「損保会社Yが支払うべき保険金は83万円」という判決でした。維持管理を怠った所有者Xさんに対する厳しい判決でした(2022年3月29日 松山地裁)。
雨漏り事案において保険適用範囲や責任の所在の判断は容易ではないようです。Xさんの場合、雨漏りが2017年、裁判の訴えが2019年、判決は2022年と長期化しています。Aさん、Bさん、管理組合Cの場合は雨漏りが2013年に発生し、2025年現在、最高裁で係争中です。
雨にも負けず、夏の暑さにも負けない家
伝統的な日本家屋の設計思想は「夏を涼しく」です。冬の寒さは衣類や寝具、火で対抗できますが夏の暑さには対抗できなかったからです。庇で直射日光を遮り、縁側で風通しを良くし、襖を開け放してさらに風通しを良くします。自然の涼しさを生かし、夏の暑さを和らげます。
宮沢賢治の『雨にも負けず』という詩では、「雨にも負けず 風にも負けず 雪にも夏の暑さにも負けぬ 丈夫なからだを持ち」となっており、負けまいと頑張る自然現象の序列は「雨風雪夏の暑さ」と、雨がトップにきています。
『雨にも負けず』の後半には次のような一節があります。
「東に病気の子供あれば 行って看病してやり 西に疲れた母あれば 行ってその稲の束を負い 南に死にそうな人あれば 行って怖がらなくてもいいと言い 北に喧嘩や訴訟があれば つまらないからやめろと言い」
しかし、雨漏り裁判は、つまらないからと言ってやめるわけにもいかないようです。
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